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なぜ?震災交付金支給にマイナンバーを使わないの?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田 阪神大震災被災者です。

安倍晋三首相は21日、熊本地震に対応する政府の非常災害対策本部会議で、2016年度の普通交付税を22日に繰り上げ交付すると表明した。熊本県と南阿蘇村など16市町村を対象に、合計421億円を交付する。

首相は会議で、被災者の避難が長期化しているのを踏まえ「被災者の不安やストレスへの対応が急務だ」と強調した。熊本県は21日、県内全域に被災者生活再建支援法を適用すると発表。住宅が損壊した被災者に最大300万円を支払い、住民の生活支援を本格化させる。

出典:交付税421億円、22日に前倒し 熊本県と16市町村に

被災地で暮らす被災者にとって、一時的とはいえ震災の見舞金にあたる交付金ほどありがたいものはない。交付金の前倒しは、避難所では悲願でもある。しかし、次の課題は、「いつ」「どうやって」交付するかの早期の発表だ。まずは、交付時期さえ明確にすれば、避難所を離れられる人はたくさんいると思われる。今は1人でも、避難所から卒業できる人を、後から不公平なく保障できるかが重要だ。「いつ」と「どうやって」のインフォメーションもセットで発表しないかぎり、避難所に留めさせることを助長するばかりだからだ。

早くても○月○日、交付時期の早期の発表が必要!

まずは、交付時期さえ明確にすれば、避難所を離れられる人はたくさんいる。もうこの段階で、どれだけがんばっても、連休前には無理だろう。しかしだ。どれだけ早急に交付するとしても、「5月以降と発表」すれば、今日、明日から避難所を離れるだけで、1週間以上は現場を離れられる人がいる。それをどこの誰が、避難所を離れたという事実のみを客観的に記録する必要がある。それだけ証明するだけで、避難所を離れることはできる。もちろん、避難所を早く離れた人ほどコストが発生しているのだからその分補償できれば、避難所にいるメリットは少なくなる。このスキームが重要だ。被災者を出来る限り、避難所から卒業できる仕組みが必要なのだ。

マイナンバーの役割は『災害対策』と『被災者生活再建支援金の支給』『被災者台帳』

現実味は限りなく低いが、こんな時だからこそ、約3,000億円かけてスタートした悪名高い「マイナンバー」の役割を積極的に活用すべきなのだ。もう一度、マイナンバーの政府広報のサイトを確認してみよう。大きく『災害対策』が、大きく謳われているのだ。

マイナンバーの3大機能のひとつは『防災』
マイナンバーの3大機能のひとつは『防災』

http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/point/#sec1

誰も持っていないマイナンバーを使っても意味がないということではなく、持っている人には迅速に『被災者生活再建支援金の支給』と『被災者台帳』が作れるということをこの震災で証明すべきなのだ。すでに1週間が経過しても使われていないことのほうがおかしいのだ。

なぜ?もっと国民は声高に、「熊本、大分の皆さんにマイナンバーを使って交付金を一日でも早く配布せよ!」と政府に対して煽らないのか?そう、それはマイナンバーが実際に普及していないからだ。しかしだ。もう直接費だけでも3,000億円、国民全員から2500円は集めて作られた仕組みが2016年1月から本格稼働してしまっているのだ。この甚大な震災に活用しないことは理不尽なのだ。いちはやく、マイナンバーを活用し、今日にでも、『被災者生活再建支援金の支給』すべきなのだ。それが、できなければ、2016年1月から本格運用されているマイナンバーなんて、やめてしまえと言いたい。こんな時に使えないマイナンバーに3000億円もかけてしまっているのか?

当然、普及していないマイナンバーを使うのは批判にさらされることだろう。

しかし、無理やりマイナンバーを押し付けたのだから、最大限に活用して、マイナンバーで即日交付を実現すれば、国民にマイナンバーの有用性を初めて知らしめるチャンスでもあるのだ。もしかすると、甚大な震災時には、指紋や虹彩でマイナンバーがなくても個人が証明できるというくらいのシステムが必要なのかもしれない。

インドのUIDAIカードは個人を証明するのにとどめたから普及した

インドですでに9億人に普及しているインド版マイナンバー「インド固有識別番号庁(UIDAI)」は、10本の指の指紋と虹彩で個人を証明できる。

http://forbesjapan.com/articles/detail/10317

マイナンバーカードを持っていなくても、瞳や指をかざせば、すぐに震災の交付金がもらえるしくみは、これだけ地震の多い日本には絶対に必要だ。強制でなくても、任意でも登録するメリットが多ければインドのように普及するはずだろう。また、インドのUIDAIの場合は、個人を証明するだけで、それ以上の情報は何も持たせないところがミソだ。日本のマイナンバーは職場やら、税金やらをなんでもヒモづけてしまうから普及しないし、使いたくもないのだ。

しかし、まずはマイナンバーを持っている人には、こんなメリットがあったという規制事実を作るだけではなく、本来のマイナンバーの役割をきちんと果たさせる声をしっかりとあげるべきだと思う。IT化を進めてもそれを利用できるリテラシーがともなわなければ、それは意味がない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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