第四次安倍内閣で五輪・パラリンピック担当相にくわえサイバーセキュリティ担当相も兼務する桜田大臣ですが、国会質疑において「普段パソコンを使っていない」と発言し波紋を呼んでいます。

本発言は各国のメディアも取り上げ「本当に大臣の資質があるのか」と疑問をなげかける論調が目立ちます。

【参考リンク】「世界で有名になった」桜田義孝大臣の止まらない“笑撃答弁”

なぜ氏は未経験の分野で抜擢されたのでしょうか。そして、それで本当に業務が回るものなのでしょうか。良い機会なのでまとめておきましょう。

日本と他国ではポストの意味合いが異なる

職務内容をベースに雇用契約を結び、賃金を決定するような国では、当然ながらポストにつく人にはそれにふさわしい専門性が求められます。この場合、年齢はあまり重要ではなく、ポスト=序列というわけでもありません。

今話題のカルロス・ゴーン氏が大学卒業後にキャリアの最初を工場長からスタートさせたケースが典型です。

一方、年功序列ベースの我が国の場合は、職務内容は特に契約で定められておらず、臨機応変、会社都合でいかようにも働かされます。そしてその中で勤続年数に応じて昇格し、部課長や事業部長、工場長といったポストについていくことになります。

そのため高位の管理職は大企業であれば50代がほぼ独占しています。彼らが携わっている事業の最新技術やトレンドに必ずしも精通しているわけではありません。つい先日、経団連会長が執務室に初めてパソコンを設置したと言う話が話題となりましたが、桜田問題のようなケースは大企業では別段珍しい話ではありません。

素人がトップでも仕事が回るワケ

ではなぜ組織の責任者が素人であっても仕事が回るのでしょうか。理由は日本型組織の持つ高い現場力にあります。

たとえば担当レベルで企画書を作成し、課長に上げて調整したうえで今度は部長に提出する。そうしたプロセスを繰り返せば、最終決定権者の手元に上がってくる頃にはほぼ仕上がった状態であり、後はハンコを押すだけで十分というわけです。

昔から“すり合わせ”と呼ばれる日本式の仕事の進め方ですが、大臣の場合は優秀な官僚機構が現場から仕上げてくるわけですから、調整の必要すらない完璧な状態と言っていいでしょう。これが素人で大臣が務まる仕組みです。

中途半端にわかっている人間がトップダウンを行うリスクも

とはいえ、すり合わせ型の現場力にはデメリットもあります。意思決定のスピードがとても遅く、責任の所在もあいまいな点です。筆者自身、そうした仕事の進め方は早晩見直すべきだと考えます。

ただし、そうした雇用慣習が既存システムの中に根深く存在する以上、現状のままトップだけを専門性のある人材にすげかえても何も現状は変わらないでしょう。むしろ「中途半端にわかった気になっている人間が暴走するリスク」も存在します。

東京工業大学理学部応用物理学科卒の菅総理は、東電原発事故対応に際し「自分は原子力がわかっているから」という理由でトップダウンで現場に介入し、冷却作業見直し指示などで現場を大混乱に陥れた挙句、超法規的な原発停止命令により現在も国民に年数兆円に上るエネルギーコストを負担させ続けています。

数十年も昔に学部でかじっただけの人間が「自分は文系の官僚よりわかっているから」と思い込んだ挙句暴走し、現在に至るまで国民に負担を強いているわけです。

トップに専門性を求めるのは、日本型組織自体を抜本的に見直してからで十分だというのが筆者のスタンスです。