「セリーヌ」で経験を積んだ32歳のデザイナーによって「ボッテガ・ヴェネタ」はどう変わったか?

「ボッテガ・ヴェネタ」2019-20年秋冬ショーのフィナーレ(写真:Shutterstock/アフロ)

 2月20日から25日まで開催されたミラノ・ファッション・ウィークで、ダニエル・リー新クリエイティブ・ディレクター就任後初となる「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のファッションショーが行われた。今回発表されたのは、2019-20 年秋冬のウィメンズ&メンズ・コレクション。昨年7月に就任したリーは、先だって2019年プレ・フォール・コレクションを展示会で披露しているものの、満を持してのランウェイデビューとなった。彼は英国出身の32歳。年間売上高11億ユーロ(約1400億円)規模のビッグブランドを率いるクリエイティブ・ディレクターとしてはまだ若いが、数々の有名デザイナーを輩出するロンドンのセント・マーチンズ美術大学で学び、女性たちから高い支持を集めていたフィービー・ファイロによる「セリーヌ(CELINE)」でレディ・トゥ・ウェア部門のディレクター(※クリエイティブ・ディレクターの下、服のコレクションを監修する役職)を務めていたとあって、「ボッテガ・ヴェネタ」をどのように変えるか注目を集めていた。

自然光が差し込むショー会場(写真:筆者撮影)
自然光が差し込むショー会場(写真:筆者撮影)

 ショーの会場となったのは、センピオーネ広場にある平和の門周辺に設営された透明なテント。2月にもかかわらず春めいた天候に恵まれ自然光が降り注ぐ空間は、前任のトーマス・マイヤーが好んだブレラ国立美術学院のような重厚感のある会場とは大きく印象が異なる。そんなフレッシュさを感じさせる空間で発表されたコレクションは、リーが初めて手掛けた19年プレ・フォール・コレクションを発展させたものだ。トレンチコートやシャツ、ニット、Aラインスカート、レザーのバイカージャケットといったエッセンシャルなアイテムを揃えた19年プレ・フォールに対し、19-20年秋冬ではリーの考えるファンタジーの要素を織り交ぜ、強さや大胆さをプラス。「自由、自己表現、そしてセンシュアリティを称える」ことを掲げ、 “一人一人の個性を生かし、自己表現できる装い”を目指したという。

(写真:BOTTEGA VENETA)
(写真:BOTTEGA VENETA)

 最初に登場したのは、ブランドを代表する素材であり、センシュアリティを象徴するレザーを用いたブラックのタイトなドレス。黒でショーの幕を開けることで、自信に満ちた強い女性像を打ち出した。その後も黒をキーカラーとして、キルティングコートやシルクシャツ、バイカーパンツ、ニット、スポーティーなアウター、テーラードジャケットやトラウザーといったさまざまなアイテムに採用。そこに鮮やかオレンジのニットやケミカルなエメラルドグリーンのスカート、ミラーパーツをあしらったドレス、レオパード柄のチェスターコートなどを織り交ぜ、コントラストを描いた。同時に披露されたメンズウェアも大半が黒。テーラリングやバイカースタイル、リブニットを軸に、ウィメンズとリンクするデザインを提案した。

(写真:BOTTEGA VENETA)
(写真:BOTTEGA VENETA)

 コレクション全体を通して目を引いたのは、ブランドを象徴するレザーの編み込み技術“イントレチャート”を彷彿とさせるデザインだ。小さなレザーパーツをつないでコートやタイトスカートを作ったり、あえて不均等な幅でリボン上の生地を編み上げてテーラードアイテムを仕立てたりした他、四角いモチーフを随所に取り入れた。また、イタリアのアンティークジュエリーから着想を得たチェーンや三角形のメタルパーツなどを活用しており、ラインやディテールからはリーの造形的なアプローチが見て取れる。特にそれが顕著なのは、バッグなどのアクセサリーだ。ロゴに頼ることなく職人技を生かしたモノづくりによってラグジュアリーを追求する姿勢は変わらないが、これまでクラシックな印象が強かった「ボッテガ・ヴェネタ」のアイテムがモダンに生まれ変わった(詳しくはWWDJAPAN.COMで解説)。17年間にわたりトーマス・マイヤーが築いてきたイメージから思い切った転換を図った今シーズンは、まだシルエットなどに粗さを感じる部分もある。しかし、リーの若い感性と職人の卓越した技術がうまく化学反応を起こし、今後新たなイメージが確立されていくのが楽しみだ。

(写真:BOTTEGA VENETA)
(写真:BOTTEGA VENETA)