さようなら!ロータス1-2-3表計算ソフトの歴史

KNNポール神田です!

ロータス1-2-3の起動画面
ロータス1-2-3の起動画面
サポート終了をアナウンスするIBM
サポート終了をアナウンスするIBM

今週、「IBM Lotus 1-2-3. Millennium Edition」「IBM Lotus SmartSuite 9.x」「IBM Lotus Organizer」がついに、サポート終了日である(2014年)9月30日を静かに過ぎた。

出典:さようなら、「Lotus 1-2-3」--サポート終了で31年の歴史に幕

IBMのサポート終了のお知らせ

それは、ビジカルクという表計算ソフトから生まれた

[表計算ソフト]というジャンルがなければ、パーソナルコンピュータというジャンルはマニアだけのガジェットで終焉していただろう。ゲーム専用機になっていたのかもしれない。ロータス1-2-3は、確実にパーソナルコンピュータをビジネスに使えるコンピュータとして一時代を成長させ牽引してきたと思う。

最初の表計算ソフト「ビジカルク(VisiCalc)」が誕生したのは、1979年10月。「アップルII(1977年)」で動く表計算として人気を集めた。

MITの学生であったボブ・フランクストンとダニエル・ブルックリンは、教授が黒板に金融モデルを書くのを見ていた。その教授が間違いに気づいてパラメータを修正しようとしたとき、表の中の大部分を消して書き直さなければならなくなった。これを見たダニエルは、このような計算をコンピュータ上で処理する「電子式表計算」を思いついたのである。

ダニエルは当初、表計算専用のハードウェアを設計・製造して販売することを考えていたが、ボブは「わざわざハードを作らなくても、既に売れているハード向け(アップル II)にソフトを作って売ったほうが賢明だ」とダニエルを説得し、当時既にベストセラーとなっていたアップル II向けにソフトを作ることを勧めた。そこで共同でSoftware Arts社を設立し開発をスタートさせた。

1979年、当時すでに、「アップル II(1977)」はベストセラーとなっていた。また、ビジネス・スクール卒のMBAホルダーが大量に活躍しはじめた時期である。彼らは、大型コンピュータは買えなくてもアップルIIなら購入できた。また米国はサラリーマンの収入が、源泉徴収ではなく個人で確定申告が必要なため、合理化ツールのニーズが個人でもあった。ビジカルクは、1979年に販売され、原価は、たったの9ドル(フロッピーディスクは2ドル後はマニュアルバインダー)、定価は99ドル(約1万円)。 年間10万本。利益は900万ドル(9億円)を生んだ。そして、6年間で70万本を売り上げる。

当時の大型コンピュータには、すでに表計算プログラムが存在していたが、ソフトウェアに特許という概念がなかった(著作権のみ)。また、ビジカルクのヒットによって、アップルIIも、ホビーやゲームの為ではなくビジネスに使えるコンピュータへと変身していく。

ロータス社創業者のミッチ・ケイパー(1950年生まれ)の後出し戦略

ラジオDJや心理カウンセラーなどの仕事を転々としていたミッチ・ケイパーもアップルIIと出会い、人生が変わった一人だった。ビジカルクを作ったボブ・フランクストンと出会い、ビジコープ社で、VisiPlot と VisiTrend などを開発し、1981年に販売する。そして1982年に、「ロータス123(1983年)」を開発・販売するロータス社を創業する。IBMが出したパーソナルコンピュータ「IBM-PC(1981年)」用の表計算ソフトとしてだ。

ミッチ・ケイパーが力を入れたのが、IBMのビジネスユーザーに対してのサポート体制と、使いやすいユーザー・インタフェース。そして、ワンタッチでグラフ化ができる機能などとマクロ機能とオンラインヘルプだ。サポート部門も設立した。

その頃、マイクロソフト社は、マルチプラン(1982年)をロータス1~2~3(1983年)に1年先駆けて販売をしていた。マイクロソフトがその後、「エクセル(1985年Macintosh版1987年MS-DOS)」を販売する3年前のことだ。たかが3年、されど3年の差は運命を変える…。

変化するPC市場

ミッチ・ケイパーは、ビジカルクにソフトウェアの特許がなかったので、ライセンス料を支払うことなく、ロータス1-2-3を開発販売することができた。表計算だけでなくグラフ機能とデータベース機能、そして、マクロやアドインによる拡張性を加えた。さらに、マニュアルを見返す必要のないオンラインヘルプ機能を世界で最初に搭載したのだった。また、マイクロソフトのマルチプランに対して、よりリッチなメモリ環境を必要とすることで高速な処理を実行し市場を奪っていった。

IBM-PCが、ロータスと一緒に、アップルIIの牙城を崩すのに、それほど時間はかからなかった。しかし、それにも変化が現れる。それは、マイクロソフトが、MS-DOS(マイクロソフト・ディスク・オペレーション・システム)を販売することにより、IBM純正のPCでなく、IBM互換機にMS-DOSを乘せ、ロータス1-2-3という組み合わせによる第三の勢力が伸びたことがマイクロソフト帝国のパワーバランスを創るきっかけとなった。

そして、アップル・コンピュータ社はGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)に特化したパソコン「Macintosh(1984年)」を発売する。それに合わせマイクロソフト社は、MacintoshのGUIに合わせた「エクセル(Macintosh版は1985年、MS-DOS版は1987年)」を投入した。

当時のPC市場の戦場は、「IBM MS ロータス連合」VS「IBM互換機 MS ロータス連合」VS「アップル MS」 連合という複雑な座組みの戦さであった。もちろん、マイクロソフト(MS)は、どの連合が買っても損をしない立場にいたのが驚異でもあり脅威であった。

「コンペティティブアップグレード」がロータスにとどめを刺した

ミッチ・ケイパーは、1986年に退社した(1987年まで取締役)。その後のミッチ・ケイパーは、オープンソース・アプリケーション財団(OSAF)、電子フロンティア財団(EFF)、ウィキメディア財団理事などのNPO活動に注力を注ぐようになる。「個人の自由を保護するのに役立つと信じられるテクノロジーを支持する」という姿勢を貫いている。

1989年、ロータスは、クライアント・サーバ型のグループウェアである「ロータス・ノーツ」を販売開始した。開発者はレイ・オジー(後のマイクロソフトの最高技術責任者、2005~2010年)。これが表計算のシェアを落とす中、ロータスの生き残り策となった。

そして1990年代に入り、マイクロソフトは「ワード」や「エクセル」で「WordPerfect」「一太郎(※日本市場において)」や「ロータス1-2-3ユーザー」のユーザーに、格安でアップグレードできる「コンペティティブアップグレード」を展開した。目先の利益よりも、将来のARPUを確信していたからだ。このアップグレードで、ユーザーはマイクロソフトの手中に続々と墜ちていった。

この戦略は、その後、ネットスケープブラウザに対しても無料でIEブラウザを提供するということでも行われたお家芸とも言える

1995年IBMがロータス社を35億ドル(3,500億円)で買収する。その年の暮れにはマイクロソフトが11月ギリギリに「Windows95」を世界発売するとさらにWindows OSの時代がやってくる。そこからは表計算といえば、「エクセル」が標準となった時代が延々と続く。Windows搭載PCに、Officeが標準搭載されれるという土地を買ったら家も同時についてくる戦略だからだ。あとあと家を建てるんだったら、土地と一緒についつい買わされてしまうのだ。

アップルの「ナンバーズ」も、「Googleスプレッドシート」もあるのだが、いまだにエクセルを我々はワケもわからず使い続けている(笑)

マイクロソフトという史上最強の環境変化に強い企業

「ロータス1-2-3」が市場を独占していた時代は、誰もその凋落ぶりを、考えても見なかった。それと同時に、どれだけのビジネス上の環境変化でも、しぶとく生き残り、どんな手を使ってでも、勝ち続けてきた企業がマイクロソフトだ。そのマイクロソフトも、まさかGoogleがここまでの展開になるとは考えてもいなかったことだろう。マイクロソフトにとって、アップルは独占禁止法の手前とOfficeのお得意様として生き残ってもらわなければならない存在だけど、Googleには携帯OS市場を奪われ、もはやパソコンやタブレットOSでさえ油断のならない存在になっている。

次の時代の、ロータス1-2-3になっているのは、マイクロソフトなのか、Googleなのか…?

それは将来の答え合わせにとっておきたい。

このIT業界、たったひとつの戦略ミスで簡単に滅びるのは、過去の短い歴史の中で十分に証明されている。

1961年神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を兼任後、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリーム、活動などをおこなう。メディア出演、コンサル、取材、執筆依頼 などは 070 5589 3604 まで

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