観る前に知っておきたい 「オーシャンズ8」の華麗なる窃盗の舞台「メットガラ」とは?

ニューヨークでのワールドプレミアに登場した「オーシャンズ8」主要キャストの8人(写真:Shutterstock/アフロ)

 映画「オーシャンズ」シリーズの最新作「オーシャンズ8」が8月10日、日本でも公開された。今作は主演のサンドラ・ブロック率いる犯罪集団が全員女性キャストということもさることながら、窃盗の舞台が実際にニューヨークのメトロポリタン美術館で毎年5月に開催される豪華絢爛なパーティー「メットガラ(MET GALA)」であるというのも見どころだ。同美術館では毎年、ファッションをテーマにした展覧会を企画しており、「メットガラ」はその幕開けを飾る一大イベント。2016年には展覧会の舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画「メットガラ ドレスをまとった美術館」も制作されたが、限られた映画館での公開だった。今回の「オーシャンズ8」ほど「メットガラ」が脚光を浴びることはなかなかないので、この機会に“世界最大のファッションの祭典”とも呼ばれるイベントを解説する。

そもそも「メットガラ」の始まりは?

 メトロポリタン美術館によると、「メットガラ」が初めて開催されたのは1948年で、同美術館の衣装研究所の資金調達を目的とした晩餐会としてスタートした。当時、招待されたゲストはチケット代50ドルで参加することができたという。そして、1972~1989年にはダイアナ・ヴリーランド=アメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」編集長(当時)が特別コンサルタントを務め、ジャクリーン・ケネディ・オナシス元大統領夫人ら著名人を共同ホストに迎えることで、社会や芸術界への影響を強めていった。

 1995年からは、映画「プラダを着た悪魔」のモデルになったと言われているアナ・ウィンター=コンデナスト アーティスティック・ディレクター兼アメリカ版「ヴォーグ」編集長が共同ホストとして、招待客の選定から演出や装飾に至るまで「メットガラ」を監督している(96年と98年は除く)。今年で彼女が同イベントに関わるのは20回目。ファッションだけでなく、映画、音楽、スポーツ、ビジネスなど世界中のさまざまな業界からゲストを招き、現在では世界有数の資金調達イベントにまで発展させたその功績は大きい。展示のテーマに合わせた華やかな(時に奇抜な)ファッションを身にまとい、カーペットの敷かれた階段を上がるリアーナやサラ・ジェシカ・パーカーの写真を見たことがある人も多いのではないだろうか。

 あくまでも招待された人しか出席できない同イベントだが、「NYタイムズ」によると今年のチケット代は1枚3万ドル、1テーブル27万5000ドルだったという。その収益は、昨年は1200万ドル、一昨年は1350万ドルと言われており、衣装研究所の手掛ける展覧会の他、作品収集や補修といった活動の大きな資金源となっている。

今年のテーマは「カトリック」

 現在、行われている展覧会は「Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination(天国のボディー:ファッションとカトリックのイマジネーション)」だ(会期は10月8日まで)。ファッションとカトリックの関係性に迫る興味深い展示で、会場にはカトリック教や宗教的なモチーフからインスピレーションを得たデザイナーの作品150点以上に加え、バチカンから貸与された教皇の衣装や冠なども並べられている。

 また、これまでには、日本を代表するデザイナーズブランド「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」を手掛ける川久保玲のクリエイションにフォーカスした「Rei Kawakubo/Comme des Garcons: Art of the In Between (川久保玲/コム デ ギャルソン:間の技)」(2017年)や、西洋のファッションにおける中国の影響を紐解いた「China: Through the Looking Glass(鏡を通して見た中国)」(2015年)なども開催されてきた。

「オーシャンズ8」は協力ブランドも超本格的

 今回オーシャンズの一味が狙うのは、アン・ハサウェイ演じる人気ハリウッド女優、ダフネ・クルーガーが身に着ける1億5000万ドル相当の「カルティエ(CARTIER)」のダイヤモンドネックレス“ジャンヌ トゥーサン”。実物は現存しないが、今作のために同ブランドがアーカイブのデザイン画を参考にして、職人が8週間で完成させたという。

 さらに、作中でキャストが着用している衣装もデザイナーズブランドの協力を得て、制作されたものだ。その華やかさは、実際の「メットガラ」にも引けを取らない。例えば、サンドラ・ブロックは、役名のデビー・オーシャンにちなみ海のモチーフの繊細な刺繍が施された「アルベルタ フェレッティ(ARBERTA FERRETTI)」の透け感のあるロングドレスをまとい、アン・ハサウェイは鮮やかなピンクが目を引く「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のケープガウンで登場。その他の主要キャストも、リアーナは「ザック ポーゼン(ZAC POSEN)」、ケイト・ブランシェットは「ジバンシィ(GIVENCHY)」(ただし、リカルド・ティッシ前アーティスティック・ディレクターによるもの)、ヘレナ・ボナム=カーターは「ドルチェ & ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」、サラ・ポールソンは「プラダ(PRADA)」、ミンディ・カリングは「ナイーム カーン(NAEEM KHAN)」、オークワフィナは「ジョナサン シンカイ(JONATHAN SIMKHAI)」と、レッドカーペットでおなじみのブランドを着用している。

 また、アナ・ウィンター編集長をはじめ、アレキサンダー・ワンやトミー・ヒルフィガー、ジジ&ベラ・ハディッド姉妹、キム・カーダシアン、ケンダル&カイリー・ジェンナー姉妹、ダコタ・ファニング、ハイディ・クルム、セリナ・ウィリアムスといった実際の「メットガラ」に参加している顔ぶれが数多くカメオ出演していることも、そのリアルさにつながっていると感じた。こういった背景を知れば、「オーシャンズ8」をより楽しむことができるのではないだろうか。