風俗産業の広告に対する高い意識は、(是非はさておき)無視しちゃダメな件

(写真:ロイター/アフロ)

■性風俗産業で働く理由は…

みなさんは、「性風俗業界で働く女性」と聞いたときに、どんな人を思い浮かべますか?借金を抱えた会社員?それとも彼氏に騙されて貢いでいる女子大生でしょうか?貧困に対する社会の関心の高まりとリンクし、性風俗業界の女性が登場するドキュメンタリーやルポなどが一般の人たちの目にも入るようになっていますが、夜のお仕事をしている女性たちも、実は色々なタイプの人たちがいて、なぜこのお仕事を始めたかという理由も本当に様々です。(全国に30万人以上いるわけですから。)しかし共通していることもあるのです。それは、性風俗業界との接点、どうやってその仕事を見つけたか、という点です。

■騙して集めているわけではない

貧困によって行き場がなくなった子、楽をして稼ぎたい子、すぐにでも大金が必要な事情を抱えた子…

彼女たちがまずしてみることは、私たちと同じようにまずスマホで検索です。ケータイで「楽 バイト 高収入」と検索してみてください。夜のお仕事っぽい求人たくさん出てきませんか?

そのような「夜のお仕事」は(本人が希望していれば別ですが)、一般的には「最後の手段」と思われているかもしれません。嫌々性風俗業界で仕事をしなくても、貧困の女性をサポートする行政の仕組みやNPOなどの支援組織は多数あります。そのような場所で活動する支援者たちは「性風俗で仕事をする前にうちに相談にきてくれれば」と口を揃えます。しかし、相談窓口に行こうとしている女性たちを、性風俗のお店の人たちが、遮って、騙して、無理やり引き込んでいるわけではありません。

たしかに性風俗業界というのは、なんだか怪しげで危ないイメージがついています。でも現代の性風俗産業は驚くほどビジネスライクに、どうすれば事業を継続できるかを考え成立している業界です。業界にとって最も重要なことは、できるだけたくさんの女の子に選ばれること。騙す?貢がせる?そんなリスクを今の業界は取りません。

たくさんの女の子がたくさん応募してきてくれるために必要なのことは実にシンプルで、「検索に引っかかること」、そして面白そうなイメージ、楽そうなイメージ、安心できるイメージを持たせ、「クリックしてもらうこと」です。つまり一番重要なのはとにかく広告、それもスマホ向けの広告を戦略的に行い、検索などで引っかかり、女の子の目にふれることなのです。

■困ったときは誰もがまず検索するわけです

性風俗業界は求人広告にものすごくお金、労力、そして時間を使っています。だから女の子が何かで困ったとき、最初に彼女たちに検索でリーチできているのは行政でもNPOでもない、性風俗店となっているわけです。 検索の理由は、学費のためかもしれないし、望まない妊娠かもしれないし、同居している彼氏から逃げているのかもしれないし、今月のお小遣いが足りないのかもしれないし、家族の虐待から逃げようとしているのかもしれないし、なんだか居場所を求めているだけかもしれない。何にも困っていないけれど、ただ興味があるのかもしれないし、とりあえず急なお金が必要なのかもしれない。

理由はどうあれ「短い時間で稼げます」「安心ですよ」という情報がたくさん出てきたら、例えば時間があってお金に困っている女性はとりあえずクリックしてみるでしょう。「いや、そんなんのクリックなんかしないだろっ!」と思う人も多いと思いますが、とにかく広告を目につくように打てば、一定割合の人が事実それをクリックするわけです。

だから、スマホ広告の質と量、どれだけ検索に引っかかるかのSEO対策(※検索で上位にくるためのテクニック)などが必須です。そして、一度水商売や性風俗という、夜のお仕事に興味を持って女の子たちが情報サイトに訪れると、今度はお店の側は「怖いイメージ」を持たせないように、いかに働きやすいかだったり、不安に感じる部分の解消に繋がる情報を満載にしておきます。例えば、「困ったらなんでも相談できる人が身近にいる」というアピールをし、優しそうなお兄さんを広告に登場させているお店も少なくありません。(そしてその方は実際に存在しています)さらには、時期、トレンドに合わせて柔軟に広告ワードを変更もしています。(連休明けの金欠に訴えかけたり。)

これだけのお金、労力、時間をつぎ込み女の子にとにかく「来てもらう」「興味を持ってもらう」「不安を取り除く」「気分よく働いてもらう」情報発信に注力していれば、人が集まるのは当たり前のことといえます。

●性風俗店の平均月間広告予算 126万円 / 月

●内、求人用予算 60万円 / 月

共に2015年 GrowAsPeople調査 (n=36店舗)

■広告力にとにかく差がある

居場所のない女の子や貧困で困っている女の子などを支援するサービスは行政にもNPOにもたくさんあります。困った人達がそこに顔を出せば、適切な支援制度を紹介してくれるでしょうし、ソーシャルワーカーなどとも繋いでくれるでしょう。大変心強いです。でも、女の子たちはそうした存在をスルーし性風俗で働きはじめるのです。なぜなら、行政やNPOは「女の子にたくさん来てもらう」ための広告に時間、お金、労力をかけていないのですから。つまり、頼れる親族や友人も周りにおらず、学校や教師とのつながりもない女の子たちが、今すぐ身を寄せる場所が必要なとき、今すぐお金が必要なとき、行政やNPOが彼女たちの目につくところにいないのです。彼女らに本気で情報を届けるための動きが不足しているわけです。

もし行政やNPOが、風俗店と同じくらい「とりあえず行政においで」「役所に来れば、なんでも気軽に相談できるよ」「困ってるの?今すぐ助けられるよ」ということを訴求する広告とSEO 対策をやっていけば、困り事を抱えた女性達はきっと風俗店に行く前に行政やNPOにアクセスするはずです。

広告やSEOだけではありません。ただ扉を開けて待っているだけでは相談者はやってきません。支援する側が、本気で困っている人たちの受け皿として機能しようと思ったら、まず情報を届けて接点を持つ努力しなければ、そもそも困った時の選択肢として頭に浮かべてもらうことすらできないのです。

行政やNPO側には広告料戦略など改善すべき余地が山程あります。風俗業界に対し、女の子を騙しているとか、無理やり引っ張りこんでいるとか、一方的なイメージを持ち、あいつらズルいと嘆いたり、またそこで働く女の子たちに対して、どうしてそのような仕事を選ぶ前に相談窓口に行かないのかと責めたりするのではなく、支援する側はどうすれば風俗店以上に困っている人に対して自分たちの魅力をアピールできるのか、接点を持つことができるのか?などをもっと現実的に考えるべきです。

思いやモラルや優しい気持ちを有していることを自負するのでも、性風俗業界ズルいとひがむのでもなく、どこに時間、お金、労力を使うことが最適か?お金の流れは現実を示します。広告にコストをかけている業界の現実に注目し、物事を理解することで、外からの見え方や支援のあり方はきっと変わってきます。このような現実的視点が今、支援者側が備えるべきスキルであり欠けている姿勢ではないでしょうか。

初投稿の角間でした。