法律だけでは児童売春を止められない。大人の態度、曖昧さの解消を。

(写真:アフロ)

以下のような記事を見つけました。

息子の交際相手の少女に売春させた疑い 55歳の女逮捕

児童売春関連の事件は毎年何かしら目にしていると感じます。愚かな大人が児童を利用したという悲劇で終わらすのではなく、児童売春の構造把握の機会とするため筆を執りました。

■現金のやり取りと売春斡旋の曖昧さ

(当時)17歳だった少女を買春したとされる50代男性は『児童買春・児童ポルノ禁止法』(以下、児童ポ法)に違反容疑で書類送検とあります。

児童買春・児童ポルノ禁止法

(抜粋)児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰【第一条】

出典:児童買春、児童ポルノ禁止法

児童ポ法では、児童(18歳未満の男女)との間で対償を供与し、又はその供与の約束をして性行為や性交に類似する行為が規制されています。前述の50代の男性が当事者であることは少女の証言で明らかなので、児童ポ法違反に該当し書類送検となったのでしょう。男性側はとてもわかり易い一方、55歳の女に対しては児童ポ法ではなく児童福祉法違反の容疑で逮捕とあります。この違いはなんでしょうか?

児童ポ法上は児童買春の対価を受取り児童を紹介する斡旋行為は当然違法ですが、おそらく現金を用いていており対価発生の証拠が確実ではないことに加え、周旋(仲介すること)を「本人が勝手に」と否定していることから児童ポ法違反が直ちに確定できなかったのではないかと推測されます。その為児童福祉法違反として逮捕したのでしょう。

児童福祉法の中で児童に淫行をさせる行為や、淫行をする可能性がある者に引渡し等を行うことが違法行為として禁止されています。児童ポ法は子どもの権利を守るために買う側に対してだけではなく、斡旋行為を行う側にもしっかりとにらみを効かせていますが売買春は現実として記録の残りにくい現金でのやり取りが主流です。売春の斡旋は自白が無い限り証拠が掴みにくいという曖昧な構造がこの事件から見えてきます。

■曖昧な売春の世界 被害も生き方も見えにくい

構造の把握には数字で見ることが重要です。警察白書に児童ポ法の被害者の件数が記録されています。

警察白書(平成28年)

平成23年から平成27年までの間右肩上がりに被害者児童の件数が増加している事実が確認できます。一方で、『売春』の件数はというと、少々古いデータですが売春の検挙数は減少の一途を辿っていることが確認できます

警察庁資料

これらの数字は児童の被害者割合の増加を示しているのでしょうか?答えを知るためには、児童ポ法と売春防止法(以下、売防法)の違いを知る必要があります。実は売防法上、売春は違法行為ですが法律上の刑罰は記載されていません。これは歴史的に売春行為を為す方が社会的、経済的に弱者で保護対象としていることが通説とされています。一方で売防法上、斡旋行為は違法且つ罰則の規定がしっかり存在しています。つまり売防法は売らせた側を厳しく取り締まる法律となっています。

しかしながら性風俗産業が事実上成立していたり、恋愛と売買春の線引の曖昧さ等から売防法だけでは児童等のさらに弱い存在に法律が有効に届かなかった側面があります。こうした隙間を児童ポ法が埋められている状況から、児童売春の被害が増えているのではなく従来の売防法では追いきれなかった被害が見える化してきていると考えるほうが自然かと思われます。

セックスワーカーの労働者としての権利等が守られていくことは重要です。性産業の歴史を把握することも重要です。しかし、どこからが売春かが曖昧であったり、法律的な扱いも曖昧である、こうした世界で生きていくには結果的に高度な自己判断を要求されるのです。自分で判断することが難しい児童がこのような曖昧な世界に関わると大人に利用される立場となることは間違いありません。売春の是非は簡単に答えがでない深いテーマでありますが、18歳未満の児童が安易に売春に関わることなどが無いよう、大人が性風俗や売春の是非はさておき、児童売春だけは絶対NGだと線引をしておくことは極めて重要であり売防法よりも定義がしっかりしている児童ポ法がもたらしている影響は大きいと言えます。

■児童と権利とどうすればいいかだけは絶対曖昧にしてはいけない

「少女が勝手にやっていた」逮捕された55歳の女が口にしたこの言葉に今の時代の怖さを感じます。この女の斡旋の有無は今後の調査で司法が明らかにすることなので言及は避けますが「知らなかった」と言い逃れすることで児童ポ法から上手くすり抜けられて可能性がある言葉です。こうした知識はネット検索などで簡単に仕入れることが可能で、どうすれば援助交際しても逮捕されないか?の様な安易な記事もネット上でだれでも簡単に見つけることが出来てしまいます。

売春などの問題については、法律や歴史など考えなければならない要素がたくさんあり、安易に何が正しくて何が間違っているのかを決めることは避けなければなりません。考えなければならないことは非常に多い。しかしながらそうした複雑さを置いておいてでも我々大人は児童が自己判断できない曖昧な世界に迷い込まないように守っていかなければなりません。しかし、児童が売春やパパ活などと呼ばれる行動に安易に手を伸ばしてしまう状況を我々大人は薄っぺらいモラルを押し付けることでしか防ごうとしていません。こんな姿勢では、どうしたら楽に稼げるか?こうしたシンプルなHow to記事に勝てるわけがないのです。大人の態度が曖昧で情報発信も曖昧なままでは判断力の乏しい児童ははよりわかりやすい世界に吸収されていくのは自明です。

本当に児童を守るために、18歳未満は売春行為を絶対にやってはいけないことだと我々大人が明確に示さねばなりませんし、客となるなんて言語道断です。またモラルだけではなく、困ったときに本当に必要なHow to記事に児童がアクセスできるように環境を整えていかなければいけません。ヒントとなる手段は次の記事で紹介したいと思います。

数年内に成人年齢の引き下げが実行される流れになっています。社会では白か黒で分けられない曖昧な立場があることは重要ですが、曖昧な立場は危うさを生むものです。子どもと大人の間にいる児童という曖昧な存在を大人の都合で翻弄することが無いよう、こうした事件が起きるたびに我々は一人の馬鹿な大人が犯した過ちだと切り捨てるのではなく、構造を把握し解決策を考えることを習慣としなければいけないと思わされます。