フェイスブックが演出する2億人の『出会い系』を予測する

(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

ついにFacebookは『出会い系』という「禁断の木の実」に触れようとしていている…。

米フェイスブック(FB.O)のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は(2018年5月)1日、同社として初めてデートサービスを開始すると発表した。「フェイスブックでは2億人のユーザーが独身だと掲載しており、明らかに何かできることがある」と述べた。

出典:米フェイスブック、デートサービス開始へ 独身ユーザー2億人

Facebookの個人情報の利用のされかたで公聴会で呼ばれながらも、それと同時にFacebookがパラレルで進めていたのが、デーティング機能(出会い系機能)であった。

ザッカーバーグCEOはF8の基調講演で、同社が収集したユーザーのWebサイト訪問履歴やアプリケーション利用履歴をユーザーが削除できるようにする「クリアヒストリー(Clear History)」というプライバシー保護策を発表した。

フェイスブックらしいのは、プライバシー保護策を追加する一方で、ユーザーのプライバシー情報を貪欲に活用する「出会い系サービス(デーティングサービス)」も発表したところだ。ユーザーは出会い系サービスの利用を始めると、従来のFacebookプロフィールとは別に、「出会い」用のプロフィールを作成し、出会い系サービスに参加するユーザーに対してのみそのプロフィールを公開できるようになる。フェイスブックが開発したアルゴリズムは、参加するイベントや興味関心事の共通性などを基に、出会いを求めるユーザー同士を引き合わせる。ザッカーバーグCEOは出会い系サービスを、「有意義な関係性」を築くためのサービスであると強調。「長期的な関係性を築けるようになる」などと語った。出会い系サービスは2018年末までに開始する予定だ。

出典:米フェイスブック、プライバシー保護策と同時に「出会い系サービス」も発表

アルゴリズムに対して『まっさらな人間』として独身デビューができる利点

従来のFacebookのプロフィールとは別に、「出会い用プロフィール」を作成可能になるという。同時に「クリアヒストリー(Clear History)」という過去の履歴を消し去ることができる機能も提供する。つまり、人間に対してでではなく、Facebook社のアルゴリズムに対しては、『まっさらな人間』としていつでもやり直すことが何度も可能になるわけだ。つまり過去の嗜好や癖を消し去る自由を得たことを意味する。しかし、より自分の嗜好や癖にマッチング指数があう独身パートナーの存在を数値化されて教えられるサービス化としたら、偶然のセレンディピティの出会いよりもはるかに、効率よく出会えることとなるだろう。また、Facebookからの派生なので、出会い専門のサービスでないところでのマッチングなので、ガツガツしていない一般の人たちという可能性も高く、『出会い系』のしきい値が数段、低くなることだろう。わざわざ、高価な出会い系に参加する意味がなくなるのかも知れない。

友達の友達は他人。データマッチングの出会いと変わらない

また、Facebookで出会えるとすると、自分を知っている人間同志による狭い人間関係によるパーティーなどのマッチングよりも、自分のまわりに○○人ものオススメできる人がいますと可視化されることだろう。また6ディグリーと呼ばれる隔たりでは、6人経由すると地球を網羅することができると言われているので、もはやデータでマッチングしたとしても友達の友達の友達くらいで誰かと関係性のあるエビデンスはすぐに辿れてしまうことだろう。さらに、そこで、なんらかのコストを投じるとイベントに参加できる機会が得られたり、共通のプロフィールや嗜好がわかる。

出会い用プロフィールという設計図

何よりも、Facebookに参加する2億人もの独身者がそのチャンスを手に取ることによって、「出会い用プロフィール」作成の為の自分を演出し、盛れる自分のための投資を始めることだろう。おそらくFacebookは、他のマッチングサービスのような、出会えるための課金障害レースを仕掛けることなく、出会いに至るまでの恋愛プロセスのデータを共有することによって十分な広告価値を生みだすことだろう。

女性はダイエットに励み、男性はよりマッチョになろうとする。また女性は知的に振る舞おうとし、男はダンディズムに磨きをかけるために、「出会い用プロフィール」の設計図に叶う自己実現への投資を備えることだろう。

この「個人情報」の流用問題が最も重要視される時期に満を持してサービスインするFacebookにとって、デーティングサービスは、最大の金のなる木でもあり、ここでのプライバシー流出は禁断の木の実となる。

2億人の1%でも200万人が恋に堕ちる

2億人の独身のうち1%が成就するだけでも、200万人、100万カップルが実現するのだ。2018年中にサービスが始まり、5年後には、1/4が離婚したとしても、75万カップルが50万人以上のFacebookベイビーを誕生していることも想定できる。ソーシャルセキュリティーナンバー(アメリカにおける社会保障番号)や日本のマイナンバーのような国ごとのIDではなく、Facebook上でのブロックチェーン技術による出生台帳のようなもので、生まれた時から広告データとのコンバージョンで社会コストが低減されるようなSFチックな未来図さえ安易に想像ができそうだ。

AIが、ディープラーニングが、仮想通貨が、IoT機器が、そしてシンギュラリティが、人々の出会いに華を添える時代なのだ。そのうち、ネットで知り合ったカップルが珍しくなく、オーガニックなネットを介さない出会いの方が原始的で博打みたいな時代になっているかもしれない。しかし、人類の恋愛ほど、未知数なデータはないと思う。どれだけマッチングサービスのお墨付きがあったとしても、最終的には本人たちに、いかにアトラクティブに見えるかが重要だろう。未来が見えすぎても幻滅するばかりだ。夢を抱ける生き方に人類は、恋をする生き物だから…。