風俗の仕事と『裁量労働制』

(写真:アフロ)

「働き方改革関連法案」をめぐり国会が荒れています。

我々庶民に直接影響がある法案が議論の最中なのですが、オリンピックの陰に隠れあまり認識されていない印象を受けます。確かにTVで国会答弁を眺めていると、与党側の傲慢さもさることながら、野党側の議論も相変わらず稚拙で、こんなやり取り見るよりも一日中オリンピック見ていたいと思わされます。

その過程で『裁量労働制』という単語が頻出しています。記者や編集者、企画職や研究職などの労働時間とその成果が連動しない成果主義の職種に適用されている労働形態です。日本では労働者自らがどのような条件で雇用されているかを確認することはまれだと思います。裁量労働制を知らなかった方も結構いらっしゃったのではないでしょうか?知らないだけで実は自分の雇用契約が裁量労働制になっている可能性もあります。(入社時に交わした雇用契約書を確認しましょう)

現代では職種の多様性から、労働した時間で給料を貰うのではなく成果で給料を貰う。そんな労働形態の需要の高まりを感じます。こじつけるようですが、実は性風俗産業で働くことも時間をお金に変えるのではない形態の仕事です。この機会の実態をお伝えしたく筆を執りました。

■性風俗キャストのお給料は原則完全歩合

「夜の世界の仕事は“水と風”に分かれる。水が水商売、風が性風俗」

こんな言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、水風の違いを知るためには仕事の内容だけではなく、店舗とキャストさんの雇用条件にも目を向けなければなりません。大雑把に分けると、水商売は雇用関係、風俗産業は外注契約となっています。この違いを知っておくことは業界を知る上でとても重要です。

水商売は申請したシフト中に店舗に出勤していることで時給を得られます。加えて指名やお客さんが注文したボトルのインセンティブがお給料として支払われます。一方で性風俗産業では、申請したシフト中に店舗に出勤していたとしても時給は支払われることはありません。あくまでこなしたお客さんの数と内容に対しての報酬が支払われるのです。

・水商売の給料 = 時給+インセンティブ

・性風俗の報酬 = 完全歩合

まとめると上記の様になります。水商売は出勤さえすれば最低でも時給分は稼げる仕事ですが、性風俗産業はたとえ出勤したとしてもその日にお客が0人だった場合キャストが得られるお金も当然0円となる世界なのです。

確実に稼ぐために水商売に在籍し、月数回性風俗キャストとして出勤する女性も珍しくありません。業界が女性を使っているというより、女性側の「私はこういう働き方をしたい」という需要に合わせて柔軟に変化できる環境が夜の世界には存在します。

(都内某店舗のキャストバック金額表より)
(都内某店舗のキャストバック金額表より)

■性風俗キャストは月平均いくら稼ぐ?

条件だけで見ると過酷に見える性風俗産業の雇用条件なのですが、実際はいくらの収入があるのでしょう?私が設立したGrowAsPeopleでは見えにくい夜の世界を調査分析するために性風俗店に協力をしていただくことで、毎年白書を発行しています。年代別に調査データでは下記のような結果が出ています。

 (夜の世界白書 2018年GrowAsPeople発行)
(夜の世界白書 2018年GrowAsPeople発行)

最も月収が多い18-25歳で月43万円(13日出勤)という結果となっています。この金額が多いか少ないかについてはこの記事では語りませんが、少なくともキャストさんたちがこの金額を稼いだ結果は何時間働いたか?とはならないのです。何人の客を取ったかという見かたをすることになります。参考までに計算してみると、前の資料キャストバック金額表を参考に一番良く出る90分の仕事の場合、

・43万円÷8000円 = 54人

・54人÷13日   = 4.1人

出勤する度、1日4人を接客していることになるのです。

■接客0人でも報酬がもらえる制度があるケースも

出勤するたびに4人の客が取れれば良いのですが、必ずしも客がつくとは限りません。性風俗産業とはいえ、季節や天気タイミングによって客の数が増減するのは他の産業と同様です。せっかく出勤したのに稼げない場合もある。こうした状況では性風俗の仕事を選ぶ人がいなくなっていまう可能性が高まります。そうした課題を解決するために性風俗業界には『保障』という制度を店舗が設けているケースがあります。

補償制度の内容は各店舗が独自に設定しているのですが、どの店舗も、

「客が0でともしも稼げない日があっても、出勤さえしてくれたのなら必ず1日3~5万円を店舗が渡しますよ」

といった内容になっています。とは言え、全てのキャストさんがこの保証制度を利用できるとは限りません。補償制度を利用するためには、

・月◯日以上、1日△時間以上は出勤必須

・パネルの顔写真にモザイクなどをいれない

・リピータが月1人以上いなければいけない

等などと、このように条件は厳しいものとなっています。特に日数ではなく時間を拘束されるあたりが厳しく、当初は保証を希望していたキャストさんも諦めるケースも散見されます。

■労働者が働き方を選択出来る戦略

この記事は「裏の世界から表の世界を見ると見えてくるものがある」というコンセプトで書いています。

夜の世界の雇用環境から、稼ぎ方、補償制度について今回は触れてきましたが重要なことは、夜の世界の仕事はなんとなく成立しているわけではなく、働く側、キャストである女性の需要に応える仕組みを用意し選択できるようにすることで成立しているという点です。実際に柔軟な働き方が可能だからと言った理由で性風俗産業等の夜の仕事を継続している方は少なくはありません。性風俗産業等の夜の仕事は、社会的な偏見を受けながらもずっと続いてきている産業です。その秘訣が、変化に対して柔軟な姿勢を有していることは間違いないのです。

変化しなければ生き残ってこれなかった性風俗産業の現状を見ていると、労働者側が柔軟に選択できる環境へと日本の雇用環境をシフトしていくことこそが変化の激しい時代でこの国が生き残っていくための唯一有効な手段なのかもしれないと思えてきます。そういった意味で働き方改革関連法案が与党の意地、野党のネタに終始しないインフラとして根付くことを願ってやみません。