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#ポールマッカートニー 延期の機会損失金は約3億円、遠征組の社会損失2億7,500万円

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
5/17国立競技場で開場直後、ライブ延期のアナウンスに耳をかたむける来場者たち
5/17国立競技場で開場直後、ライブ延期のアナウンスに耳をかたむける来場者たち

ポール・マッカートニーのライブ・コンサート延期は先ほど書いたばかり。但し、気になるのがプロモーターの判断と現在の心境だ。

国立競技場での昨日のライブチケットは、5万5,000枚が完売であった。

価格は、S席 1万7,500円 A席 1万5,500円 B席1万3,500円

サウンドチェック参加券 6万7,000円

VIPパッケージ #I 9万3,000円 #II 8万3,000円と、6種類もある。

サウンドチエックの総数は、約200席程度なので誤差として含めず、便宜上、A席1万5,500円で計算すると、

チケット売り上げのみで、約8億5,250万円の売上だ。本来2回の公演なので、国立競技場の合計で17億500万円の売上(チケット売り上げのみ)となる。

※5/21の武道館分は割愛

そこで、今回の延期によって影響の受ける部分のそろばんをはじいてみた。実際に延期となった会場代はどう変わるのだろうか?

国立競技場実施本部に問い合わせてみると…

今回のポール・マッカートニーツアーで抑えていたスケジュールは、

設営が、2014/05/13の夜から始まり5/20(火)の撤去日までだった。5/19も予備で含まれていたのだ。

国立競技場は、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)の運営でアマチュアスポーツの場合、9:00-21:00で1日36万8,000円。しかし、商業的興行の場合は、設営日50万円 興行日が3,000万円となる。

本来であれば、

設営日 5/13,5/14,5/15,5/16,5/19,5/20の6日間×50万円 =300万円

興行日 5/17 5/18 の2日間×3,000万円 = 6,000万円

で、合計6,300万円

今回の延期により、興行日 5/17 5/18 5/19 の3日間×3,000万円 =9,000万円で、合計9,300万円と、3,000万円が跳ね上がる可能性がある。「AKBさんの場合などの天候不良とはちがって、アーティスト様ご本人の体調不良なので、興行日としての金額は、今後プロモーターの方とのご相談になります」と同事業部のコイズミ氏談。また、プロモーター側の手配としては、警備やセキュリテイの追加手配が考えられる。実際にアルバイトの人たちも5/19月曜日の予定がすでに決まっていたりするので、この土日は会場の運営側のスタッフィングに追われていることだろう。

そして、最大の課題は、5/19月の客入りの問題だろう。

遠征組のファンは、5/19月に来られるのか?

ポールのコンサートの参加者は遠方からの遠征組も多い。今回も新潟や札幌、名古屋、静岡と地方から新幹線や飛行機でかけつけた人たちも多かった。昨日(2014/05/17)は、信濃町の飲み屋が一瞬にして、ポールの延期でどこもかしこもあふれかえっていた。それぞれが、往復交通費にホテルを換算すると約5万円くらいの旅費がかかっている。遠征組を10%として考えると、5,500人×5万円として、

2億7,500万円の金額が無駄になってしまった

そして、口々に平日の5/19の17:30に、東京にかけつけるのは無理。ということで払い戻しか、行きたい人にチケットを譲るという人が大半だった。しかし、都内組は、仕事を調整してでも駆けつけるという人も多い。

遠征組10% 5,500人が、払い戻した場合の金額は、A席1万5,500円で、8,520万円通常の20%が、1万1,000人が、払い戻した場合の金額は、1億7,050万円払い戻し率合計40%ならば、2億5,570万円の売上損失となる。

しかし、5万5,000人の観客のうち、どれくらい来場するのかは当日にならなければ、まったくわからない。しかしリスクを予測しておくことは重要だろう。しかも、現在のチケットの座席をそのままな適用ので、どの席が空席になるのかもわからない。だから、当日券を売りたくても、ダブルブッキングになってしまうので、当日券も出せない。しかし、空いた席のままで、ポールに演奏させるのは、自己責任といってしまえばそれまでだが、ファンも悲しがることだ。

「当日自由席券」という空いている席ならば、移動できるというアイデアはどうだろうか?これは開演前に20分あれば、実現できそうだ。しかし、運営はかなりタイトとなり、礼儀ただしい年齢層のファンが多いが、荒れるリスクもある。でも、当日来られる人のチャンスは生むことができる。しかし、決断までの時間が短いのと、運営スキームが複雑すぎる。

おそらく、国立競技場側も、まるまる3,000万円の追加請求はないと思うが、払い戻し率40%であれば、2億5,570万円のリスクと合わせて、約3億円近くの機会損失金は計上しておく必要はありそうだ。

もちろん、これはアーティストのポールのギャラのパーセンテージにも反映されてくることだろう。

もし、ポール側が売上50%の契約で、4億2,625万円だったとしたら、ギャラの70%(3億円)もペナルティになる可能性が出てくるのだ。おそらく、そんな話はすべて終わってからとなるんだろうけど、そんなことを考えながら、今から複雑な心境で国立競技場のサウンドチェックの音を聞きに行くことにしてみる。

たった一日の延期でも、そのウラに動くコストの社会的損失金額は膨大だ。

【関連情報】

もしもポール・マッカートニーが年収400万円だったら

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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