「ルイ・ヴィトン」デザイナーらが審査するLVMHのコンテストで日本人がグランプリ受賞の快挙

「ダブレット」2017-18年秋冬コレクション(写真:Shutterstock/アフロ)

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)は6月6日、同社が主催する若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的としたコンテスト「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」の2018年度グランプリに、井野将之が手掛ける「ダブレット(DOUBLET)」を選出した。14年から毎年開催されている「LVMHプライズ」は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ケンゾー(KENZO)」など傘下のブランドを率いる著名デザイナーが最終審査を行うことが最大の特徴。これまでファイナリストや特別賞に日本人が選ばれたことはあったが、グランプリ受賞は今回が初となる。世界90カ国1300組以上の応募の中からグランプリに選ばれた井野デザイナーは、賞金30万ユーロ(約3870万円)を獲得。さらに同社の専門チームからブランド運営に関する1年間の指導を受ける機会を得た。ちなみに、特別賞には韓国人デザイナーのロック・ファンによる「ロック(ROKH)」が選ばれた。

 

「ダブレット」を手掛ける井野将之とは?

井野将之「ダブレット」デザイナー (c) LVMH PRIZE
井野将之「ダブレット」デザイナー (c) LVMH PRIZE

 井野デザイナーは1979年群馬県生まれ。東京モード学園を卒業後、アパレルメーカーやベルト工場でキャリアを積む。2005年から「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」で靴・アクセサリーの企画生産を手掛けた後、12年にパタンナーの村上高士と共に「ダブレット」を設立。13年春夏コレクションでデビューした。「違和感のある日常着」をコンセプトにしたコレクションのベースとなるのは、ベーシックなストリートウェア。そこに過剰なほどに刺繍を重ねたり、見慣れたモチーフを遊んだりという、思い切った装飾やユーモア溢れるアイデアを加えているのが魅力だ。2016年には「TOKYO FASHION AWARD」にも選ばれ、東京に加え、パリでもコレクションを披露。日本国内だけでなく海外の販路を増やしてきた。現在は、ロンドンやニューヨーク、東京に店舗を構えるドーバー ストリート マーケットをはじめ、ミラノやソウルのディエチ コルソコモ、香港のレーン・クロフォード、日本ではミッドウェストやウィズム、ラブレスなどで取り扱われている。

井野デザイナーと「ダブレット」のコレクションを着用したモデル (c)LVMH PRIZE
井野デザイナーと「ダブレット」のコレクションを着用したモデル (c)LVMH PRIZE

「LVMHプライズ」の意義

 「LVMHプライズ」は2013年11月、ベルナール・アルノーLVMH会長兼最高経営責任者(CEO)の長女であるディルフィーヌ・アルノー「ルイ・ヴィトン」エグゼクティブ・バイスプレジデントが中心となり創設。その意義について、「私たちが目指しているのは、国際的なレベルでファッション業界のバイタリティーとクリエイティビティーを育むこと。業界のリーダーとして、私たちには若き才能を見出し、彼らの成長を手助けする責任があります」と語っている。一方、LVMHは“将来、グループのブランドを率いることができる才能にいち早く目を付けたいのでは”という見方もある。実際、第一線で活躍する業界人やデザイナーが審査しているだけあって、ファイナリストは毎年実力派揃い。誰がグランプリに選ばれてもおかしくない。もちろん、その中にはデザイナーとしてだけでなく、イメージ戦略や店舗空間の監修といったアーティスティック・ディレクターやクリエイティブ・ディレクターに必要な素質を持っている者も多い。事実、15年度にファイナリストであるヴァージル・アブロー「オフ-ホワイト c/oヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」クリエイティブ・ディレクターは今年3月、「ルイ・ヴィトン」のメンズ・アーティスティック・ディレクターに抜擢された。今後も受賞者やファイナリストに白羽の矢が立つことは間違いないだろう。

世界での日本人デザイナーの活躍

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「サカイ(SACAI)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」など日本のブランドの世界での評価は高い。しかし、日本人がラグジュアリー・ブランドやデザイナーズブランドのクリエイティブ面のトップに就任することは極めて少ないのが現状だ。クリエイティブチームを率いる役職である以上、コミュニケーション能力は欠かせないが、日本人にとってはそこに少なからず言語の壁が立ちはだかっていると言えるだろう。また、プレゼンテーションや自分の意見を表現することが苦手なデザイナーも多い。そのため、これから世界で活躍を目指すデザイナーは、そのハードルを越えていかなければならないだろう。今後、より多くの日本ブランドが世界で認められると共に、日本人デザイナーが世界的なブランドを手掛ける日が訪れることを期待したい。