2018年『夜の世界』における3つの要素

(写真:アフロ)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

2018年最初の記事は、変化し続ける社会の中で夜の世界に関わる抑えておくべき要点を3つ紹介させていただきたく筆を執りました。繰り返し読まれる記事になれば幸いです。

■その1 夜の世界に貧困の在処を求めないこと

支援事業を行うNPOや活動家、メディア関係者とその受け手に特に意識して頂きたい点です。

2016年から17年は貧困ブームと言っていいほど多様なメディアが貧困を軸とした記事を書いていました。(何度も指摘しているとおり)その記事に絡んだ形で性風俗等の夜の世界に関わる方々のストーリーが、貧困の悲惨さやしんどさを証明するアリバイとしてたくさん紹介されていました。

貧困が社会問題化していることは事実ですが、夜の世界が”貧困に困った方が行き着く場所”という前提をもってしまうことはそこに生きる当事者の『今』抱えている課題を見落としてしまい、仕組みづくりや当事者のためにならない報道や活動となるリスクがあります。“今まで困っていたこと”と“今何に困っていること”は別ものということを忘れてはいけません。

性風俗等の夜の世界はキャストさんだけでも全国に推計30万人存在しており、店舗運営者を入れたらそれ以上の規模になります。非常に多様な方々が生きる世界なのです。必ずしも貧困が理由で夜の世界に関わっている方ばかりではありません。

人の数だけストーリーはあり、物言わぬ方々を推測やイメージで決めつけることは誤解の元です。ストーリーの紹介自体がNGではありませんが、その際必ず数字を伴う情報も合わせて発信していく事が重要です。この点に関しては私自身が立ち上げさせていただいたGrowAsPeopleが夜の世界に関する白書を今年も発行予定ですので参照頂ければ幸いです。

貧困問題の解決のために当事者との接点を夜の世界に期待する気持ちはわかりますが、当事者をその中からピックアップすることは前述の通りリスクが有る行為です。ではどうするべきか?それは、何処かにたまり場があると期待し、狭い世界を深掘りするのではなく、貧困に直接関係ない活動を行っている組織を含め(少々使い古された表現ではありますが)横のつながりを作っていくことしかありません。

学校、NPO、企業だけではなく、夜の世界を交えて業界を横断し情報交換できる場の重要性が高まっています。今年、貧困問題解決において重要さを増している役割は、偏見を持たず各業界を繋ぐことが出来るファシリテーター的な役割であることは活動を通して強く感じています。

■その2 情報発信し分断を避けることが重要になった

これは性風俗店の運営者に意識して頂きたい点です。

異なる領域ではありますが、昨年は『AV強制出演問題』が世間の注目を浴びました。論点が多いテーマなのでこの記事で深掘りすることは避けますが、根っこにある問題点は「閉じた環境は問題を生む」ということだと思っています。昨年末からメディアを騒がせている日馬富士暴行事件などにも当てはまることですが、閉じた環境では暴力やハラスメント的な側面を加速させる可能性があると同時に、世間からの批判の対象になりやすいリスクがあります。

話を性風俗業界に戻しますが、デリヘルを中心としている現在の性風俗産業は業界間のつながりが薄いという声は業界内からよく聞こえてくるワードです。これは各店舗が独自の商材を持つことが難しい業界のため、キャスト情報、顧客情報を同業者に握られたくない業界の心理が働いている故の現象です。それゆえに積極的な情報発信を控えてきた歴史があります。

しかしながら、情報を抜かれることを恐れ閉じていた業界ではありますが、現代では閉じてしまうことは前述の通りリスクが高い行為となっているのです。閉じていることで、内部としての問題(スタッフ人材不足、多様性の不足)を抱えると同時に、外部からの問題(風評被害、ロビー活動の的)に晒される可能性が高まります。結果的にせっかく情報を持っていても他の業種から分断されてしまう恐れがあります。

貧困報道に絡んだことでメディア露出機会が増加し、キャストさんの声は多く切り取られた一方で運営者側の声はまだまだ登場機会が多くはありません。目立つための情報発信ではなく知り得ている現実を伝えていくことの重要性を意識し、性風俗業界側も内側からの情報発信を積極的に行うことが業界の事業にも自衛においても有益となるはずです。また業界の代弁者としてはキャストさんよりも包括的に情報を把握している各店の店長さんからの情報のほうが横のつながりを構築していく為に重要な要素となりえます。

貧困問題ではなく、労働環境や、副業の話、情報の届け方の話など業界の運営者側が出来る話は意外と多いものです。業界を飛び越えた情報発信が社会の一員でいるためにも求められていると感じています。(今年は私のこの記事でも店長さんなどの声を紹介していきたいと思っていますので、取材を希望される店長さんなどからのお問合わせもお持ちしています。)

■その3 夜の世界以外の立場を持ち易い時代を活かす

最後は業界で働くキャストさんと企業の採用担当者の方へお伝えしたい点です。

実は性風俗の仕事というのは辞めたという状態が定義化されにくいという特徴があります。性風俗のキャストさんに関しては店舗に雇用されている状態ではないため、例えば3ヶ月に1度しか出勤しない方も存在します。もっと言うと、3年間ブランクが有り復帰というパターンも割りと聞くパターンです。また他の立場を有している方も一定数存在します。昼間は学生やアルバイトの立場であり月数日だけ夜は風俗嬢としての立場になる。このように辞めた状態が曖昧なのです。

GrowAsPeopleではセカンドキャリアの機会づくりを行っていますが、これは辞めることを推奨しているのではなく、辞めざるを得なくなったときに孤立し次を作ることが困難な現実を変えていきたいという思いから行っている活動です。辞めざるを得なくなったときというのが所謂“40歳の壁”という年齢による体力の限界をさしているのですが、夜の世界からのセカンドキャリアを作りやすい方にはある特徴があると感じています。在籍期間中に別の立場を持っていたか否かです。

現在、国内では副業に関する規制がどんどん緩和されており、働きたい側にとって極めて有利な環境になっています。この環境を活かすことで各キャストさんは夜の仕事以外の立場をとして別の立場を持つことが行いやすくなっています。前述の通り、夜の世界は辞めること自体が難しい世界ですが、他の立場を持つ為の時間は多く手に入れられる世界でもあります。多様な立場を持っておくことで自身のライフプランとしてセカンドキャリアが築きやすくなります。

キャストさんとしては狭い世界に閉じてしまうのではなく、機会を活かし積極的に他の立場も手に入れに行くことが重要です。自分で備える自身がない場合は私達のような団体がサポートしますので声をかけて頂ければと思います。

他方で人材不足に悩んでいる雇用側には過去の立場や現在の立場のイメージで判断するのではなく、その人の能力や理念などを掘り下げて腹を割ったコミュニケーションを取れるように努力していくべきです。夜の世界にいる方だから簡単に雇用できると考えてはいけません。(そういう考えの企業の方からのお問合わせは残念ながら多いのです)間違っても同情心や困ってそうだからといった理由で雇用してはいけません。これは他の社会課題を有している方に対しても同様です。会社の想いやストーリーを語ることで共感される姿勢を持つことが何より重要なのです。

以上、簡単ではありますがまとめさせていただきました。お読みくださりありがとうございます。