性風俗の『40歳の壁』という課題を共有したかった理由

(写真:アフロ)

5/16朝日新聞、5/22は東京新聞に『40歳の壁』という言葉を紹介していただけました。

風俗からの卒業を支援 「40歳の壁」前に次の道へ

特に16日はYahoo!ニュースで閲覧数総合1位になるなど、夜の世界を知らない方に向けて効果的な情報発信ができたと思っております。性風俗の『40歳の壁』という言葉は、2011年位から勉強会や講演等でよく使っているのですが、今回はその言葉を用い続けてきた理由を記事にしたいと思います。

■夜の世界はとにかく多様

現在6年間夜の世界と呼ばれるところと関わりを持ってきましたが、言い切れるのは、夜の世界は立場も、年齢も、出身地も、学歴も、そして動機もとにかく多様です。ある属性の人にとって専門の場所などではなく、誰でも足を踏み入れることができる世界なのです。多様化している世界では当然にして是非の考え方や、価値観、そして性的な観念は人それぞれです。こうした環境を生み出している要因は、派遣型風俗店(=デリヘル)が日本の性風俗産業の主流となっていることにあるのですが、この話はまた別の機会に記事にしたいと思っています。その上で、言い切れることが、性風俗産業は“性”と直接関係した世界ではないということです。以前書いた通り、広告戦略やSEO対策、市場に合わせてサービスを設計し供給するなど所謂、一般の仕事と同じ文脈で毎日進行しています。

■性風俗はピンク色の世界?

性的(=ピンク色)なストーリーは誰が発信してもそれなりに目立つものです。これにより、どこか“夜の世界≒性”という認識を持たれがちです。この記事をお読みの方にもそうした認識がお有りではないかと思います。このイメージを持たれる原因は、夜の世界について向き合い書かれた記事や企画が、長年、“大人の週刊誌”の土俵であることに起因すると考えています。メディアの表現としてピンク色の情報発信そのものは否定されることではないのですが、その結果、別の問題が生まれています。性と平気で向き合える、饒舌に語れる人と、それらを苦手とする人との間に溝を作るということとです。

日本では、性的なこと(=ピンク色)はどこか直視してはいけないものであると認識されており、語りたがらない人が多数派といえます。そうした文化が悪いと言うつもりはありません。日本ってそういう所なのです。得意な人もいれば苦手な人もいる。別に当たり前のことです。別に性をオープンに表現したり、語れる国を目指すことはありません。語る自由があれば語らぬ自由だって保証すべきです。

■ピンク色でない視点

同時に、夜の仕事でどのように働くのかもその人の自由なはずです。稼ぎたければ出勤すればいいし、嫌なら減らすのは自由です。辞める“べき”かどうかは個人の状況によります。(ごく少数ですが)明らかに搾取されていたり、性格的に夜の仕事に不向きだったりする方がそうなのですが、夜の世界にいる全員がそうだというわけではありません。所謂、普通の仕事同様、本人の意志や経済的な状態でのみ是非や向き不向きを判断するべき世界です。そうした世界を見る際、性に基づいた価値観なんかでこの多様な世界を俯瞰すると軸が曖昧で散漫になってしまいます。では他に軸はないのか?

それが時間で考えるということなのです。

価値観とは異なり、時間の流れは立場を超えてフェアな物理的な現象です。誰しも時を経れば年を取ります。年を取ることで体力的に仕事に費やす時間を確保することが困難になります。アスリート同様、立場を超えて年齢の壁が存在するのです。今、稼げていても、稼げていなくても、辞めざるを得なくなる状態に誰もがなってしまう。ここが夜の世界唯一の軸であり共通する定点なのです。そして辞めざるを得なくなった時、その方が孤立していると、頼る相手がなく、困難な状況に置かれる要因となります。今の日本は、夜の世界にいるよりも孤立していることのリスクが遥かに高いのです。

■夜の世界は過去や価値観を問われない世界

私は、6年前にサラリーマンを辞めて夜の世界に足を踏み入れたのですが、その時一番最初に驚いたことはこの世界では過去を問わない文化があるということです。風俗未経験で面接にきた方に対してもスタッフは過去を問いません。また性的な価値観を掘り起こすこともありません。彼らが聞くのは、「いつから来れるか?」「大体週どれくらい来れるか?」「どれくらい稼ぎたいか?」等の質問ばかりです。面接をしていたオーナーに理由を聞いた所、

「何事も過去に学ぶことは大切だけれど、過去に囚われ続けていても今を変えられないし、あと、いろんな人が来るから。価値観じゃなくて、今あなたに何が必要か?だけに向き合う時も必要。」

と教えてもらったことは今でもよく覚えています。

繰り返しますが、夜の世界は本当に多様な世界です。個人の性的な関心を軸に据えて向き合うと大事なことを見落とします。性というピンク色のメガネを外してもらい、透明な関心を向け続けてもらえることが大切と考えています。そのために私たちは、性ではなく時間を軸に捉えた夜の世界に関わらず他の立場でも直面する『40歳の壁』(=辞めざるを得ない瞬間がかならずある。)という課題の共有を進めていければと考えていますし、そのために夜の世界のアクを抜いた情報を発信していければ良いなと思っています。

(例えば今、一週間限定で、京都の会社とコラボTシャツの販売なども行っています。)

長くなりましたが、一連の記事のあとがきとしてお読み頂ければ幸いです。