ゆるキャラは死なず 似顔絵の妖精「しきっしー」 生配信で頂点目指す コロナ禍だからこそ癒やしを

似顔絵色紙の妖精「しきっしー」(筆者撮影)

 コロナ禍で続くイベント自粛。ひところ日本を席巻したゆるキャラたちも出番がなくなり、すっかり目にしなくなった。王者くまモンも「出動中止」が続く。しかし今、ライブ配信でひときわ存在感を放っているゆるキャラが、福岡にいる。

 その名は「しきっしー」。2016年3月16日生まれ、5歳になったばかりの似顔絵色紙の妖精だ。ある似顔絵師が遊びでFacebookに投稿した絵を見たご当地ヒーロー制作会社の社長が気に入って造形。妖精となって似顔絵スタジオ「フェイスロック」(福岡市)に“入社”した。

 その使命は「似顔絵の可能性を世の中に知らせる」こと。2017年に初挑戦した米国の似顔絵世界大会では、作品力とパフォーマンス力を競う「アートファイト部門」での優勝という快挙を成し遂げた。

願いを無残に打ち砕く似顔絵

 性格は激しい。ノリのいいロックを流し、踊りながら似顔絵を描き、出来上がったら地面に「ビターン」と投げつける。絵は白目をむいていたり、妖怪のように描かれていたり。より美しく格好よく、という依頼者の願いは無残に打ち砕かれる。

しきっしーが描いた筆者の似顔絵(筆者撮影)。目は柔和だが、口から血を流しているみたいだ
しきっしーが描いた筆者の似顔絵(筆者撮影)。目は柔和だが、口から血を流しているみたいだ

 しかし、この仕打ちがツボにはまってファンになる人も多く、イベント会場では長蛇の列ができる。コロナの第3波が去って落ち着いていた4月初めにゲスト出演した福岡アジア美術館(福岡市)での展覧会では、見るも無残な似顔絵を投げつけられ、「きゃぁ~」と歓喜する女性たちが続出。案外、顔をいじられて喜ぶ人が多いのだ。

 しきっしーは子どもだから「遠慮しないし、我慢ができない」。忖度などあり得ない。ある意味、そんなピュアさが受けているのかもしれない。

 19年には、ご当地キャラが集まる「世界キャラクターさみっとin羽生」(埼玉県)にも参加。イベントに呼ばれたりテレビ出演したりして、知名度も上昇した。

しきっしーが描いたゾンビたち(しきっしー提供)
しきっしーが描いたゾンビたち(しきっしー提供)

このままでは使命が果たせない

 ところが昨春からのコロナ禍で、出演依頼はほぼゼロになってしまった。しきっしーは、自分のようなゆるキャラに会いに来てくれるファンたちが「癒やし」を求めていることも肌身で感じていた。

 「このままでは使命が果たせない」

 コロナ禍だからこそ、何とかして接点を持ち続けたいと考えた末、新たな戦略を練った。それが、インターネット空間への進出。しかも、ライブ配信だった。

 「17(イチナナ)LIVE」というライブ配信アプリがある。登録すればスマホで生中継できて、視聴するファンから報酬を受け取ることも可能だ。

 配信するのは、月曜から金曜の夜中。午前0時すぎからひたすら絵を描く。有名人、アニメの主人公からゾンビまで。普段は2時間程度だが、リクエストに応えて9時間描き続けることも。ゆるキャラ1体を1日10分で描き、5カ月かけて百数十体を1枚の絵にしたこともある。

しきっしーが描いたキャラたち(しきっしー提供)
しきっしーが描いたキャラたち(しきっしー提供)

 そうした活動が実り、SNSのフォロワーは5千人を超えた。思わぬ副産物として、イチナナでの収入が本業の減収を賄えるほどになり、医療従事者のために寄付することもできた。

 近年、似顔絵師は過当競争もあって生活は楽ではないという。コロナ禍も追い打ちをかけるが、色紙の妖精はしぶとくサバイバルしている。

 次の目標は「作品力だけで世界一になること」だというしきっしー。ゆるキャラの仲間たちが自由に活動できる日が来ることを願って、今日も絵を描いている。

※しきっしーのTwitterはこちら