来春、中国配車アプリ『ディディチューシン』が日本上陸して起きうる事

ユーザー数4.4億人の「滴滴出行(ディディチューシン)」が、来春日本上陸(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です!

タクシー配車とライドシェア(相乗り)サービスで世界最大手の中国・滴滴出行(※ディディチューシン)が日本に進出する。タクシー国内最大手の第一交通産業と組み、2018年春にも東京都内で配車アプリを使ったサービスを始める。シェア自転車やアリババの電子決済など中国発のサービスが相次ぎ日本に上陸。規制などのハードルもあって日本企業が手をこまぬいているうちに、中国など新興国企業の後手に回る懸念も強まっている。

出典:中国配車アプリ「滴滴」、来春にも日本でサービス 第一交通と組む

2018年、日本は、中国勢のサービスによって大きく変革せざるをえなくなった。それは中国からのインバウンドパワーにそれらのサービスが利用されるからだ。

2016年訪日外国人の4人に1人は中国から

2016年のインバウンド客数は、2403万9000人。消費額は3兆7476億円(観光庁)。そのうち、中国からのインバウンド客数は、637万人と27%を占める。つまり訪日外国人のうち、4人に1人は中国からのお客様なのだ。日本における消費金額も約1兆円と経済インパクトも大きい。

それらのインバウンド客数が、本国で4.4億人が利用する配車アプリ「滴滴(ディディチューシン)」を日本で使えるとなると、相当数の利用数が期待できる。

配車アプリの4つのメリット

インバウンド中国人が日本で配車アプリを使うことのメリットとして、

【1】使い慣れた中国の配車アプリ「滴滴(ディディ)」が、中国語のまま使えることだ。

【2】行き先を入力するだけで、アプリがドライバーとの通訳を果たしてくれる。

【3】支払いもクレジットカードやアリババのアリペイ(支付宝)や、WeChatPayなどの電子決済など精算できる。

【4】アプリのカベ、言葉のカベや、支払い時のカベを超えることができる。

【1】出発する前に、タクシーに予約を入れることができ、【2】地名さえ入れれば、言葉が通じなくてもアプリが行き先を指定してくれ、【3】降車時の精算不要。もう到着しているのに精算するために停車している30秒がなくなる。【4】料金や到着時間が事前にわかり、行動がしやすくなる。

現在、日本でも、配車アプリやウーバーもサービスを運用しているが、飯櫃なことになっている。

配車アプリでタクシーを呼ぶと、410円の迎車料金が加算されるからだ。ウーバーも、ラグジュアリーなハイヤーサービスだったり、なぜかフードデリバリーサービスの『ウーバーイーツ』を提供しており、本来のシェアリングエコノミーではない事業を展開している。

日本のタクシー市場は、1兆7230億円

日本のタクシー市場は、1兆7230億円(2016年度 全国ハイヤー・タクシー連合会)法人事業者は1万5271社、法人車両数20万3943台で、個人タクシー3万9304台を含め、総車両数は24万3247台

つまり、市場に対して、1台あたりの売上は年間708万円(※2017年11月5日修正)。タクシーの運転手の平均賃金は月収20万円、年収275万円だそうだ。平均値では、どこかにこの差分が吸収されていることとなる。

富士経済グループの調査では、【市場予測】1兆6260億円(2018年)だ。しかし、市場はずっと成長率ゼロのままだ。

第一交通産業は、市場シェア率3.4%で550億円(2016年)だ。

富士経済グループによるタクシー・ハイヤー業の市場シェア率
富士経済グループによるタクシー・ハイヤー業の市場シェア率

ディディが参入することによって、中国のインバウンド客が「第一交通産業」を結果として使用することは明確だ。第一交通産業の保有台数は約8700台。約500台からスタートで数千台を目指すという。

中国配車アプリ会社『滴滴出行ディディチューシン』とは?

滴滴出行(ディディチューシン)は、2012年6月に配車アプリとして、程維(チェン・ウェイ)が『滴滴打車』をスタート。テンセントの支援を受ける。2013年、中国レノボの創業者の娘であり、ゴールドマンサックスの元アジアマネージングディレクターの柳青 (ジーン・リウ)がCOO(最高執行責任者)として入社。2014年に柳青 (ジーン・リウ)が社長になり、アリババ支援の『快的打車』と合併し、2015年9月、滴滴出行(ディディチューシン)が誕生。2016年5月、Appleが10億ドル出資

2016年8月1日にUberの中国事業を350億ドル(3兆9390億7500万円)で買収。UBERのトラビス・カラニックはディディの取締役に。2017年4月、ソフトバンクが20億ドル出資ジョージ・ソロスも参画し、500億ドル(5.6兆円)の時価評価

2017年7月、ソフトバンクと滴滴出行はGrab Taxi(シンガポール)に20億ドルの出資。さらに、2017年10月、ソフトバンクは、UBERにも出資。ソフトバンクのUBERへの出資比率は14~17%となる。

このように、IT業界を巻き込んだ大進撃を、滴滴出行(ディディチューシン)は繰り返し、GrabやUberといった直接的なコンペティターをも結果としてソフトバンクをからめて協業関係に位置づけているのだ。

『滴滴出行ディディチューシン』が日本上陸して起きうる事

変革するタクシーの概念。『シェアリングエコノミー退国』のニッポンではあるが、2018年から2020年にかけて大きく変革しそうだ。

タクシーに他人同士を相乗りさせる営業が、全国の都市部を中心に解禁される見通しとなった。「相乗り営業」には各地の運輸局の許可が必要で、現状では過疎地などで限定的に認められてきた。だが外国人旅行者の需要が増え、2020年の東京五輪・パラリンピックでのタクシー不足も予想されることなどから、国土交通省が相乗りでの対応を検討。早ければ来年度中にも解禁する。

出典:タクシー相乗り、都市部で解禁へ 五輪での需要見据え

2020年の東京五輪・パラリンピックの旗印のもと、動きが変わる傾向が見えてきた。「滴滴」の配車アプリには、デフォルトで、「ライドシェア」も付いている。日本の「滴滴」アプリに搭載されるかどうかは不明だが、「ライドシェア」が解禁されるとなると、「滴滴」の配車アプリにある「運転代行」や「ヒッチハイク」などの日本でも合法なオルタナティブなタクシーサービスのプラットフォームになる可能性がある。

日本でもすでに「ヒッチハイク」サービスは単体ではあるが、なかなかブレイクしにくいのが現状だ。

ヒッチハイクサービスの『ノッテコ』

https://notteco.jp/

また、DeNAの個人間カーシェアリングの『Anyca』や、NTTdocomoの事業者間と個人間のカーシェアリングのハイブリッド『dカーシェア』などの2017年11月8日からのローンチも控えている。

タクシーにかぎらず、移動手段としてのクルマの利用シーンが、スマートフォンを活用したITとプラットフォーマーの台頭で大きく変革しようとしているのだ。しかし、いつまでたっても「白タク」の概念は変わらない。

中国では2016年3月、中国「白タク」のネット配車を容認したことにより、一気に慢性的なタクシー不足が解消されたという。

何の為に「白タク」を今まで規制してきたのかというと、「白タク」のドライバーが悪質で犯罪の温床だったからだ。しかし、IT化でドライバーとのやりとりがすべてトラッキングできるようになり、ユーザーもドライバーも相互に評価できるようになり、会計も明瞭になり現金を介在させない。GPSやクルマのアプリ同士のビッグデータが活用できるようになると、単に配車だけでなく、不要なクルマを走らせるという状況も無くなってくるのだ。

また、現在のプロのタクシードライバーが、本当にプロとしての接客レベルかどうかは微妙に思う。まず、到着するまで料金がわからないタクシーには、一度でも配車アプリを経験すると乗りたくなくなる。配車アプリで呼んで「迎車料金」が取られるのも日本だけだ。

筆者が実際にクアラルンプールで、利用しているGRAB TAXIでは、女性ドライバーも多く、運転さえできればイスラム社会であっても女性の社会進出に貢献したりしている。実際にプロのドライバーからの転職組も多い。

さらに、タクシーに乗ったポイントで、ピザが無料で取ることができたりするなど、退蔵益ポイントによる交換プログラムが派生してきている。こうなると乗れば乗るほどポイントがたまり、いろんな経験と交換ができるという、新たな販売促進マーケットが生まれている。

何よりも、一番怖いのが、配車アプリに慣れたインバウンド客が、プロのタクシーしか日本では、選択肢がないことで不便な国だと感じることだ。世界は一気にシェアリングエコノミーに舵を切っている。プロのタクシードライバーの雇用も、勘と経験だけで流しをするという非効率な働き方で、低賃金だ。効率よく、もっと需要の多い時に自由に働くという勤務体系があってもいいはずだ。不規則で健康を害しやすい3交代制度だけではなく、自分の好きな時に働けるという要素を取り入れることによって、あらたな勤務体系で参画するドライバーも増えるだろう。近い将来、自動運転というタクシーも登場してくる。

現在のタクシーの市場そのものがゼロ成長なのだから、プロの配車アプリ専用ドライバーとしての第二のキャリアづくりもありだと思う。国交省もふくめ、タクシー業界の保全ではなく進化を考えるべきタイミングにかかっている。何よりも、現状を維持することそのものが、いまの日本にとって一番の機会損失なのである。変化があることがビジネスチャンスにつながるのだ。