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え!シェアハウスで同一住所ならば事実婚認定?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

東京都国立市のシェアハウスで暮らすシングルマザーの女性(41)が、同じ家に住む独身男性と「事実婚」の関係にあるとみなされ、市が十一月、ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当と児童育成手当を打ち切ったことが分かった。事実婚の実態はないが、市は「都の見解に従い、同じ住所の男女は事実婚とみなす」と説明。女性は「住所が同じだけで打ち切るなんて」と憤る。

出典:ひとり親 手当打ち切り シェアハウス 住人に異性いるだけで

これはまた、目を疑う認定判断だ…。まさにザ・お役所仕事。規定どおりであれば、思考停止して業務を機械のように執行してしまう事例だ。この役所の人たちは、シェアハウスを見て事実婚と本当に感じたのだろうか?

筆者はシングルマザーのシェアハウスの運用管理をしていることもあり、この問題に対して大きく異議を唱えたいと思う。

シェアハウスでも、「同一住所に親族以外の異性がいると事実婚」

事実婚の実態がなくても、「同一住所に親族以外の異性がいることが事実婚」として扱われるのであれば、相手が複数の異性住人であれば、どうやって事実婚の相手として特定したのだろうか?

もはや、これはシェアハウスに住んでいるだけで、特定の人を事実婚相手にしてしまうというのは無謀すぎる。3年以上の内縁関係や事実婚が認められると慰謝料の請求などが、シェアハウスの中でも発生してしまうことも意味するではないか!

市の担当者は「事実婚でないという女性の主張は本当だと思うが、やむを得ない」。都は「異性と住所が同じなら、同一世帯ではないことが客観的に証明されないと受給対象から外れる。シェアハウスだからだめだという話ではなく、各区市で判断してもらうことだ」

一体、何が「やむを得ない」のだろうか?不正受給に見えたのだろうか?それは内縁関係や事実婚関係があるモノ同志がシェアハウスを隠れ蓑にしているということを証明する事実を掴んだ時にいえることではないだろうか?

各区市が判断することであれば、シェアハウスに居住しているということをなんらかの証明する機関が必要な時代かもしれない。シェアハウス減税とか適応すれば、各区市ですぐに実態が掌握できるはずだ。

東京都国立市でシェアハウスに住む女性が児童扶養手当の支給を停止された背景には、一九八〇年に当時の厚生省(現厚生労働省)が出した「事実婚」の規定に関する課長通知がある。だが通知はシェアハウスの形態を想定しておらず、生活実態を反映していないとの指摘が出ている。

通知では事実婚と判断する基準として、原則として当事者同士の「同居」を挙げる。同時に「社会通念上夫婦としての共同生活」がある場合、「それ以外の要素については一切考慮することなく、事実婚として取り扱う」と規定した。

共同キッチンや共同トイレ、共同バス、共同リビングルームを「社会通念上夫婦としての共同生活」と考えるならば時代錯誤もはなはだしい。同一住所で届け出されているネット喫茶、マンガ喫茶、カラオケハウスまでもが、事実婚の場となってしまうのか?恐ろしい社会になる。

厚労省は「支給手続きは生活実態を見た上で市町村が判断している。通知には問題はない」(担当者)としている。児童扶養手当制度は六一年に始まり、現在の支給額は子どもが一人の場合、最大で月約四万円。二〇一三年度末で、百七万三千七百九十人が受け取っている。 

厚労省は、すぐにシェアハウスという居住実態について、調査すべきだろう。実際にシェアハウスでは事実婚という関係になった場合は、「出家」していくケースの方が多い。それは2つの理由がある。

シェアハウスに事実婚が存在しない二つの理由

シェアハウスにおいて、事実婚が存在しにくい1つ目の理由が経済的な理由だ。シェアハウスは、入りやすく出やすい。家財や家電が最初からそろっているからだ。その変わり荷物などはそれほどおけない。靴や洋服などツーシーズン毎にレンタル倉庫会社や実家から取り寄せる。さらに、光熱費なども固定で割高に支払うケースが多い。初期コストは非常に安いが、月額の固定費は高めの設定がなされている。目安は、1年半以上ともなると家財を揃えてシングルで住んだ方が経済的なのだ。これが、2人以上の事実婚者同志ともなれば、その月々のコスト負担はさらに大きくなる。なので、同一の経済環境圏にある事実婚であれば、シェアハウスでない方が経済的だからだ。

そしてもうひとつの理由は、事実婚のカップルなりシングルマザーの相手が同居するとなると、どうしても、夜の騒音でトラブルになることが多いからだ。たまに週末にこっそりと、彼氏、彼女が遊びにくるのでもカンにさわるシングルが多いところだ。そこで、事実婚同志が毎日いるというのは考えにくいからだ。さらにシングルマザーという同居生活の中で、小さなお子様から高校生くらいまでが同室にいることを考えると事実婚関係はつらいものがあるだろう。

この二つの理由だけでも、「同一の住所の異性が事実婚」という認識は社会の実態にそぐわないと考えられる。

シングルマザーの児童扶養手当制度や児童育成手当を管轄している厚労省を訴訟してみるということでも、注意をよびかけることができるかもしれない。

早速、うちのシングルマザーたちは、「区役所の人が調査に来たら、ポールさんすぐにいなくなってくださいね!」と念をおしはじめた。いや、それは違うよ。それは法律側を社会実態にあわさせるべきだってば!

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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