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ソフトバンクが英ARM社を買収 シンギュラリティ時代への布石

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

海の日の連休の朝、ビッグニュースが飛び込んできた…。ソフトバンクが、あのARM社を買収するというのだ!

通信大手のソフトバンクグループは、半導体の開発などを手がけるイギリスのARMホールディングスを買収する方向で最終的な調整に入りました。すべての株式をTOB=公開買い付けで取得することを目指していて、すべての株式を取得できた場合、買収額はおよそ230億ポンド(3兆2000億円余)に上る見通しです。

ARMホールディングスはスマートフォンなどに使う半導体を設計し、そのライセンスを世界の半導体メーカーに提供しています。

出典:ソフトバンク 半導体開発のARMを買収へ

あのARM社は、実は、あまり知られていなかった

ソフトバンクが、あの英ARM社を買収するというのは、ついに…という印象を持ったが、社会的にはARM社の知名度は想像以上に低い。それはARM社のビジネスモデルの特殊性ゆえだろう。

ARMは、ざっくりいうと、ジョン・スカリー体制の頃のApple社がPDAのNewton(1993年発売)を作る為に、Appleと協力して作られたイギリスの半導体設計メーカーだ。その後、省電力で高性能ゆえ、ARMのアーキテクチャーは、モバイル機器の半導体のメイン規格となっていく。現在では組み込み型の半導体から、Android端末の半導体すべて、Appleの独自開発の「A.x」チップシリーズも、実はすべてARMアーキテクチャー上で動作しているのだ。そのARMアーキテクチャーをライセンスしているのがARM社なのだ。つまり、開発・設計、カスタマイズのみで、自社では半導体を全く作らないファブレスな半導体ライセンス企業だから一般には馴染みがとても薄い。

ソフトバンクがARM社を買収する理由

ソフトバンク、過去最大の買収となるARM社
ソフトバンク、過去最大の買収となるARM社

ソフトバンクの買収の歴史の中でも英ARM社の買収は、最大のものとなる予定だ。

巨額の買収劇で常に話題となるソフトバンク社だが、今回の買収額は過去の買収劇の中でも異例だ。巨額のボーダフォン、スプリントをはるかに凌ぐ3兆円を超える買収だからだ。

ソフトバンク買収の歴史
ソフトバンク買収の歴史

巨額の買収だった、ボーダフォン、スプリント、ARMを除くと、意外なことに近年の買収金額は過去から比較すると実は穏やかなお買い物だった。今回の買収がソフトバンクにとって大英断であることは明確だ。

そして、ソフトバンクがARM社を買収する理由はいくつかの仮説が考えられる。

まずは、英国のEU離脱のタイミングでのポンド安も影響したとは思うが、それは大した理由ではない。この時点で普通の日本の企業は英国の会社を買う気は癒えてしまいそうだが…ソフトバンクは違った。

【1】上流から下流までのスマートフォン垂直統合

まずは、携帯電話としての垂直統合が考えられる。さ

ソフトバンクは携帯通信会社、通信キャリアとして、日本ではソフトバンク、ワイモバイルを傘下に持ち、米国では3位のスプリントの親会社である。そして、ネット上のサービスとしては、ヤフージャパンも傘下にある。そして、携帯の卸機能としてのブライトスターが傘下にある。一方、「クラッシュオブクラン」のスーパーセルや「パズドラ」のガンホーなどのスマホゲーム株は売却済だ。

GoogleのAndroid OS端末の半導体はARMアーキテクチャーがデファクトなので、AndroidのCPU設計の上流から下流の中古販売に至るまで、一気通貫が考えられる。AppleのiPhone事業としても、ソフトバンクがARMを保有することによって、チップ関連はソフトバンク、ディスプレイ関連はホンハイという上流での座組でのトリオが完成する。ARMを傘下に収めることによって、販売、流通側以外の製造を手がけない半導体開発という側面を持つことができる。しかし、それはスマートフォン市場というコモディティ化した市場だ。

【2】シンギュラリティ時代への事業転換

ARM社という事業ポートフォリオがソフトバンクに加わることによって、孫正義社長が描くシンギュラリティ時代を牽引する事業が可能となるのが、今回の買収の最大のテーマだったと思う。成熟化していき、成長が鈍化し、ハード価格、通信価格が低減するスマートフォン市場とちがい、組み込み型のIoTの世界は、BtoBを含めさらに市場規模の拡大が見込める。つまり、IoT、AI、VR、ドローン、ロボット、医療、教育、ナノテクノロジーなど、シンギュラリティ時代の事業転換のキーとなる半導体設計の世界がそこには待っているからだ。

シンギュラリティとは「技術的特異点」のことであり、半導体が人類の能力を超える時点のことを示している。今回の買収の前触れは、副社長としてニケシュ・アローラを迎えた時にすでにはじまっていた(2015年11月222日)。まるで、今回の買収は、あの日の発表時の答え合わせのように感じた。これは、ニケシュ・アローラが手掛ける事業だったが、孫正義はまだまだ譲れなかったのだろう。

2018年、孫正義シンギュラリティの旅

2018年のシンギュラリティ
2018年のシンギュラリティ

20数年前に推察したハードウェア的なコンピュータの能力が人間が超える日は2018年だった。それを最近調べてもやはり2018年だった。300億個のトランジスタが1チップのコンピュータに入るのが2018年。物理的な二進法と人間の二進法としてのハードがシナプスに追いつく。そこから30年後は100万倍になる。

シンギュラリティのクロスポイント、30年後には、AIの知能指数は、IQが1万となる。ちなみに人類は、平均IQが100で、天才でも200そこそこである。それが、1万のトランジスタが登場するということは人類の100万倍スマートなトランジスタが登場する。

30年後のシンギュラリティの世界
30年後のシンギュラリティの世界

そして、30年後には、人類は100億人。シンギュラリティ時代のスマートロボットは100億台を超えている。IoT的な意味でのロボットだ。走るクルマはすべて自動運転のスマートロボットとなる。しかもIQは1万もあるロボットだ。現在、人類1人あたり平均2台保有している。30年後のIoTは一人あたり1000台保有している。ペンからメガネ、靴に至るまですべてネット接続クラウド接続されている世界だ。つまり、10兆個のIoTが1人の人間を取り囲む時代がやってくる。人類の100億人の数を1000倍超えるIoTのシンギュラリティがやってくる。

ソフトバンクアカデミア特別講義より

※講演30分対談1時間30分近くあるが、ハリウッドのSF映画を観るよりも未来を予測していると思う。

資料

http://cdn.softbank.jp/en/corp/set/data/irinfo/presentations/vod/2015/pdf/press_20151022_01.pdf

動画

http://www.softbank.jp/corp/news/webcast/?wcid=qvdpaclj

こんな世界観を考えて生きていたら、携帯を販売して稼ぐだけの人生はつまらなくなるだろう。英ARM社を買収することによって、モバイル端末、IoT端末の半導体のシンギュラリティの未来に、深く関与できる。孫正義の大博打が、また一からはじまったのだ。ニケシュという片腕を失ってまでも成し遂げたい博打のはじまりだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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