自殺率減少するも予断を許さない夜の世界

(写真:アフロ)

■コロナ禍だが自殺件数は改善に

令和2年4月の自殺者数は前年同月比の19.8%減

出典:厚生労働省自殺対策推進室(令和2年5月12日)
厚生労働省自殺対策推進室レポート(令和2年5月12)より
厚生労働省自殺対策推進室レポート(令和2年5月12)より

コロナ禍で追い込まれた中小企業経営者の自殺などが懸念されていた中、この結果に安堵とともに、正直驚きを隠せません。自粛期間中の数字なので5月以降の傾向には予断を許しませんが、明らかに自粛による影響で短期的とは言え自殺者数を少なくすることができた実績は、今後の自殺対策を考えていく上で貴重なデータとなります。

■『心の強さ』を勘違いした誹謗中傷

一方、人気番組の出演者の方が亡くなられたことに端を発しメディアやSNS上では『中傷』に対する問題意識が高まりを見せています。

「あの人はメンタルが強いから大丈夫だが、弱い人もいるので過度な批判は控えよう!」

このような趣旨の発言も散見されますが、強そうな人には誹謗中傷をしても構わないと言っているのと同様であり、こうした傾向から社会のイメージによる排除は相変わらずだなと感じています。社会は下記のような属性の方に(メンタルが)強そうと一方的なイメージを抱く傾向があります。

・有名人で社会的立場がある

・身体が大きい

・いつもニコニコしてる

・お金持ち(そう)

・男性

しかし、これらの状態にある方々がメンタル含め強いと一方的に思い込むのは勝手な思い込みに過ぎません。

身体的な強さは心の強さとは一致しませんし、表面上は笑顔でも心の奥底ではしんどさを抱えている場合も有ります。どんなに売上が多くても経費や借入が多ければ経営は大変かもしれません。一面だけで知りもしない相手の強さなど誰も計ることなどできないのです。ましてや心の強さなど自分でも計れないものです。我々はイメージで誰かの心の強さを一方的に決めつけることは避けなければいけません。

■『夜の世界』だから強いわけではない

翻って、この記事のテーマである夜の世界(水商売、性風俗産業)についての話です。他の記事で繰り返し伝えてきましたが、先入観からあらゆることに偏見を持たれることが多い世界です。特に「(ズルして)稼いでいそう」こう捉えられることが多い傾向があります。

しかしながら、夜の世界の方々を関わりを持っていると、不眠症やうつ病をお持ちの方が一定数存在しているという印象を抱くことは少なく有りません。これ、所謂キャストさんではなく、店長や黒服などと言われる担い手側(主に男性)の話です。

夜の世界にいるから鬱になったのではなく、元々鬱だったが仕事が見つかりにくく、そんな自分でも働くことができるかもしれないと、夜の世界で働くことを選択されたと口にされる方は少なく有りません。

また、彼らは夜の世界にいることに対して自覚を持っているため偏見を受けることには慣れていると口にします。しかし立場だけでいうと、いくら偏見を受けることに慣れているとはいえ決して社会的に強い存在ではありません。地域の中小企業及びその従業員と変わりないのです。

そんな夜の世界に生きる方々ですが、いまだにコロナ関連の一連の社会保障からは現状名指しで除外されたままです。現在取材を通して強く感じことは、データ上は改善を見せている自殺者数だが5月以降に悪影響が出る可能性が否定できない状況にあるなと強く感じています。

コロナ禍での取材記事を紹介させていただきますが、他の業界に比べ孤立しやすい状況にあると感じています。

デリヘル 融資も補助金も無く四面楚歌【特集】コロナで変わる夜の世界#3-1

水商売の障害は『家賃』『人件費』『融資』 【特集】コロナで変わる夜の世界#2

■『孤立』させないこと

社会を裏側から見ているとこの社会で強い立場というのは『誰かの支えを受けられる立場』であると確信します。自殺予防に取り組む『特定非営利法人自殺対策支援センターライフリンク』自殺対策ポスターに印象的なキャッチコピーが書かれています。

弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした

出典:生きる支援(自殺対策)ポスター
生きる支援(自殺対策)ポスター NPO法人ライフリンクDLページより
生きる支援(自殺対策)ポスター NPO法人ライフリンクDLページより

未だ余談を許さぬ社会情勢です。ネットでは強者というイメージを持っている方への誹謗中傷が問題視されていますが、社会補償の現場でもイメージによる偏見が未だ解消されていない状況です。

どんなに強そうなイメージを持たれていても支えを受けられず、孤立してしまうと死という最悪の結果につながる可能性があります。大変な時期が続いていきますが、コロナ禍を超えていく過程で、ひとりひとりが他人への想像力を一層持つことができる社会になればと切に願います。

引き続きインタビュー形式での夜の世界に取材を続けていきたいと思います。