■それは、週刊朝日の記事から始まった

話は、2012年の10月にさかのぼる。

週刊朝日の記事「ハシシタ・奴の本性」による「出自(しゅつじ)」についてのクレーム騒動から、開幕一戦目がはじまった(2012年10月26日週刊朝日)。

執筆したのは、佐野眞一氏。ダイエーの中内氏やソフトバンクの孫氏、石原慎太郎氏についても同様の取材を行い執筆している。

あくまでも出自(しゅつじ)について異様なまでもこだわるのが佐野氏の通常のスタイルだ。橋下氏にかぎったことではない作家だ。DNAレベルでその人の行動が形成されるという文脈はある意味稀有なアプローチである。また、毎回仰々しいフレーズで始まるのもいつものセオリーなのにそこまでこだわる必要はなかった。

むしろタブーとされている被差別部落への言及も、橋下氏がうまくあしらえば好意的な感情を抱く人さえいたはずだ。同情票も集められたはずだ。公人でありながら、徹底的に「週刊朝日」に対して「差別」と「公人だけでなく家族にも影響を与える」という論旨で謝罪を迫り、それに対して「週刊朝日」は後手後手の対応を繰り返した。

さらにキレた演技(?)をする橋下氏。総動員されたメディアの前でネタを投入した結果、最終的には出版元である朝日新聞出版社社長の辞任にまで及んだ。公人として振る舞うことよりも、公人としてはありえない人物を自己演出したように思えて仕方がない。

■そして、2012年12月16日、衆議院選挙で自民党は圧勝する

自民圧勝の最大の功労者は、日本維新の会の橋下氏であったと感じている。

もしも、あの時に、政策の遠い「旧・太陽の党(旧・たちあがれ日本)」と組まずに、政策の近い「みんなの党」と組んでいたら、野党の勢力は大きく変わっていただろう。もしかすると、自民党を覆すほどの、反民主票を獲得していたのかも知れない。見事に民主と変わる第三、いや第二勢力になれた可能性があった。

人気絶頂の橋下徹氏は、どの党のカードを選ぶこともできた。石原慎太郎氏と、渡辺喜美氏双方からのラブコールであった。

橋下徹氏はどの党と合流するのかの判断している時間でさえ、その姿をメディアでちらつかせた。

結局、石原の「旧・太陽の党」を選び、渡辺の「みんなの党」の顔を潰した。そして、もちろん、旧・太陽の党には古狸たちがもれなくオマケでついてきた

■自民圧勝で終わった選挙後に、早々に火蓋を切る舌戦

問題はすぐに発生した。

橋下氏が首相使命選挙で「日本維新として安倍晋三自民党総裁に投票する」と発言したからだ(2012年12月16日)。石原氏は、平沼赳夫氏を押し、結局、石原氏に投票することとなったが、石原氏は、「政党の体をなさない。党首を出すことが政党の沽券(こけん)だ」と叱咤した。

政権与党でない限り、首相使命は何の意味もない、党内の勝手な親分選びでしかない。そこの意見が分離することを、メディアを交えて議論するほど意味のないことはない。しかも、石原氏もメディアに積極的に答えてしまう暴走老人である。同じ党内でモメるほどメディアにとって美味しい取材はない。

ただ、橋下氏の狙いは、まったくブレていなかった。それは今までの政治家の価値観を壊すという意味においてはブレていない行動であった。そのスタイルだからこそ、メディアがさらに注目をする。

橋下氏は、今までの政治家ではありえないことをやらかしていくというミッションを着々と遂行しはじめただけだ。

そして、そのためには石原氏という古くからの政治家体質を引き合いに出し、同党内での対立構造でコントラストを描いているようだ。

メディア側にはそれが異様にしか映らない。弁の立つ異端児にしか見えない。そして、弁論で負かされるから、発行部数によるパワーでペンのチカラを借りた記事を書く。それに対抗するために、橋下氏はみずからのメディアであるtwitterに思いのままぶちまける。しかし、朝日新聞の読者とtwitterはそれほど重なりを持っていないので、twitterの反論がメディアで話題になることは多くなかった。しかし、負けない橋下氏に対して、記者の執着心はますます過激になっていく。

■発言にこだわり続けた従軍慰安婦問題

そこで第三戦目が勃発した

あの従軍慰安婦発言だ(2013年5月13日)

「従軍慰安婦制度がなかったとは言いませんし、軍が管理していたことも間違いないです。ただそれは、当時の世界の状況としては、軍はそういう制度を持っていたのも、厳然たる事実です。(橋下氏)」

http://www.asahi.com/politics/update/0514/TKY201305140366.html

何の問題もない意見だったと思う。今思えば、橋下氏の発言はきわめて論理的であり、正当な意見だった。問題は「週刊朝日」で積年の怨みを抱える朝日新聞の対応だった。

むしろ、この発言に拍車をかけたのが、沖縄での「風俗業の活用」発言だ。沖縄の米軍司令官に提案したことだ。

風俗利用で米軍によるレイプ犯罪を減らすという抜群で秀逸なアイデアだと思う。これは、大阪の飛田新地という料亭という名目の「ちょんの間」で組合顧問弁護士もしていた橋下氏ならではの奇策だ。

しかし、この伝聞が海外に出まわってしまうことによって批判が一気に激しくなってしまった。

http://blogos.com/article/62387/?axis&p=1

朝日新聞のワシントン支局が、米国防総省の意見を発信し、それを受けて、ニューヨーク・タイムズで日本人女性記者が言及し、各国の新聞メディアが、ニューヨーク・タイムズによると…として記事を取り上げた。世界を一回りしてきてこの問題はさらに日本で問題が大きくなる。どのように、収拾をつけるのか、どううまく謝罪するのかと固唾を飲んでいた。しかし…なんとも意外な方法を取る。

謝罪をしないという戦略だ。

「従軍慰安婦が必要だった」に「当時は」とつけて訂正し、外国人との性奴隷に関する表現の違いのみを謝罪した。しかし、あくまでも自らの発言には自信を持った態度で連日メディアに登場する。それは、まさに都議会選挙を控えている時期にもまで及んでしまった。

ついに石原氏が、キレて、「大迷惑だ!」と批判されるが、「発言は間違っていない」とまるで、親子喧嘩を見させられてしまった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130619/stt13061912560002-n1.htm

さらに、「みんなに迷惑かけた申し訳ない」の一言が欲しいことに対しても、「選挙で有利になるか不利になるかを考えた途端、大仕事はできなくなる」とコントラストをますます明確にする。

また、1日に30回もツイートして持論を展開している橋下氏には、ネットから「職場へ行け」との発言や、石原氏からも「ツイッターをやめるべきだ。言いたいことがあれば、きちんと論文にまとめればどうか」との声が上がった。

そして、都議会選挙は投票日(2013年6月23日)を迎え、34人を公認するも2議席しか確保できなかった。反・民主の流れは共産党へ流れ17議席となった。みんなの党も7議席を確保。橋下氏の責任は色濃くなったのは当然だった。

■2013年、参議院選挙、ネット選挙解禁

都議選の惨敗を議論する余裕もなく、参議院選挙へ突入することとなった。それでもまだ、従軍慰安婦問題はついて回る。

石原氏が擁立した比例区のアントニオ猪木は、維新の会でトップ当選した。この擁立については、橋本氏は、あえて目立った発言がなかった。本来であれば、かつての自民党のように、比例区にタレント議員を持ってくることを良しと思わなかったはずだ。しかし、今回は自分の意見よりも党の利益を優先したようだ。

橋下氏と石原氏の政見放送も、異例の横を向いて向き合いながら、話をするというもので、視聴者の方向には何もメッセージを送らないという奇策にでた。話はおだやかだが、そのまま対立構造に見えてしまった。

http://gendai.net/news/view/108728

参議院選挙の結果も、維新には当然逆風だった。

「辞めろと言われれば、いつでも辞める(橋下氏)」「そういう居直り方はしない方がいい(石原氏)」とたしなめられる。

気になるのが、橋下氏がことある度に、自分の行動が通らない時には、いつでも辞める辞めるの戦術を取るところだ。まるで子供だ。

しかし、問題児ではあるけれども、今の維新に橋下氏なき、維新は考えられない。父親としての、石原氏は確実に、放蕩息子の橋下氏のおかげで寿命が縮まる思いのことだろう。

むしろ、橋下氏には、政治家としての欲がないからかもしれない。

何がなんでも選挙に勝つ!。そのためにはどんな手段をも選ばないというモチベーションは、大幅に欠如している。

理想の政治をおこなう正しい政治家が、正しい確かな目を持つ有権者から、正しいプロセスで選ばれるべきという理想をかかげているようにしか見えない。だから、政局で身動きすることを一番嫌って、天邪鬼な態度をとりがちである。

また非常に、プライドも高いので、「いつ辞めてもいい」といいつつも、「代表と認めていない」と維新の会の中山成彬衆院議員に言われたとして、記者団に「仲間とは思っていない。維新の会から出て行ってほしい」とあっさり、本人に意図も確認もしないまま記者団に話してしまう。大事な国会の議席のある議員をそれだけで切り離すのはどう考えても異常だ。

まるで自分の前にたてつくものは、顔も見ないで切り捨てている感さえある。

普通、同じ意思を持った政党の仲間が、そんな簡単に切り捨てられる間柄なのか?とはいっても、中山氏は旧・太陽の出身である。…であればなおさら石原氏に配慮も必要だが、全く遠慮もない。自分の代表者の権限を強く顕示したかったとしか思えない。辞める辞めるもある意味、自己顕示欲のあらわれなのかも知れない。

そして、参議院選挙の結果を受けて、いいよいよ、橋下劇場のクライマックスがやってきた。

■野党再編、維・み・民の看板なくせ

政治家という職業がややこしいのは、選挙が3年もないと、無理やりにでも選挙を起こしたがるところだ。少数野党として細々やることよりも、影響力のある野党となり、衆議院の解散を迫り、総選挙を1日も早く実現したいと思っているのだろう。

早速、勉強会なる抜け駆けの談合が開始された。民主党の細野豪志幹事長、みんなの党の江田憲司幹事長、維新の会松野頼久幹事長だ。

元首相の2人の謀反をさばけない海江田代表の民主党、ことごとく、橋下氏に顔をつぶされてきた渡辺喜美代表と江田憲司とも話が噛み合わないみんなの党。維新は、諸刃の刃の橋下代表がすべての問題を起こす。

自分の党でさえ、まとまらない三党が、一緒になってまとまるのは、選挙の時の一瞬だけであるのは明白だ。

維・み・民の看板なくせ…橋下氏

http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130726-OYT1T00254.htm

「新しい政党を作ることになれば、国会議員が中心になる」と述べ、大阪市長である自らが主導することはないとの考えを示す一方、「早く新しい野党ができることを期待する」とも語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130724-00000028-dal-ent

ここにきて、橋下氏は、弱気な発言をしはじめている。モチベーションが無くなったのか?

いや、それは違うだろう。

きっと、天邪鬼でプライドが高くて自己顕示欲が強いので、おいそれとその野党再編の輪には入りたくないに違いない。最終的に、みんなに懇願されて、新党に参加した方が、橋下氏のリスクは最小限だ。自分からはいったのではない、どうしてもと頼まれたのだから仕方がない。

そして、あと出しジャンケンで、最後に一番美味しいポジションを取り、文句が出ようものなら、辞める辞めるで脅すと予測する。

「維新八策」の政策についても、最近聞くことが全くない。有権者に支持されなかったのだから仕方がないという。

橋下氏、維新代表の辞意表明へ 幹部らは慰留の構え

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130727-00000010-asahi-pol

いよいよ、最終決戦だ。 

考え方を変えて見るならば、橋下氏は子供のように純粋で無邪気で、ピュアで純粋な政治家なのかもしれない。それを、政局争いと政治家という延命措置のためだけに集う烏合の衆の構図で疲れてしまったのかもしれない。「橋下徹」という名の子供は、2015年末まで「大阪市役所」という学校に通わなければならない。そこでしっかりと勉強してからでも、何も遅くない。彼は、まだまだ若い。

他の比例区で蘇ってきたようなゾンビ議員とちがって、新たな日本の為に働いてくれると信じたい。

政治の世界で野党再編を支えることができても、できなくても、一度、離れたポジションで動向を見てもいいだろう。

橋下氏には、一度、メディア側に回ってもらいたいと個人的に思う。本当は彼の発信力と追求力と自己顕示力は、メディア側で、もっと活かせるはずだと思う。「政治の室はメディアの質に比例する」と橋下氏は語る。メディアが変われば政治も変わるには全く同意見だ。

むしろ、それを実践してもらったほうが、政局だけで動いている政治家とつるんでいるよりも早く、有権者の意識を向上させ、投票率を改善し、まっとうな政治家を生みだすことができると思う。

政治は、入り口が変わらない限り、カーボンコピーのような選挙対策議員ばかりで政治に集中できない組織体である。

メディアに「政治で議席を取ってみてくださいよ」の言葉とは反対に、橋下氏には、一度メディア側から政治を変えてみるのもひとつの政治手法ではないだろうか? 

http://youtu.be/JZwgJz6NQrI

1961年神戸市生まれ。ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を兼任後、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリーム、活動などをおこなう。メディア出演、コンサル、取材、執筆依頼 などは 070 5589 3604 まで

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