水商売の障害は『家賃』『人件費』『融資』 【特集】コロナで変わる夜の世界#2

テレ朝『羽鳥慎一モーニングショー』にて署名公開の模様が特集

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための休業要請や営業自粛は、世界中すべての業界に暗い影を落としています。現状は世界全体がとにかくしんどく、(医療業界を除き)自身の業界を支えてくれとは言い出せない空気感で溢れています。しかし、その圧に遠慮し、各業界当事者が口を閉ざしてしまうことは危険なことです。

しんどいときに誰も何も言わなかったという事実を作ってしまうと、コロナ終息後の世界でその業界は漂白され“無かったもの”にされかねません。

いつ終わるともわからぬウイルスとの戦いが続いていますが、今から新型コロナ収束後の世界を見据え声を残しておくことは特にマイノリティとされる立場にとっては大事なことなのです。

前回に続き今回も夜の業界の内『水商売』側からの現状をお伝えします。

コロナ禍で業界に深刻な事態が起きていると署名サイトを通じ訴えている、

一般社団法人日本水商売協会

代表理事 甲賀さんのインタビューから水商売業界が抱える特有の課題を共有します。

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■水商売の補償を訴えた背景

接待を伴うナイトクラブと、その従業員に早急に補償を求めます! 風営法の管轄だけ差別をされています。 一般企業、一般市民と同じ処遇を

出典:Change.org

角間:

甲賀さんは今まで水商売やクラブなどの『経営』のご経験があるのでしょうか?

甲賀:

学生時代にアルバイトでキャスト(=ホステス)の経験こそ有りましたが、水商売の経営をしたことはありません。大学卒業後は店舗立ち上げや再建など行う仕事を行っていたのですが、そこで得た知識を夜にも応用できないかと思い社団法人を立ち上げました。

角間:

立ち上げの背景と活動内容を具体的に教えて下さい。

甲賀:

実際に働いている方の多くも感じているかと思いますが、夜の世界は(業界を)横につなぐ組織がほとんどない世界です。結果、人材調達は、スカウトマンに頼らざるを得ないあまり望ましくない現実が有ります。またキャストの教育に関しても他業種からすると体系化されていません。ノウハウが個人の経験に蓄積されているばかりで共有がうまくされず、結果的にサービスの質が安定しない。こうした点に課題意識を抱いたことが理由です。

できることからと、社団法人を作り、今は、毎月無料セミナーを開催、税金や営業のことなど、業界特有の知識を共有し合う機会を作ることを主に行っています。

一般社団法人日本水商売協会 代表理事甲賀さん
一般社団法人日本水商売協会 代表理事甲賀さん

角間:

署名サイト立ち上げの経緯を教えてください。

甲賀:

一般社団法人で実施している、業界関係者との定例会議にて(コロナで)急激に悪化していくこの状況の深刻さが共有されたんです。

例えば震災(311)のときでさえ、経営がしんどくても「私達は夜の業界だから仕方ないよね」と、特に声を上げる必要もないなという空気感でした。しかし今回のコロナショックは各社本当に死活問題というか生きていけない状況になっています。みんながやっとしんどいと口にしだしたというか、いままで諦めていたんだなと気付いたというか。とにかく、声をあげることが大事だと意見が揃いました。私も銀座、歌舞伎町、六本木など、他地域の店舗の方々とのネットワークを活かすことでより多くの声を表に出せると思い、署名活動を開始しました。

角間:

定例会議のメンバーというのは具体的にどういう方々が名前を連ねているのですか。

甲賀:

東京各地域の水商売店舗の方々もいますが、数だけでいうと最も多いのが歓楽街の花屋、酒屋、衣装屋といった夜の店に商品やサービスを提供しているような企業です。筆談ホステスで有名になられた元区議会議員の斉藤里恵さんなども参加されています。

角間:

いわゆるキャスト(=ホステス)さん個人との関わりというよりも、経営側に立たれてる方たちの声が集まったということですね。

甲賀:

はい。ビジネスとして業界全体のことについて話し合うような会なので。メディアはキャストさん個人のしんどさばかり記事にしますが、店舗経営者の現状も本当に深刻です。今回、要望書を岸田政調会長に出させていただきました。

添付資料に休業中でも出ていく支出というのを各地区の主要な店舗さんに出していただいたのですが、例えば六本木のある店舗は何もしなくても月3500万円が出ていく。売り上げ0円なのにです。この状態が数ヶ月続くと持つわけがありません。

角間:

なるほど。夜の業界は自粛するにしても、維持費(家賃)が高額になる傾向があるため休業の影響が相対的に大きいということですね。署名サイトで訴えられている内容では、セーフティーネット保証5号(=融資制度)から、水商売の店舗が対象除外されていることについて、職業差別では?と書かれていますがもう少し説明をお願いします。

甲賀:

差別という表現を使いましたが、普通の中小企業もしくは個人として融資に関しては扱ってくださいということです。偏見をなくせというよりも、とにかく除外を外して使わせていただきたい。岸田さんもそれに関しては、全て外すという方向で検討していただくとご返答をいただけてはいます。

角間:

署名サイトでは分割してませんが、伝えたい順番は、

1)今こそ融資制度が必要なのに、名指しで利用ができなくなってる

2)これ差別じゃね?

ってことですね。

甲賀:

融資に関しては、セーフティーネット保証5号に限らず、周囲の店舗もからも下りなかったという声しか聞かない、コロナに関係のない融資枠でも今回名指しの除外をされたことで、何の融資も受けられない可能性が高くなってるのではないかというリスクを懸念しています。

角間:

偏見が固定化すると、あらゆる方向に悪影響があるということですね。

岸田政調会長に要望書を提出
岸田政調会長に要望書を提出

■特有の課題(家賃、人件費、融資)

角間:

偏見(差別)をなくせと訴えられた後に

1)休業をしている間の店舗家賃の補償

2)最低限の人件費の補償

3)無担保無利子融資の斡旋

出典:Change.org

以上3つを考慮してもらいたいと書かれています。それぞれ意図を解説していただけますか?

甲賀:

夜の業界特有の問題がいくつかあり、最も影響が大きいのが『1番目の店舗家賃』です。家賃の問題は、夜に限らないのは分かりますが、元々かなり高額設定になっているんです。またさらに言うと、銀座の店舗などでは6カ月の保証金を現金で入れるというルールが入居するときにあります。

あらゆる面で夜の業界は通常より高い家賃を請求されている立場です。だからこそ、減額をオーナーさんに要請しやすい環境が現場には必要なんです。

角間:

業界の地域ルールのような感じでしょうか。

甲賀:

銀座の話ですけれども、ある不動産オーナーからは、勝手に休業しているのに「家賃をまけてくれなんて何を言っているんだ?」という話も出ています。店舗側が退去しますいうと、6カ月の保証金を没収しますよ追い込まれる。古い土地なのでシビアです。

今はみんなが大変な時期ですから、連携して痛み分けで、お店ももちろん痛い、不動産側も痛みを伴う。一緒にみんなで頑張っていきましょうと一丸とさせていただける仕組みがほしいのです。固定資産税の減免などで調整が可能な状態まで整えばベストですが、そこまでは求めておらず、とにかく公共から不動産オーナーは入居者とうまくやってほしいと一声掛けていただけるだけでだいぶ楽になるんです。だから項目に記入しています。

角間:

夜の業界がテナントを借りる際は、敷金、礼金、保証金などが、いわゆる一般業種が借りるときよりも3倍程度高額になる傾向は性風俗産業でも同様です。夜の業界特有の環境なのかと思います。だからといって、夜の業界専用の制度を作ってほしいと訴えているのではなく、名指しは当然辞めて、可能ならば、全国の不動産オーナーに寄り添った仕組みを投入してもらいたいと言うことですね。そうすると、結果的に水商売はとても助かるよということですよね。

甲賀:

『2番目の人件費保証』に関しては、人件費の補助は何か他のいろいろな制度があるので普通にそれが使えればいいのですが、名指しで除外されるため非常に困ると言うことです。

角間:

知らない人のために丁寧に教えて下さい。水商売のいわゆる人件費の考え方なのですが、水商売で働く際にいわゆる雇用になるのか、それとも、性風俗産業などのように、業務委託で店舗さんとの関係なのか、どちらが主流なのですか?

甲賀:

黒服的なスタッフさんは雇用であるケースがほとんどで、ホステスさん、キャストさんといわれる人たちは傾向的に個人事業主であることが多い。とはいえ、それがまたこの業界のダークなところなのですが、きちんとした雇用契約書的な契約を交わして、それこそ社保など、全て網羅している店舗や企業さんは多数派とは言えません。だからこそ、雇用関係を結んでいる店舗が報われる機会にしていきたいと考えています。

角間:

キャストさんに対するいわゆる固定給自体はそれほどかかっていないということですか?

甲賀:

固定給の義務こそ無いんですが、コロナ禍の影響でお見舞い金を支給しています。六本木のお店は月1200万円を女性に支給したと聞きました。業態が異なりますが、ホストクラブでも同様の保証を支払っていると聞きます。店舗の売上が0になるとアンダーグラウンドに潜っていくことを知っているので。もはや店舗としても意地です。

角間:

固定給ではないけど、保証としてお金を払ってあげないと、地下化するキャストが増えて社会全体の損失がより大きいことになると。

甲賀:

再開のときにもまた弊害が出るということで、そこに対してそうならないように、俺たちがなんとかするからというスタンスで、自腹を切っているのです。自主的に払ったお金ですから、それを補填してほしいとは全くもって思わないですけれども、少なくとも今回一般の企業が使えている制度を同様に使わせて頂きたいんです。

角間:

ここすごく大事なところだと思うので、記事を読んでくださる方向けに解説交えると、夜の業界は、お客さんが付いた本数に合わせた金額をその日に払うというモデルをとっている。これが万が一その日付けたお客がゼロだったとしてもx万円は渡すよと。だからシフトを入れてね。とする制度がありこれを『保証』と言っています。特に出稼ぎで働きたい方々に好まれる制度で、採用している店舗も水商売、性風俗産業共に多いのです。

しかしお店事態が極端に稼げない状況になると、いくら保証があってもシフトを上げてもらえない。出勤しない方々は。個人活動をはじめる傾向がありリスクが高まる。いろいろ言われますけれども、店舗に在籍してサービス提供したほうがやはり特に女性であるキャストさんにとっては安全な環境だと言える。稼げなくなるとこれが崩れると。

甲賀:

そうです。お客さんたちも、お金をあげるからおいでと言って呼び出したりするのです。(新型コロナ)リスクも高くなるのではと思います。統制が取れないと感染源がおえなくなりますから。

角間:

『3番目の無担保無利子融資』についても教えて下さい。というのも性風俗産業の場合は基本的に借りている店舗は圧倒的少数なので。(そもそもどれだけ決算書が良くても貸してくれない)水商売の場合は借られているのかなと思いました。何か情報をお持ちですか。

甲賀:

基本、借りられないですが、老舗クラブのような感じのところは、「20年営業していていたらようやく1000万円くらいだけど借りられた」というようなことを言っていました。融資とは縁遠い業界です。でも今はもう融資でしのぐしか、逆に他に道はないかなという意味合いで署名サイトには書きました。これも決して独自のものを作れと言ってるのではなく、セーフティーネット保証5号だけでなく、いわゆる他の業態と同様に扱ったものを使わせてほしいということだけです。

(東京都知事の)小池さんの発言があった次の日から、いろいろなオーナーさんなどから連絡があって、今から金融公庫に行ってみるんだけどさと。それも結構有名なクラブさんたちですが、本当に必死に次の日から動き回っていましたね。でも今のところ(融資の審査に)通ったという話は聞きません。

■店舗型水商売は三密の環境が揃ってしまう

角間:

リアルな話をありがとうございました。最後に内容を変えた質問ですが、実態が明らかになってない中、夜の世界が感染源になっているという論調が聞こえてくることもあります。この辺はどうお考えですか?

甲賀:

一般的な店舗型の水商売の形式は『三密』に該当する環境だと思います。キャスト、利用客ともに相当リスクはあると思います。また、キャストさんたちも別に働きたくて働いているわけではなく生活のために仕方がないと割り切っています。三密を気にしていない女の子はほとんどいません。店舗側も女の子たちが生活できなくなってしまうと困るから店を開けざるを得ない。一度休むとどうなるかわからない恐怖もあるとは思うのです。

だからこそ、国なり都なりが具体的な安心材料を見せてくれさえすれば「それなら休んでいても再開できるな」というイメージが湧き、店舗も休業を決断しやすいと思います。とにかく、今後に対する具体的なイメージが何より求められています。それががない限りは、裏で営業の様なものが続いていってしまうと思うのです。怯えながらも。

角間:

店舗型に対しては三密を避けるための休業は否めない。しかし安心がなければ店舗営業の継続か先ほど言った店外営業などが加速し、より大きいリスクがやってくる。舵がどの方向にも重たい業界だからこそ、何より数カ月先のイメージが持てる情報がとにかく必要なんですね。

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すべての業界がしんどい中、特定の業界に補償や支援を呼び込むことは困難な時勢です。また資源が限られた中、対象者のイメージが持つ共感性の強弱(所謂、かわいそうランキング)などから、解決の優先順位をつけることも極めて難しい。しかし、こうして各業界固有の問題を認知できるようにしておくと、他の課題との共通点を見つけるヒントになると信じています。

引き続き、表に出にくい夜の世界の具体的な問題に光を当てていきたいと思います。

※前回記事

ZOOMでキャバクラ?活路を探る夜の世界 【特集】コロナで変わる夜の世界#1