日本は不参加!?―― 来週開催予定「紛争下の子どもの教育を守る」オスロ会議

★本原稿掲載後のアップデート

大変残念なことに、ヒューマン・ライツ・ウォッチを含む各所からの呼びかけにもかかわらず、日本政府は「学校保護宣言」を支持できないとしてオスロ会合には正式参加はせず、オブザーバー参加にとどまりました。

しかし、オスロ会合は5月29日に閉幕し、37カ国が「学校保護宣言」に参加し、紛争下でも子どもたちが教育を継続し、そして攻撃対象とされないように守るための重要なプロセスを開始しました。このプロセスをここまで導いたノルウェー政府とアルゼンチン政府、そして宣言に支持を表明し、子どもの教育を守るプロセスを開始した37カ国に賞賛を送りたいと思います。

オスロ会合の結果の詳細についてはこちらをご覧ください:http://www.hrw.org/node/135385

ひとたび紛争が起これば多くの場合で学校が軍により使用されてしまうという世界の現状を変えるべく、引き続きヒューマン・ライツ・ウォッチとして努力を重ねて参ります。日本政府に対しては引き続き、自衛隊が学校を軍事使用することがないよう「学校保護宣言」の支持国となることを求め続けていくとともに、学校の軍事利用や学校攻撃を世界中でなくしていくためのリーダー国として、世界を牽引していく役割を果たす国になるよう求め続けて参ります。

末筆ながら、今回のオスロ会合で日本政府が「学校保護宣言」を支持するようにご尽力くださったすべての皆様に御礼を申し上げます。

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ノルウェーの首都オスロで来週、紛争下の子どもの教育を守るための国際会議が開催され、「学校保護宣言」(Safe Schools Declaration)が採択される予定です。学校保護宣言の目的は、紛争下、教育施設を特に保護すること。

●世界各地で攻撃の対象になる子どもたち

悲しいことに世界各地で、子どもたちや、学校、大学が攻撃の対象となっています。ケニアで先月、イスラム過激派のアルシャバーブが大学を襲撃して、150名近くを殺害した事件は記憶に新しいところですし、ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララさんをはじめとする女生徒たちは特に、暴力にさらされています。

子どもたちは、紛争下であっても安全な環境の中で教育を受けられるべき。教育を奪うことは、その子どもたちの未来も奪うことです。来週オスロで採択予定の「学校保護宣言」は、生徒や学校を攻撃の標的とさせないため、そして、学校を軍事利用させないため、各国政府がその誓いを新たにする内容となっています。

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●でも日本は不参加!?

とすればもちろん、日本政府はオスロ会議に参加して宣言に賛成するはずだ、と皆さんはお思いになるでしょう。驚いたことに、そうではないのです。日本政府はこれまで、「学校保護宣言」起草過程には参加してきました。しかし5月28-29日に予定されるオスロ会議には、不参加の意向なのです。プロセスの最終盤になってのこの事態、極めて遺憾です。

「積極的平和主義」をかかげる安倍政権がどうして、紛争下の子どもの教育を支援する宣言を支持できないのでしょう。「女性が輝く社会」を国際的にも打ち出す政権が、女生徒たちが暴力を受けている現状を変えるための宣言になぜ賛成できないのでしょうか。

日本政府は「目的は支持する」としながらも、議長国ノルウェー政府の議事「プロセス」に不満があるとし、かつ、法的拘束力があるかの「イメージ」や既存の国際法との「混乱を招く可能性」が問題だとしています。

法的拘束力はないと宣言に明記されているなど、日本政府があげる懸念点は十分に払拭可能なはず。そしてなにより日本政府には、「プロセス」ではなく、子どもたちを守るという問題自体に注目してもらいたいのです。子どもたちはこの瞬間にも、通うべき学校を失い、死傷しているのですから…

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この「学校保護宣言」の採択を目指し、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチセーブ・ザ・チルドレン、国連のユニセフなどからなる「教育を攻撃から守る世界連合」が中心となって、世界各国に対し、この宣言及びガイドラインを支持するように働きかけてきました。 来週の宣言採択会議に先立ち、世界でおきている紛争の大半(少なくとも26カ国)で、学校が軍事目的で利用・接収されている現状を明らかにする報告書(92頁)を発表。軍が学校を基地、兵舎、捕虜施設、武器庫などに軍事利用している実態を明らかにしました。学校の軍事利用は、生徒や教師の命を危険にさらし、学校に行けない子どもたちを増やしてしまいます。

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●子どもたちを守るため、日本政府はいますぐ方針転換を

アジアからは、まさに紛争に苦しんできたアフガニスタン、パキスタン、フィリピン、スリランカなどの国々がオスロ会議に出席予定です。こうした武力紛争のある国で学校がしばしば標的にされてきたことを考えれば、まさにその紛争に苦しんできたこれらの国々が参加を表明したのは賞賛に値します。インドネシアも参加を示唆、ブータンも前向きな態度をみせています。ネパールはすべての学校が「平和ゾーン」であると宣言したアジアの先駆者で、やはり参加を期待されています。が、近ごろ起きた大地震への対応という急務から、今回の参加を見合わせることになっても十分に理解できます。

そんな中で、日本の不参加はあまりに不名誉です。日本政府には、200人以上の日本の学生たちが、「学校に軍隊はいらない」とフェイスブック上で声をあげていることにも注目してもらいたいと思います。

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日本政府は今こそ、紛争下でも教育を受け続けたいと願う世界中の子どもたちを支援すべく、そして、将来万が一にも日本国内で学校が軍に接収されて子どもたちが戦闘に巻き込まれるようなことがないように、今すぐ方針を改めて来週のオスロ会議に参加し、「学校保護宣言」への支持を表明すべきではないでしょうか。

●紛争下の子どもに対する攻撃についての詳細はこちら:http://www.hrw.org/ja/topic/childrens-rights/education-and-conflict

●「教育を攻撃から守る世界連合」の詳細はこちら:http://protectingeducation.org