Yahoo!ニュース

シャラポワ選手がシュガーポワ選手になる理由

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
sugarpova.com/
sugarpova.com/

【追記:2013/08/22】

全米オープン(26日~9日9日)期間中だけ自身の会社が販売するキャンディーの商品名「シュガーポワ」に名字を変更する計画を断念した。代理人が米メディアに語った内容として、国営ロシア通信が21日伝えた。

出典:時事通信

やはり、予想どおり、シュガーポワ選手にはならないという判断をしたようだ。

それでも、十分PR効果のあったアプローチであったと思う。

【/追記:2013/08/22】

これは見事なプロモーションだといえよう!

女子テニスの元世界ランキング1位、マリア・シャラポワ(ロシア)が、26日(2013/08/26)開幕の全米オープン期間中に限り、名字を自らが所有する会社と同じ「シュガーポワ」に変更するよう米フロリダ州の裁判所に申請したことが分かった。英紙タイムズが20日(2013/08/20)付で報じた。「シュガーポワ」は各種キャンディを販売しており、大会中に着るウエアには唇をイメージした同社のロゴもつけるなど宣伝とみられる。同紙は「シャラポワとマネジメント会社IMGの異常な策略」と指摘した。

出典:http://sankei.jp.msn.com/sports/news/130820/oth13082023470017-n1.htm

この裁判所に申請したことによって、一気にシュガーポワの知名度は全世界に伝わる。

http://www.sugarpova.com/

「Name, set and match to Miss Sugarpova」

changing her surname to Sugarpova for the two-week duration of the US Open, in honour of her line of sweets.

出典:http://www.thetimes.co.uk/tto/sport/tennis/article3847544.ece

英ザ・タイム紙も、このように 「ゲーム」を「ネーム」に引っ掛けたタイトルで報じている。海外の新聞は本文よりも見出しの制作により時間がかかっている(笑)。

この申請が通る可能性はほとんどないだろう。これが、通るのであれば、アスリートがネーミングライツにこぞって登場してしまう。

たとえば、ゲームに勝つ度に名前が呼ばれるテニスなどでは、「ザ・ゲーム・イズ・ウォン・バイ・ナイキ・ナダル」(笑)とか続出するだろう。

「ウィルソン・フェデラー選手」とかも。

シュガーポワ選手は、さらに「ヘッド・シュガーポワ選手」となったりすると、もうこうなると選手名のワケがわからなくなってしまう。

この申請をフロリダ州の裁判所は、2週間だけ改名する意味は、宣伝的価値でしかないと判断し、認めることはないと思われるが、申請を出しただけでニュースになったので、 SUGARPOVA.comのいいPRになっていると思う。

そして、シャラポワ選手が単なる広告塔だけではなく、彼女の慈善財団「ザ・マリア・シャラポワ財団」が関わっていることをすぐに知る事となるだろう。そして、その活動が、彼女の祖国であるベラルーシ、そしてそのチェルノブイリ原発事故後遺症のためのプロジェクトなどに寄付されていることがわかる。これらが、さらに、SUGARPOVA.comの価値を上げている。

ニューヨークの店舗などもわかり、単なるお菓子を購入するだけでなくなっていく。

きっかけは、ネーミングライツのような突飛なアイデアでも、そこで飛びついた人たちが、思わず、ファンになるしかけをほどこしておくPRは重要だ。

自分がその製品やサービスを購入することで、どのように社会と関われるのか?。購入することの意味が問われる時代だ。

おそらく、このシューガーポワを購入している人たちの大半は、シャラポワの話になって、そのうち、いくつかの人たちは、慈善財団の話になり、そして、さらに、チェルノブイリの話になっていく…

そんなお菓子は、世界のどこにも見たことがない。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事