南スーダンの民間人保護のため、日本の果たすべき重要な役割

国連安全保障理事会では、南スーダンに対する武器禁輸と個人制裁の決議が検討されています。国連安保理のこの新決議を日本政府が支持すべき理由はあまりにたくさんあります。

どういうことか?国連機関では、南スーダンでの紛争によって、少なくとも275万人の人びとが家を追われ、国内のさまざまな地域、あるいは国境を越えて近隣の国々に避難し、難民となっていると算定しています。2015年、「アンジェリーナ」という若い女性は、悲惨な環境の難民キャンプの中で、ヒューマン・ライツ・ウォッチによるインタビューに答えて、次のように語りました。「その時、私は近所の人たちと一緒にいました。彼らは、私の赤ちゃんが男の子か女の子かと尋ねました。私が男の子だと答えると、彼らはその子を殺すと言ったんです。男の子ならば大人になったとき、自分たちに敵対して戦うからそれを防ぐためだ、と…」「アンジェリーナ」の目の前で赤ちゃんは撃たれ死亡しました。

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「アンジェリーナ」に起きたことは、南スーダンの民間人が受けている、無数の同じような被害の一例にすぎません。子どもが誘拐され兵士にさせられた、家や畑を焼き討ちされた、家畜を略奪されたといった被害が繰り返されています。夫や父、兄や弟は殺されました。姉妹や娘、母親たちは、レイプされ暴行の被害にあっています。複数回レイプの被害にあった女性もいます。食べるものが睡蓮しかない沼地に避難を余儀なくされることも。マラリアの感染にさらされる湿地で、全く覆いもないところで野宿することを余儀なくされているのです。その湿地ですら、いまや安全な場所ではなくなっています。南スーダン政府が新しい水陸両用車や武装ヘリで、逃れる人びとを探し回っているからです。

南スーダンでは紛争が続いているのです。武器・軍隊装備が自由に流通する現状によって、政府軍あるいは反政府軍が、罪のない民間人への攻撃を続けることが可能になっているのです。

南スーダンの内戦が始まったのは、2013年12月15日でした。ヒューマン・ライツ・ウォッチを含め多くのグループが、無数に行われている深刻な国際人道法(戦争法)違反の実態を調査し明らかにしてきています。過去3年以上のあいだに、民間人は内戦に関わるあらゆる勢力から、継続的かつ組織的に攻撃を受け続けており、サルバ・キール大統領と、かつては共に統一政府をつくっていたリエック・マシャール元副大統領との間の、残忍な勢力争いの矛先が、女性や子ども達に向けられているのです。

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2015年8月の和平協定により、民間人への攻撃という違法行為に終止符が打たれるのではないかと、多くの人びとが期待しました。しかしながら、今年7月に首都のジュバで政府軍と反政府軍との間で戦闘が起こりました。国連基地のすぐ近くでの戦闘の際、何十人もの南スーダンの難民女性たちが、兵士たちによってレイプされました。国連平和維持軍(PKO)の目の前でもレイプは起きました。

2013年以来、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS) が民間人保護に失敗したことは多々ありました。これに対する最近の調査は、失敗を繰り返さない方策について明らかにしています。南スーダンへのPKO追加派遣によって日本政府は、増大する民間人への暴力に終止符を打つ努力に対する支持を示したといえるでしょう。しかし日本はもっとしなければならないことがあります。

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武器禁輸および民間人暴力の責任者に対する追加的個人制裁が、南スーダンにおける暴力の拡大を食い止める力になります。国連専門家パネル、潘基文・国連事務総長、そして他の多くの専門家が、武器禁輸等の措置が、戦闘諸勢力の行動に対して効果的なインパクトを与えることができるとしています。しかしながら、米国が主導するこの安保理制裁決議が、頓挫しようとしています。日本などのいくつかの安保理メンバー国が、この決議を支持しないからです。

武器禁輸等制裁決議案を支持しないことは、道義的に弁解の余地がなく、また戦略的にも問題です。私たちはこれまでに何度も、南スーダン政府や反政府軍指揮者の約束違反を経験してきており、民間人への暴力の責任もまったく問われていません。日本政府が南スーダンPKOへの自衛隊の派遣を決定したのは、南スーダンの人びとのためのはずです。であればこそ、政治レベルでの決断が必要です。問題解決に向けて更にステップを進めようとしている、米国、フランス、英国等の国々と足並みをそろえて、安保理での武器禁輸等制裁決議案に賛成票を投ずるべきなのです。

何十万人という民間人が、いまだに沼地に隠れて暮らしたり、あるいは国連の難民保護キャンプに避難しています。この間に、何十万人という人びとが自国を離れました。すべての関係国、特に安保理メンバー国が、南スーダンの民間人の命のために立ち上がるのに、あまりに時間がかかりすぎています。今こそ行動が必要です。

本記事の共著者:土井香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表)& ジョナサン・ペドノ(ヒューマン・ライツ・ウォッチ 南スーダン担当調査員)