5月17日、週刊ダイヤモンドがスクープとして報じたパナソニックの早期退職募集のニュースが大きな波紋を呼んでいます。

【参考リンク】パナソニック「退職金4000万円上乗せ」で50歳標的の壮絶リストラ【スクープ】

早期退職募集のニュースは珍しいものではありませんが「事業は人なり」をモットーに、何より人材育成と雇用維持を重視した松下幸之助のパナソニックが、長年にわたり育成してきたはずの50代をターゲットにリストラを手掛けることが注目されているようです。

また4000万円という高額な割増退職金額も注目を集める理由でしょう。通常、大手企業が早期退職を募集する場合の割増退職金の相場は2年程度が相場ですから、おおざっぱに言っても相場の2倍以上と言っていいでしょう。

割増退職金の額は「会社が対象となる従業員にやめてほしいと思っている本気度」に比例します。「従業員が宝だ」と言い続けてきたパナソニックの本気のリストラに時代の趨勢を感じたビジネスパーソンも多いことでしょう。

なにがパナソニックを突き動かしたのか

では、なぜこのタイミングでパナソニックは50代をターゲットに早期退職募集を打ち出したのでしょうか。理由は今年4月に施行された高年齢者雇用安定法の改正です。年金支給開始年齢の引き上げを視野に、企業に従業員の70歳までの雇用努力を義務付けるものであり、過去の65歳雇用等を考えればいずれ「70歳までの雇用の義務付け」は容易に想像できます。

日本型雇用では、経営幹部候補の選抜は40歳前後で終了し、そこで出世コースから外れた過半数の人間はその後のキャリアを“消化試合”として勤め上げることが確定します。定年が55歳だった90年代なら許容範囲でしょうが、70歳まで職場で消化試合をされることは企業からすればとうてい容認できないということでしょう。

失われた30年の末に我々が手にしたリアル

今年になって、ここ30年間に世界で日本だけ賃金が上がっていない等のニュースをきっかけに「日本の失われた30年」が話題になることが増えたように思います。

理由としては「社会が現役世代向けの社会保障機能を企業に丸投げし、労使が雇用の維持を最優先して投資や賃上げを抑制してきた」点が大きいのですが、そういわれてもピンとこない人も少なくないでしょう。

そういう人は以下のようにイメージしてみると理解しやすいかもしれません。

バブル期の88~91年、日本では新卒採用が空前の売り手市場となり、電機各社は例年の2倍以上となる千人近い新卒採用を行いました。バブル崩壊後は採りすぎたことに気づきますが、終身雇用では解雇はできませんから、各社とも(研究職以外の)新卒採用見送り等で一気に採用枠を減らしました。結果、誕生したのが就職氷河期世代です。

終身雇用制度の建前上は、そうまでして守った人材は年功を積んで価値を増し、50代ともなれば組織をけん引する戦力となるはずでした。でも現実は「4000万円出すので頼むから辞めてほしい」と会社に懇願される人材を多数輩出してしまったわけです。

「氷河期世代を生み出し、第二のベビーブーム世代を育成することに失敗して日本が長期衰退コースに入ることを確定させたかわりに、4000万円払ってでもやめてほしい人材しか育成できませんでした」という現実こそ、失われた30年の本質でしょう。