新学期が始まりました。子どもたちがうららかな春の日差しの下、胸膨らませて学校の門をくぐっていきます。でも世界では、校舎の一部が軍事基地となっている学校に通う子ども達がたくさんいます。「兵器を持つ軍人が出入りしている学校に通わせるなんて怖い」という保護者の声が聞こえてきそうです。子どもを育てる母親として、私も同感です。

アフガニスタンのバグラーン州にある中学校は、生徒が学校に通っているにも関わらず、学校が政府軍や反政府勢力によって利用され続けました。8年前、アフガニスタン警察が学校敷地内に軍事基地を設けたことにより、学校はタリバン軍の攻撃にあいました。激しい銃撃戦により、学校の壁には血痕が飛び散りました。タリバンが学校周辺地域を制圧した後は、校舎が宿舎として使われ始めました。学校には屋根がついており雨風をしのぐことができるため、宿舎としては最適の場所だったのでしょう。その後、政府軍が学校周辺地域を奪還した後も、学校は軍事拠点として利用され続け、生徒達の授業は1階でのみ行われ、2階部分は政府軍が基地として使い続けるという状況が続きました。

この様な事態が世界中で起きています。ヒューマン・ライツ・ウォッチや国連機関などで作る「教育を攻撃から守る世界連合(GCPEA)」は直近の5年間だけで29か国で学校の軍事利用が報告されており、生徒や教師が攻撃にあって死傷したり、攻撃を恐れて登校できず中退してしまったりするケースが相次いでいることを明らかにしました。

学校の軍事利用の背景の一つには、現代の紛争が、一つの国の中でいくつもの勢力が争っており、市街地戦が常態化していることがあげられます。その結果、本来は子ども達のために使われるべき学校が、軍事基地として、射撃の練習場として、宿舎として使われているのです。

この問題を解決するために2015年に策定されたのが「学校保護宣言」です。「学校保護宣言」では、開講中の学校の軍事利用を禁止しており、本宣言を採択した各国政府は、学校の軍事利用に関するデータ収集を行い、被害者に対して支援を提供することを約束する内容になっています。

2015年にノルウェー政府とアルゼンチン政府の主導のもと、37カ国が支持し、アフガニスタン政府も「学校保護宣言」への支持表明を行いました。その後、アフガニスタン教育省の熱心な働きかけにより治安部隊が学校から撤退を始めました。まだ完全に学校の軍事利用が無くなった訳ではありませんが、国連はこの数年で確実にアフガニスタン国内での軍事利用数は減っていると報告しています。

アフガニスタンだけではなく、イエメン、南スーダンなどの学校の軍事利用が報告されている国も「学校保護宣言」を支持しており、G7の中からもイタリアに続き、2017年にフランスとカナダが支持を表明し、2018年4月にイギリスも支持表明をしました。国連事務総長であるアントニオ・グテーレス氏は、2017年5月に国連加盟国に対して学校保護宣言を支持するよう要請しており、現在74カ国が支持を表明しています。

しかし、日本政府は未だにこの宣言への支持を表明していません。日本政府は、有事などの際に、自衛隊が学校を使用することを考えているとのこと。日本の子どもたちが通う学校が、先のアフガニスタンの事例の様に軍事利用され攻撃対象となることはあってはならないないことで、自衛隊の展開場所としては、開校中の学校を除いて考えるべきです。

学校は子ども達の教育のための場所です。世界の子どもにとっても、日本の子どもにとっても。日本政府には、一刻も早く「学校保護宣言」の表明を支持して頂きたいと思います。その実現のために、ヒューマン・ライツ・ウォッチでは「学校保護宣言キャンペーン」を開始しました。日本人には余り知られていない学校の軍事利用問題についてFacebookTwitterで現状を発信しています。

また、日本の高校生たちも「学校の軍事利用問題を解決したい!」とオンライン署名

を集めており、1万人以上の賛同の声が集まっています。

日本でも、この問題への関心が高まり、日本政府の「学校保護宣言」への支持表明に繋がることを切に願っています。