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なぜ?アマゾンではニセモノが販売されてしまうのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

2014年12月26日(金)アマゾンで電子キットの商品を販売しているスイッチサイエンス社の金本氏は、出品しているAmazonからの返品に目を疑った。倉庫内で破損汚損したなどの理由で返送されてくる返品の中に、自社がアマゾンに入庫していたものと違うニセモノが混在していたからだ。

レビューに時々書かれる悪評の原因が理解できた。

「自社が収めていないニセモノの製品が本物と混在し、お客様に納品される事によって、自社製品のクオリティが誤認されたことに対して強い憤りを感じる」とスイッチサイエンスの金本代表は語る。

Arduinoを始めようキットのアマゾン販売ページ

ニセモノが混在されたスイッチサイエンスのアマゾンサイト
ニセモノが混在されたスイッチサイエンスのアマゾンサイト

スイッチサイエンス社は、アマゾンが倉庫兼発送まで代行してくれるFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)を利用している。FBAは、アマゾンが提供する事業者向けのアマゾンのプラットフォームを活用した物流プログラムだ。

アマゾンの混在在庫のメリットとデメリット

アマゾンのFBAでは、商品名とバーコード(13桁のJANコード)があれば、混在在庫という商品の管理がデフォルトでなされている。

混合在庫の例

出品者の在庫からある商品が購入された場合、Amazon は、その出品者の在庫とその他の出品者の在庫を物理的には区別しません。これにより、Amazon は購入者からの注文をより効率よく処理することができます。

出典:アマゾン混合在庫の例

事業者は個別の商品にアマゾン用の商品ラベルを添付することなく、アマゾンで商品を一括管理し、迅速に発送してもらうことができる。そしてこのプログラムはデフォルトで混合在庫となっている。しかし、悪意ある事業者が存在することによって、その信頼性は一気に崩れてしまう。

アマゾンにニセモノを混入させる悪徳事業者

アマゾンに入庫する際に、悪意ある事業者が、似ている商品を入庫するのは、いともカンタンなのだ。商品名とバーコードさえ一致させればいいだけだ。アマゾンはFBAプログラムにおいて、商品ごと検品するという機能はもっていない。同じメーカーの同じ製品だから、注文を受けると最速でユーザーに発送できるスキームを優先しているからだ。だから、アマゾンではニセモノが本物と混在して販売されるという事件が発生している。

悪徳業者がニセモノをアマゾンの倉庫に入庫する。ユーザーがアマゾンから商品を選び、その中からセラーも選び注文をする。正規品が届くこともあれば、ニセモノが届くこともある。ニセモノと知らず使いつづけるユーザーもいるだろうし、不良品として返品してくるユーザーもいる。メーカー直販としてのスイッチサイエンス社は、自社製品を販売しているつもりで、アマゾンでニセモノを販売させられたこととなったのだ。

商品を購入したユーザーも不幸であれば、正規品を販売している事業者も不幸だ。そして、アマゾンでの不良品体験をさせたアマゾン自身も不幸だ。得をしているのが、悪徳業者だけだ。これは問題だろう。

それだけではない、アマゾンのFBAが、ニセモノの混入が可能なだけではなく、毒物や薬品などの異物混入さえも可能ではないだろうか?企業に対して、御社の製品に毒物や異物を混入したと脅迫することも可能だ。大規模に販売されている製品ならば、ペヤングのまるか食品どころの騒ぎではなくなる。

この件について、消費者庁に聞いてみた

「原則的に各自治体の消費者センターから複数に上がってくる案件に対して、職権として調査することがある。今回の事例は、初めて伺うことなので精査する必要があると思う。異物混入などのおそれがあれば食品安全課が対応する。法的に問題がなければ、現在のところ業界団体に対して働きかけるという行動をとらせていただく」消費者庁広報課上田氏。

この件について、経済産業省に聞いてみた

「フルフィルメントで、ニセモノが販売されている事実は認識していなかった。関係部署と問題が発生しうる可能性を共有したいと思います」経産省情報経済課北元氏。

この件について、アマゾンジャパンに聞いてみた

「担当者が不在のため、電話に出られません」自動応答メッセージ。

アマゾンのサービス品質向上について

アマゾンの並行輸入品では、ニセモノが堂々と販売されていることがある。レビューがなく、パッケージを開けて使用した場合、返品ができなくなる製品もある。得にわかりにくいのがブランド製品ものだ。

昨年のアマゾンでは、UGGのブーツは並行輸入品だらけで、コメントに幾つものニセモノや模造品、粗悪品というユーザーのレビューが並んでいた。しかし、問題はそれが本物かニセモノかがわからないところだった。

現在、アマゾンでUGGを検索すると、並行輸入業者がほとんど消え、UGG Australia (アグオーストラリア)のみになっている。本来、UGG(アグ)というのはブランドではなく、オーストラリアのブーツのジャンルであったのに、オーストラリア人経営のアメリカ企業の中国産のUGG Australia社のみがUGGの本物と認識されている。オーストラリア企業のオーストラリアの製品がニセモノと呼ばれている。それでも、アマゾンが何らかの措置をUGGブーツに関して取ったことは評価できると思う。

しかし、iPhoneやiPadで使われている Apple Lightningなどは、充電はできるが、データ転送ができない非正規品と正規品が混在され、現在でも販売されている。レビューを見れば見るほど、amazonが販売していないセラーの商品は購買したくなくなる。これでは、何のためにセラーの商品をアマゾンが扱っているのかが理解しがたくなる。

amazonは、早急にニセモノやコピー品を徹底的に排除するキャンペーンをやるべきであろう。ユーザーからの直接の通報や、FBAにおける入庫商品との入庫セラーの管理。悪質セラーの排除など。便利で合理的なアマゾンだが、返品の仕組みも変わり、怖くて購買できない通販になっては意味がなくなる。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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