選択的夫婦別氏制度  今こそ導入を

Eli Shany/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0

法務省の法制審議会が選択的夫婦別氏制度の導入を法務大臣に答申したのは平成8年(1996年)。私は当時大学生で、結婚するときには夫婦別姓が認められているのだろう、と楽観的に考えていた。まさかそれから20年以上後の2020年になってもまだ制度が変わらないなどと、思いもしなかった。

その後大学を卒業した私は、結婚式もあげたが、婚姻届けは出さなかった。夫婦ともすでに自分の姓で仕事をしていて、双方にとって氏が変わることは不都合だった。法的な結婚は選択的夫婦別姓制度の導入を待とう、と話した。しかしそれから長い年月が経ってしまった。そして最高裁判所は2015年、夫婦に同一氏を義務づける民法第750条は合憲との判断を示した。

結婚に伴って氏を変更しているのは、今も96%が女性だ。私のまわりには、結婚したために法律上は夫の姓になったものの、仕事や私生活では旧姓を通称として使い続けている女性がたくさんいる。氏の変更だけでも多くの手間がかかるが、さらには旧姓も使い続けるため、ペーパーワークや説明に多くの時間を使い、何重もの不都合をあじわっている。時間の無駄だという嘆きの声、女性だからこのような目にあっていて、屈辱だ、理不尽だという怒りの声もきく。別姓が認められていれば不必要な時間を使わされているのは彼女たちだけではない。彼女たちがペーパーワークを提出している先の会社や役所でも、夫婦別姓が認められていれば不必要な業務が発生しているのだろう。

こうした実態を踏まえて国連の女性差別撤廃委員会は、2003年以降三度行われた日本政府審査で毎回、民法750条を「差別的規定」と批判してきた。日本国内だけではなく、国際的にも、女性に差別的と批判されてきたのだ。

最新の2016年3月の見解で国連の上記委員会は、「既存の差別的規定に関する従前の勧告が対応されていないことを残念に思う」としたうえで、「2015年12月16日に、最高裁判所が、婚姻した夫婦が同一の氏を使用することを義務付ける民法750条の合憲性を支持したこと、これによって、 しばしば女性が夫の姓を名のるよう事実上強いられること」に特に懸念を表明した。

夫婦別姓が可能になるだろうと楽観していた大学生の私も、40代となり、今は子どももいる。私のように、夫婦双方の氏を継続するために、法的結婚をあきらめる事実婚夫婦も、少しずつ増えているように思う。内閣府が2018年に公表した世論調査では「夫婦の名字(姓)が違うと子供にとって好ましくない影響があると思う」とする回答した人が62.6%となっている。自分の経験から言えば、夫婦の名字が違うことによる子どもへの悪い影響はないと思う。むしろ、結婚していると思っていた自分の父母が、実は法律上は結婚していなかったと知るときは多少なりともショックを受けるのかもしれない。

自民党で今月、政府の第5次男女共同参画基本計画案をめぐって、選択的夫婦別姓制度が久しぶりに本格的に議論されたものの、残念ながら紛糾した。結局、政府が当初盛り込んだ制度導入に前向きな記述は大幅に削除されて、今日(2020年12月25日)閣議決定された。

法務省の法制審議会答申から20年以上、そして国連から批判されて15年以上経過している。遅すぎるとはいえ、今こそ、制度を改正するときなのに、とても残念だ。

今回のチャンスを逃した結果、現在の制度を再び、5年、10年、20年漫然と残してしまう、という事態はなんとしても避けるべきだ。娘の世代にまで、私の世代が味わっている困難な選択を迫るべきではない。――自分の氏を選ぶか、法的な結婚を選ぶか、という。

2015年の最高裁判決には、3名の女性裁判官からの意見として、「夫の氏を称することは夫婦となろうとする者双方の協議によるものであるが、96%もの多数が夫の氏を称することは、女性の社会的経済的な立場の弱さ、家庭生活における立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって、夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである」とされている。

おりしも最高裁は今月9日、最高裁は夫婦別姓を求める家事審判事件3件について、大法廷での審理を決めた。2015年以降再び、夫婦同一氏を義務付ける民法750条について憲法判断を示すとみられる。

2018年公表の上記内閣府世論調査では、選択的夫婦別姓を「導入してよい」と考える人は過去最高の42.5%で、「導入する必要はない」とした29.3%を上回った。1996年の法制審の答申からちょうど25年、つまり四半世紀となる2021年を、立法の場で、そして司法の場で、長年「差別的規定」と国際的にも批判されてきた民法750条を改正する年とすべきだ。