見慣れたものを高級品に変える「バレンシアガ」 マーケットバッグ、IKEAバッグに続くアイデアの源は?

マーケットバッグからヒントを得て、ラムレザーで作られた“バザール”(写真:IMAXtree/アフロ)

 オートクチュールをルーツに持つフランスのラグジュアリーブランド「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、2016年にジョージア(旧グルジア)出身のデムナ・ヴァザリア=アーティスティック・ディレクターが就任して以来、大きな変化を遂げている。彼が得意とするのは、見慣れた大衆的なものやスタンダードなものを独創的なアレンジでラグジュアリーなアイテムに作り変えること。そのアプローチは、彼が仲間と共に手掛ける気鋭ブランド「ヴェトモン(VETEMENTS)」にも見られるものだ。

 中でも象徴的なのは、バッグをはじめとするアクセサリー類のアイデアだ。「実用性とクチュールの出合い」という概念を基にデザインされるアイテムは、日常生活で見かけるようなものがベースになっている。例えば、デビューを飾った16-17年秋冬ウィメンズ・コレクションで発表したのは、海外のマーケットや1コインショップなどで売っている大きなマーケットバッグ(レジャーバッグやランドリーバッグなどと呼ばれることもある)からインスピレーションを得た“バザール”。その3カ月後に行われた17年春夏メンズ・コレクションのショーでは、「イケア(IKEA)」のショッピングバッグとそっくりなレザーバッグ“キャリー ショッパー”を披露した。

 そして、来年2月頃に店頭に並ぶ18年春夏メンズ・コレクションで提案するのは、ドイツのスーパー「エデカ(EDEKA)」などの有料のビニール袋をアレンジしたバッグだ。

2月に発売予定の“スーパーマーケット ショッパー”。「バレンシアガ」公式オンラインストア(www.balenciaga.com)より
2月に発売予定の“スーパーマーケット ショッパー”。「バレンシアガ」公式オンラインストア(www.balenciaga.com)より
「バレンシアガ」のアイデア源になった背景が黄色のビニール袋は店頭になかったが、同様のデザインを採用した布製のエコバッグを発見。値段は1ユーロ
「バレンシアガ」のアイデア源になった背景が黄色のビニール袋は店頭になかったが、同様のデザインを採用した布製のエコバッグを発見。値段は1ユーロ

もともと「Wir Lieben Lebensmittel.(私たちは食料品が大好きです。の意)」というコーポレートスローガンが書かれている部分が「The Power of Dreams.」に変わり、「エデカ」の「E」のロゴは、2つの「B」を合わせた「バレンシアガ」のロゴになっている。

  

 これまでもそういった日常的な要素をデザインに取り入れる例はあったが、この規模のブランドがここまで元ネタが分かる形で引用するというのは珍しい。むしろヴァザリアはそれを面白がっているように思う。そして、ショーピース(ファッションショーでコレクションのコンセプトを表現するために制作されるアイテム。実際には販売されないものもある)としてではなく、きちんと商品化し、ブランドの新しいイメージを表現するアイテムとして店頭でも大々的に打ち出しているのだから驚きだ。

実際、売れているのか?

 イメージづくりや話題喚起という点では面白いが、こういった商品がビジネスの成功に直結しているわけではない。実際のところ、海外のファッション・ウィーク期間中には“バザール”をよく目にするが、普段見かけることはあまりなく、コアなファッション好きにしか届いていないように見受けられる。着想源自体は100円するかしないものが、「バレンシアガ」の商品になるとラムレザーや職人技を用いているとはいえ10万~30万円もするのだから、当たり前といえば当たり前だ。

 その一方で、ロゴ入りのキャップやスニーカーは若者を中心に入荷当日に列を作るほどの熱狂的な人気を博しているし、さらに、今年のヒットアイテム“ちい財布”の火付け役でもあるコンパクトな3つ折り財布やロゴ入りのキャンバストートなど、よりマス層にも支持される売れ筋アイテムもきちんと生み出しているのは興味深い。現実問題、ビジネスが安定しなければ面白いことをやるのは難しいが、親会社のケリングの決算報告書を見ても、ブランドの業績はヴァザリアの就任前と比べて伸びている。今後もしばらく「バレンシアガ」から目が離せそうにない。