デリヘル 融資も補助金も無く四面楚歌【特集】コロナで変わる夜の世界#3-1

(取材先提供)運営用PC画面

前回に続き今回は日本の夜の業界の主要産業『派遣型風俗店(デリヘル)』の現状をお伝えします。

コロナ禍とそれに関連した補助金制度などを前に、夜の業界の店舗経営も難しい局面に来ていると訴える

埼玉県久喜市に拠点を構える老舗風俗店

『フェアリードール』代表の神崎さんにご協力頂きインタビュー形式で業界の今をお伝えします。

(インタビュー日 2020年5月2日)

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■経営としての風俗

角間:

神埼さんの今のお立場教えて下さい

神埼:

フェアリードールという派遣型風俗店(デリヘル)を運営する有限会社の代表者をやっています。過去にも色々と手を出したことはありますが失敗しており、今はデリヘルが主な仕事です。

店舗を2004年にオープンして翌年法人化したので今年で16年間、埼玉県の久喜市に拠点を置いて運営しています。『翔んで埼玉』をご存じの方はイメージしやすいかな。埼玉のやや郊外ですね。

角間:

開業のきっかけを教えて下さい。

神埼:

元々はサラリーマンをやっていたのですが、もうすごく嫌になってしまい辞めてしまいました。その後、埼玉県の大宮にある派遣型風俗店でスタッフとして腰掛けのつもりで働くことにしたんです。

まだ(デリヘルの)法律ができたばかりで派遣型の店舗が少ない時代だったこともあり、風俗スタッフの質が良いとは言えなかったころです。そんな中、手前味噌ですがサラリーマン経験があるだけできちんとした人だと扱われ、すぐ店長をやらせていただくことになったんです。

店長をしていると社長を直で見るでしょう。そのおかげさまで自分でやったほうが早いと気付いたことが開業のきっかけです。

角間:

開業の地に久喜市を選んだことには何か理由があったのですか。また今、社員さんは今何名いらっしゃるのですか。

神埼:

久喜を選んだ理由は2つありました。僕の出身地が近かったことと、埼玉県の歓楽地は当時から越谷か大宮でした。中間の久喜につくれば競合を避けてビジネスしやすいかなとおもったからです。繁華街でやっている同業者からはよくそんな郊外でやっているねと言われることもありますが。

開業当時に大手グループが入ってきてたらまずかったかもしれませんが、いまは16年の実績があるからか、大手の参入がない地域になっており、完全に地元の拠点になっていると実感しています。WEBだけ久喜店を構えていている店舗もあるようですが、実際は大宮から車で移動しているようで、うちのように久喜に実事務所は置いてないようです。

郊外とされる久喜駅前にも歓楽街の一角が。
郊外とされる久喜駅前にも歓楽街の一角が。

また、スタッフはドライバーを入れますと20名程です。ドライバーさんは副業等でやられている方が多いので実質本業の内勤として関わってくれている方は10名程です。

角間:

業界的に1店舗にドライバー除いた従業員が10名いれば大きい店舗と言えます。16年以上事業継続していることを踏まえると名実ともに業界の老舗店舗にであられることは間違い有りませんね。

■コロナの影響は当然受けているが

神埼:

それでも実はコロナの影響で、だいぶ従業員の数を削ったのですけれども。

角間:

キャストさんはどれぐらいるのですか。

神埼:

在籍数は全員で60名程です。もう今は自粛の影響でここがすごく危機意識がありまして、一日12~13人出勤されている感じです。通常は30人ほどの出勤なので稼働率は半分以下になっています。

角間:

求人の方はどうですか。

神埼:

面接は移籍希望者の面接が若干増えているかなと感じていますが、新人さんはいませんね。まあうちは元々郊外の店舗なのでそれほど面接が多いわけではありません。うちは、雰囲気を気に入って長く働いてくれる方が多いので。「久喜」のことを知らない方も結構いますので求人に対しては常に不安を抱えてはいます。

角間:

基本的なことの確認です。緊急事態宣言が出され各自治体別に自粛をしてほしい業態が明示されていますが、埼玉県に関しては、4月10日の発表時点から今の緊急事態宣言延長後も派遣型風俗店(デリヘル)は営業規制の対象に入れていないとされています。

埼玉県『緊急事態措置等の方向性について』より
埼玉県『緊急事態措置等の方向性について』より

神埼:

念の為地元の警察署の生活安全課に確認をし、営業継続に問題はないと回答を得ています。ただもし、埼玉県がデリヘルを自粛対象に拡大したとしても(休業が)強制でない限り営業を継続すると思います。営業しないと会社が潰れてしまい路頭に迷う方がでますから。

角間:

それは従業員の方という認識でしょうか?

神埼:

まず路頭に迷うのは従業員です。もちろん休業補償ありきでしたら別です。飲食店などは雇用保険に入った上で休業すれば相当保証されるみたいなのでそれは休めるでしょう。一方我々の業態やパチンコなどもそうですかね。補償内容がふわっとしている。この状況ではもう継続以外の選択肢はありません。

角間:

業界が名指しで自粛要請されようと「休業補償がない」だけで継続判断せざるを得ないということですね。キャストさんに対してはどうなりそうでしょうか?

神埼:

キャストさんの場合は事情が異なります。業界の各店舗が足並みをそろえて自粛となるならいいのですが、足並みが揃わない中で自主的に休業すると、在籍しているキャストさんが営業している店舗に移籍することがこの業界は確実という問題があります。

実際ソープなどの店舗型のキャストさんが派遣型に流れてきています。自粛が明けたとしても戻ってきてくれる補償もないというのも業界関係者が営業継続判断をするのに十分な理由です。キャストさん有りきの事業なので、結局店を明けておかないと自粛後の未来がないって状態です。

角間:

一方でパチンコの営業継続が炎上するなど、いわゆる魔女狩りのように営業継続していることにクレームをいれるケースがあるようです。派遣型の場合、実店舗がないですからクレームをぶつける先が不透明な業態ですが実際に何かクレーム等はありましたか?

神埼:

クレーム等はまるでありません。またたとえクレームが来たとしても業界関係者全員そうだと思うのですが、我々はそういうクレームにはびくともしないです。普段から偏見を受けることに慣れているのと、実際クレームを入れてくるのはお客さんとして利用することのない方々でしょうから。パチンコ屋にクレームを入れているのもそういう『部外者』の方々ばかりなのではないでしょうか。クレームどころか、長年ご利用いただいているお客さんが心配して使っていただいてる状況です。

■夢を売る仕事のコロナ対策

角間:

営業を継続する決断をしている以上は、何らかの対策及びそのアピールをすることになると思いますが、何かやられているのでしょうか?

神埼:

もちろん従業員及びキャストの検温は行っています。ただ検温をやっていますとバナーを貼っているところもあるでしょう。我々はあまりコロナ対策をアピールする気は有りません。アピールしたから利用されるわけでもないですし、逆に嘘っぽく見えませんか?バナーを貼るだけなら実際にやってなくても誰でもできることなので。薄っぺらいというか。

角間:

なるほど。

神埼:

わざわざアピールをしても、お客さんとしてはぐっと来るわけではないですし。むしろこういうときだからこそ我々の業態はいつもと変わらない雰囲気でいたほうがいいと思っています。なにより夢を売る仕事なので、利用するお客さんにしんどい社会を思い出させるのも嫌なので。

角間:

他の店舗のオーナーから待機所や接客する場所には時計を置かないんだと聞いたことがあります。お客さんに時間を気にしてもらいたくないからとのことで。

神埼:

そういう考え方は多分業界人としては、すごく大事なことだと思います。

角間:

アピールする気は無いとのことですが、検温以外に何か対策はされていますか?

神埼:

うちは元々キャストさんの待機室としてアパート8部屋を借り切っています。結果的にその環境が『密』を避ける今の状況に生きてます。郊外で家賃が安価なためできる力技ですが。本当は固定費は下げたいんですが‥。

コロナ禍もあり、逆にこの個室待機環境が快適ということで在籍してくれている方もいますので今は未だ個室待機を辞めるわけにはいかないかなとは考えています。

待機場所の写真(神崎さん提供)
待機場所の写真(神崎さん提供)

また、検温について補足ですが、促していますが実施は各自に任せています。熱に関係なく体調が悪ければ、今の時代はキャストさんは自主的にお休みをとりますので。

あと万が一感染した方がいたと判明したさいの対策ですが、悩ましいところなのですが、お客さんへの電話対応はする予定です。とはいえ、キャストさんの身バレに繋がる可能性がすごく高くなりますし、公開しても別に褒められるわけでもないでしょうから公表は実施する気はありません。行政とだけは確実に連携するレベルですね。これは他の業界でも同じなのではないですかね。

角間:

まとめると、補償を受けることがができ、さらに各店の足並みが揃うならば休業を選択するが、残念ながら現時点では業界は補償の適用除外なので休業はできない。キャストさんとお客さんの需要を考慮しながら気をつけるところに当然の配慮しながら事業継続するしか無いという状況ですね。

神埼

うちのように長くやっていると組織化されており、従業員数もそれなりになっていますからね。

一方、個人経営で家賃ぐらいで経費が済むならば休業でもいいと考えるかもしれないですが、小さい店舗だと雇用保険にも入っていないでしょう。従業員としても手取りが減るから社会保険には加入しないでと言う人も多いそんな業界です。補償が出るとしても継続することになるでしょうね。

ちなみにラブホテルなどは休業されているようですが、近い領域にいるものとしては心配です。

近隣ラブホテルの案内(神崎さん提供)
近隣ラブホテルの案内(神崎さん提供)

■納税者で雇用主なのに補償対象外にされる意味がわからない

角間:

補償の話が幾つか出てきましたが、風俗等の夜の業界に絡むところで見えるのは、

1)休校の補償

2)持続可能給付金

以上の2つになるかと思います。

休校の補償は当初提供から外されていましたが、キャストさんも性風俗業経営者も対象になると改善されました。一方、持続可能給付金ですが(インタビュー時点で)風俗を事業としている会社は適用除外されたままです。

神埼:

本当に意味が分からないですしこのまま除外されたままなら、もう税金は払わないよという気持ちになってしまいます。もう次から税務調査が入っても、うちは完全無視したい気持ちになります。

うちは今まで3回税務調査が来ています。開業後10ヶ月で1回目、まだ経営基盤が固まっていないなかの調査だったため、これを機会にキチンとやらなきゃなと襟を正すいい機会になりました。その流れで備えてはいたのですが、2回目の調査が入られた時ちょっと痛い思いをして、もうそこからはかなりきちんとやろうと決意して、3回目の調査はほぼ問題なしだったという経緯があります。

角間:

開業10ヶ月で調査くるとは早いですね。恐らく久喜で目立っていたのでしょうか。色々とあったが、年数を重ねる中できちんとさせてきた背景があると。

神埼:

そうです。当初から目立ってたかもしれません。色々と有りましたが3回めのときはもう「どうだ」と自信をもって見せました。3年ごとに来ていたのですが、きちんとやった影響からか3回めの調査を終えてから6年来ていません。「文句があるのか」と言って、すごくきちんとやりましたから。

にも関わらず、この様な流れになっていることは憤りを隠せないです。もう税金を払わないよという気持ちが出てしまいます。きちんと納税して16年、地元で小さいながら雇用も作っている立場なので。ドライにビジネスとしてきっちりやっているのに、こんな時には除外するのかーって‥。

角間:

夜の業界の事業主からの声はなかなか表に出てきていませんからこの記事で届けられればと思います。補助金もあてにならないということならば融資についてはどうお考えでしょうか。

神埼:

銀行屋さんに聞いたのです。どれだけ決算書がきれいでも、もう性風俗店というだけで融資は駄目なのだそうです。「反社会勢力との関係が~」が定型文ですね。ですからこんなときじゃなくてもとっくに銀行はあてにしていません。

角間:

銀行の対応には昔から矛盾があり、実際に風営法の届出の際に必要な物件の契約や銀行口座の開設時点で、自己申告とはいえ反社会勢力との関係がないという宣言とともに提出しているのも関わらず融資となると銀行側は反社が~という理由で拒否をする。とても不思議です。

神埼:

銀行からすると自分の責任になってしまうからでしょうね。何れにせよ銀行は元々諦めているので、今回は小さくやっていた別の法人の事業のほうで、コロナ禍に備える為、公庫には行ってみました。バタバタされており決算書もそれほどきちんと見られなかった印象です。補償はないかもしれないけれどもせめて融資はと考えていました。

ただ、審査結果は駄目だったんですが。

前向きに考えると「借金をしなくて済んだよかったー」なという気持ちでいます。

角間:

やはり老舗だとしても、キャッシュには不安がありますか?

神埼:

うちは老舗ですし、不測の事態に備えてはいるほうではあります。ですが普通に銀行がバックに付いていない状態で何カ月も維持できる、そんなキャッシュを持っている風俗店なんて殆どないでしょう。

こんなときでも消費税が逃れられませんからね。あれがきつい。お客さんから10%頂きたくても、夢を売る仕事なのでなかなかそうはできないので、うちは取っていないのです。先ほどの話に戻りますが見栄も大事な仕事なので。消費税が別に掛かるなら「やっぱいいよ」となりかねませんので。

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風俗の話はキャストさん(主に女性)のことが取り上げられることが多いテーマですが、風俗店も雇用や納税などの面でれっきとした地域の中小企業としての側面があります。引き続き、コロナ禍中小企業の置かれている状況を伝えていきたいと思います。

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