反省だけなら猿でもできる。吉本興業は『芸人白書』を作るべき

SDGsとも深い関わりのある吉本興業だからこそ…。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

社会事業に参入している吉本興業の騒動をみて7/21下記の記事を投稿しました。

吉本興業 解決すべき2つの矛盾

既に世の中に向けて発信済みの各種メディア記事や過去の記者会見での発言を参考に、実態が明らかになる前に安易な吉本批判を行うのではなく、今矛盾があるのだとしたら早期是正すれば、取り組んでいる社会事業の可能性を伸ばしていくことができると期待した趣旨の構成となっていました。

しかしながら7/22に行われた吉本興業株式会社代表取締役である岡本氏の記者会見の内容は、前述の期待を裏切るものでした。今後の吉本興業だけでなくその周囲を含めた必要なアクションを提案したく筆を執ります。

■「冗談だった」は、いじめの構造と一致

まぁ冗談といいますか、なごませるといいますか

出典:岡本社長7/22記者会見にて発言

7/22の記者会見で、前の日に宮迫、田村両氏の記者会見で公表され世間に衝撃を与えていた

“テープはとってないだろうな”

“全員連帯責任でクビにするからな”

これら岡本社長の発言は実際に行われていたことが明らかになりました。

※全文はこちら→吉本 岡本社長の会見書き起こし

「冗談だった。」そんな思いだったから相手が本気にしていると思わなかった。この様な自分勝手な解釈で恐喝とも取れる発言をしたことを釈明していますが、この構図は完全に今も全国で発生している『いじめ』と合致します。

いじめ被害は「からかい」が最も多く,次いで「暴力」(軽度の叩きなども含む)となっている。

出典:いじめと学力 ー 須藤康介

また、吉本所属芸人キングコング西野氏もブログでこのように述べています。

イジリとイジメの境界線は、言葉の強弱ではなく、「そこに信頼関係があるか、ないか」

出典:「イジリとイジメの違いについて」by キンコン西野

これらのデータや解釈は会見によって明らかにされていた、信頼関係にヒビが入っていた吉本興業と宮迫氏、田村氏両名の構造に完全に合致します。

冗談やからかいは確かに受け取る側の気持ち次第によるところが大きいものですが、信頼関係に明らかな崩れが生じているときに無意識だろうと冗談やからかいで恐喝とも取れる発言をすること。それはいじめです。各種週刊誌などでも批判されていましたが、吉本興業内で芸人に対してのイジメがあった事実が明らかということになります。大企業のトップがイジメをした。この事実は反省をしたとしても批判を受けて当然です。解消する仕組みを示さない限り、永遠にイジメを行う組織としてのレッテルがついていくでしょう。

■ソーシャルビジネスに関心のある若い人はいじめ問題を重要視

先日の記事でも指摘しましたが、吉本興業は2018年から、ノーベル平和賞のユヌス博士と連携し、ユヌス氏が提唱する「ユヌス・ソーシャルビジネス」の実践と普及に向けて、 具体的な事業を展開していくことを明言されています。この決意表明事態は前向きなものとして今後も捉えておいてよいことです。

しかしながら、今の体制のままではソーシャルビジネスに関心のある若い世代の実態との間に大きなギャップが存在しています。

バンコクにてユヌス博士とソーシャルビジネスの普及を行うことを約束する大崎会長 2019/6/28
バンコクにてユヌス博士とソーシャルビジネスの普及を行うことを約束する大崎会長 2019/6/28

年代別にみると、20 代や30 代の若年層では、「ブラック企業問題」や、「女性の社会進出・家事分担」などの、“労働環境”関連の社会問題への関心が他の年代よりも高くなっています。

出典:「ソーシャルビジネス・社会貢献活動に関するビジネスパーソンの意識調査」

「ソーシャルビジネス・社会貢献活動に関するビジネスパーソンの意識調査」によると、20代から30代の若い世代は、ブラック企業、やいじめ等の社会課題を解決する事業への関心が高い傾向が見られます。

こうした現状では、いくら吉本興業がノーベル平和賞受賞者と組んで、社会に向けて「ソーシャルビジネスをやるんや!」と訴えかけても自社内の体制に矛盾があり、且つその矛盾の内容が若い世代が最もNGだと考えているブラック企業とみられる状態であることが明らかなため誰もついてこず、上辺だけの綺麗事にとどまってしまいます。見通しが甘すぎます。

会長、社長の1年間の減俸や、コンプラ体制の整備といったその場しのぎの対策を口にしたところで、本質的な解消が見えていません。若い世代の信頼を得られず、伸ばしていきたいと考えている教育事業、社会事業は頓挫することは明らかです。

■吉本興業に「芸人白書」を作らせる気概はあるか?

この現状を踏まえ吉本興業は今後どうしていけばいいのか?

筆者は吉本興業がお金を出して外部組織に『白書』を作らせることを提案したいと考えています。

この記事をお読みの方には『白書』という言葉に耳馴染みのない方も多いかと思いますが、NPOやNGO、行政等の社会活動を行っている組織はなぜその課題に取り組む必要があるのかを社会に知らせるために、データを収集し、それをまとめ上げて公開することが活動の王道なのですが、そのまとめ上げたデータ集のことを『白書』といいます。

<参考例>

子供・若者白書 内閣府

若者ホームレス白書 ビッグイシュー基金

夜の世界白書 ーGrowAsPeople

白書は特に、引きこもりやホームレスといった、自己責任論で済まされてしまう対象者の問題解決のために力を発揮します。今回の吉本興業芸人も構造は同じです。「そうは言っても普通の人よりは稼いでる」「芸人を選んだのは自己責任」こうした意見がでることで、芸人自身の問題にすり替えられて、業界の構造が見えにくくなっているためです。だからこそ白書をとり、芸人の実態をデータ化することでまず課題の本質を可視化することが求められるのです。

吉本興業社外取締役を務められている中村伊知哉氏も下記のように述べています。

社外取締役という立場は、会社から独立した客観的な立場から経営に対する監督機能を求められます。だからこそ、7/22の会見で岡本社長が述べられた今後の対策としての減俸や社内整備をより具体化するのであれば、ユヌス博士とも通じている中村伊知哉氏が旗を振り、第三者機関に『芸人白書』の作成のため、

1)減俸した分の資金をNPOや大学機関などに白書制作のために寄付すること

2)所属している6000人の芸人にデータを取ることを認める

この2点の行動を役員に促すべきです。

第三者機関が作成する白書を通して内情を明らかにすることで初めて失った信頼を取り戻せるのではないかと思われます。ゴシップとして相変わらず騒々しいことになっていますが、まずは吉本興業は基本となる情報公開から始めてみてはいかがでしょうか?

タレントのビートたけし氏が下記のように述べられていましたが、

「オレら芸人は猿回しの猿と一緒。猿が噛んで、猿に謝れって言ったってダメ。飼っている人が謝るんだよ」

出典:サンスポ.com たけしの発言より

しかし残念ながら反省だけなら猿でもできるのです。吉本興業はソーシャルビジネスにも絡むと明言した以上、解決に向けた具体的なアクションを取るべきです。