2007年iPhone発表 あれから10年のビジネス生態系の変化

(写真:アフロ)

KNNポール神田です!

2007年米国時間の1月9日(日本では1月10日)の本日、iPhone発表から10年の歳月が流れた…。発売は2007年6月29日。2007年9月5日にはiPod touchが発売された。初代はGSM回線だったので、日本で入手できたのは、次の第二世代モデルのiPhone 3Gなので、翌年の2008年7月11日まで待たねばならなかった。10年前の今日が、現在の主流となる「キーボードレスのスマートフォン」の幕開けだった。

当時、筆者はこんなコラムを書いた

【iPhoneが起こした4つの革命】

1. PCユーザーのための携帯デバイス

2. 「App Store」という、ノンパッケージソフト流通機能と完全カスタマイズ化

3. いつでもどこでも、つながる、さわれる、ウェブ・エクスペリエンス

4. ユビキタスな汎用マシン

ガラパゴス、フューチャーフォン全盛時代に、iPhoneは、米国よりも日本に1年遅れで上陸した。ワンセグなし、絵文字なし、ケータイメール(SMS)が有料、お財布ケータイなしなPCユーザーのための携帯デバイスであり、App Storeという「アプリケーション」ではなく「アプリ」という市場。誰もがAppleの審査に通れば、3割の手数料で全世界に流通されるというプラットフォームに参加できるようになった。テレビを見ながら、食事をしながら、右手に箸、左手にiPhoneという行儀の悪いクセもつくようになってしまった。ノートブックを開く間、スリープからの立ち上がりのほんの数秒のビジネスタイムも無駄にすることがない。しかもGmailなどが指先ではじきながら、読み進めていくことができ、返事は「iPhoneからの返事です」と署名と簡単な返事で処理していける。オフィスに戻ってメールを見てからというビジネス習慣は、もう過去の遺物となりつつあるのかもしれない。パソコン市場と同じで、スマートフォン型社会は、ほんの数年で、ギークだけのものでなくなることは明確だ。

出典:iPhoneが起こした4つの革命

10年前と変化した「スマートフォン型社会」

約10年前の期待は、今や当たり前の景色となった。もはや、何も感動するところがないくらいに枯れた技術となった。何よりも変化したことが、ギークや専門家、オタク、大学の先生も、おじさん、おばさんも、そして小学生でも普通に同じiPhoneを持っていることだ。GPSや加速度センサーを知らなくてもゲームやマップを使いこなしている。何よりも、圧倒的に写真を撮影する枚数が劇的に変わり、写真を共有する機会が変わった。同時に10年前には想像すらできないような犯罪も起きている。

小学生の女児に無料通信アプリ「LINE」(ライン)の有料スタンプを贈り、見返りに裸の画像を送らせたとして、トラック運転手の男が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で大阪府警に検挙された。

出典:スタンプ贈り裸画像入手=児童ポルノ、LINE悪用―専門家「心理つけ込む手口」

スマホ型社会で変化してきたこと

この10年間で一番変化したことは、2年毎に買い換えていたような、パソコンもビデオもカメラも、焦って買い換える必要がなくなってきたことだ。スマートフォンさえ、古くなければ事足りる事が多くなってきたからだ。汎用スマホが、ICレコーダーもビデオも、もしかすると楽器でさえも代替機としてワークしているからだ。実際に、出張にもパソコンやビデオを持っていかなくなってきた。取材でさえも、今日はカメラなしでも良いという判断をするようになった。すでに、今まで何十年も使ってきた専用デバイスが姿を消している人が多いことだろう。電卓、カメラ、ゲーム端末、電子辞書、コンパス、地図、CD、ICレコーダー、銀行通帳、iPod、PC、時計に至るまですべてスマートフォンに収斂されてしまったからだ。反対に増えたのは、モバイルバッテリー群とスマホケースとUSBケーブルくらいだ。

また、さらに、時間の消費も大きく変わった…。ネットニュースと接するほうが、新聞宅配紙よりもメジャーとなり、雑誌を購買しなくなり、読書時間よりもSNSに費やす時間の方が長くなる。メールに費やす時間もSNSに侵食された。情報発信も誰もの日常の生活手段となった。芸能人よりも稼げるユーチューバーなる職種が小学校の憧れの職種となる…。

スマートフォンの生態系ビジネス

twitterのサービス開始は、2006年7月15日だがメジャーになったのは2007年3月のサウス・バイ・サウスウェストなので、まもなく10年だ。facebookのサービス開始は2004年だが、一般公開は2006年、日本語版は2008年だからあと1年で上陸10年となる。シェアリングエコノミーのエアービーアンドビーが2008年、ウーバーが2009年だ。

スマートフォンとGPS、Wi-Fiと電話回線、すべての人がスマートフォンを手にしていることによって、アプリさえダウンロードしてもらえれば成立するビジネスばかりだ。スマホとアプリと共に成長してきたビジネス生態系なのだ。

10年前のAppleのジョブズCEOは、発表会で、現在の「アプリ」を「ウィジット」と紹介していた。小さな便利なガジェットの事をウィジットと呼んでいた。そう、ジョブズですら、現在のスマホのビジネス生態系を予期できていなかったのだ。もしも、スマホのアプリ経由でのサービスで支払いでも、5%を金融プラットフォームとしての手数料を兼ねていたならばどうなっていただろうか?また、AppleやGoogleでさえ、ソーシャルメディアの世界では失敗続きだ。TwitterやFacebookでさえ、シェアリングエコノミーサービスには手を出していない。

つまり、既存の単一デバイスはスマートフォンに取り込まれ、汎用化して複層化したスマホを活かした専用サービスがたくさん誕生してきた10年だったのであった。

これからの10年はシンギュラリティのビジネス生態系

来るべきシンギュラリティ時代を考えると、ロボットやIoT、自動運転、ドローンというテクノロジー分野と、AIやビッグデータによる先回りしたサービス分野やVRなどの経験分野などのビジネス生態系の掛け合わせが考えられるだろう。ロボットは人型やペット型や自立型である必要はない。スマホとロボットはいつしか一体化しているだろう。音声認識は、人間の舌打ちやため息の音まで逃さなくなり、サービス改善のAI化に織り込まれる。

ヘルスケア分野では人体のIoT化やセンシングで体調のこまかな変化にも気づくだろう。スマ-トフォンの進化が鈍化するなか、ビジネスの生態系は、すでに次の大きな進化を繰り返しはじめているはずだ。時価総額トップのAppleやGoogleでさえ、さらに予期せぬ進化に対応しようと模索しているようにしか見えない。

10年という大きなIT業界からのディケイドは、ITという言葉さえ陳腐化させることだろう。インターネット時代の「eビジネス」と同様に「IT」という業界もすべてに適応される時代へと向かっている。