「インスタ映え」が引き起こした感覚の麻痺

「ロクサンダ」2018年春夏コレクションのフィナーレ(写真:ロイター/アフロ)

 「インスタ映え」が今年のユーキャン新語・流行語大賞に選ばれた。ファッション業界でも昨年から「インスタ映え」はヒットを生み出す一つの要因になっている。その代表例は、有名ブランドのロゴアイテムや「ザラ(ZARA)」の刺繍入りシャツ、アンティーク風のパーツを使った大ぶりなイヤリングなど。分かりやすい“オシャレ感”やパッと見の“キャッチーさ”が「いいね!」につながるだけでなく、見た人の購買欲を掻き立てて波及しているようだ。しかし、「インスタ映え」を重視し過ぎた食べ物やファッションには、しばしば違和感を覚える。

 「インスタ映え」は、確かに若者の消費を促すきっかけになった。特に手頃な価格のものであれば、その効果は一層大きいだろう。ただ、それは一時的なものに過ぎない。インスタグラムに投稿するという行為がゴールになっているからだ。もちろん“見映え”も重要な要素だが、そこを意識し過ぎると、食べ物であれば“味”や“香り”、ファッションであれば“素材の質感”や“細部の仕上げ”といった大切なことがないがしろにされ、結果、もともと持っている他の感覚を鈍らせてしまうように思う。それに、いくら「インスタ映え」するものであっても、複合的な価値がなければ本当の意味での満足感は得られない。

 そんな中、9月から10月にかけて開催された2018年春夏ファッションウィークでは“素朴な美しさ”がトレンドに浮上した。決して派手ではないが、天然素材の風合いや人の温もりを感じるような手仕事を生かし、それこそ着る人や持つ人にしか分からない価値を表現するブランドが目を引いた。それを象徴するのが、ロンドンを拠点にする「ロクサンダ(ROKSANDA)」だ。「作り込まれた完璧なイメージが溢れている現代だからこそ、全てを手作業で仕上げるような、ある意味不完全なものに惹かれた」とロクサンダ・イリンチック=デザイナーが語るように、現代人は“作られた”イメージを見過ぎて感覚が麻痺してしまっているのかもしれない。写真や動画を軸にしたインスタグラムの普及が、それに拍車をかけたのは間違い無いだろう。忘れかけている感覚を取り戻し、小さな画面上だけでは分からない価値にも目を向けたいものだ。