【NHL】スタンレーカップファイナル第1戦! 「見過ごせないプレー」がNHLを進化させる!?
NHLの王者を決める「スタンレーカップファイナル(SCF)」が昨夜(現地時間)から始まりました!
▼第1戦はボストンが先勝!
今季のSCFは、イースタン カンファレンスを制したボストン ブルーインズと、ウエスタン カンファレンスの覇者セントルイス ブルースの顔合わせとなりました。
昨夜(現地時間)ボストンのTDガーデンで行われた第1戦は、地元ファンからの大声援を受けたボストンが4-2のスコアで先勝。
対してセントルイスは、過去にSCFへ3回勝ち進みながら、全てスウィープ負け(=1つも勝てずに敗退)を喫したチームの歴史に、ピリオドを打つことができず、黒星スタートとなってしまいました。
▼毎年恒例のコミッショナー会見
世界各国から多くのメディアがやってくるSCFの前日には、毎年恒例となっているゲーリー・ベッドマン コミッショナー(66歳)の会見が行われました。
会見ではプレーヤーとパックの動きを可視化するトラッキングシステムを、早ければ来季から導入する準備を進めていることや、北京オリンピックへのNHL選手の出場可否決定のタイムリミットが、(オリンピックのアイスホッケー競技を統括する)国際アイスホッケー連盟から示されていないことなどが、明らかになったのに加え、「コーチズチャレンジの対象となるプレーの拡大を検討する」との指針が発表されました。
▼コーチズチャレンジとは?
3季前から導入されたコーチズチャレンジは、相手チームの得点に至る前に、オフサイドか、GKヘのインターフェアランスの可能性があったと思われる時、得点を許したチームのコーチが「チャレンジ権」を行使。(=1試合に一度使えるタイムアウトが残っていることが前提)
ビデオレビューを要求することができるというもので、日本のスポーツファンの方には、プロ野球の「リクエスト」と同様のルールだと紹介すれば、お分かりになるかと思います。
▼コミッショナーは消極的ながら・・・
「全てを見直してしまうと、ゲームが計り知れないほどの影響を受けてしまうだろう」と消極的ながら、今季のプレーオフで見過ごせないプレーが起こってしまっただけに、ベッドマン コミッショナーも、コーチズチャレンジの質問に触れないわけには、いかなかったようです。
では、起こってしまった「見過ごせないプレー」を振り返ってみましょう。
まずはじめに状況を紹介すると、白のジャージを着たサンノゼの選手が、浮いていたパックを手で叩き落としました。
そのパックが味方へわたり、画面手前にいたサンノゼのエリック・カールソン(白#65)がシュート!
するとパックがゴールに入り得点!! となったのです。
▼本来ならば「ハンドパス」
アイスホッケーのルールでは、手を使って扱ったパックを味方の選手が触ると「ハンドパス」となり、(ペナルティではありませんが)レフェリーやラインズマンのホイッスルによって、プレーが止まります。(手でパックを扱ったチームではなく、相手チームが最初にパックに触ればプレー続行)
しかし、ご覧いただいたプレーでは、ハンドパスをしてしまったサンノゼの選手が、先にパスを受けてパックに触ったのは明らかでした。ところが二人のレフェリーと、二人のラインズマンは、揃って見逃してしまい、誰もホイッスルを吹きませんでした。
レアケースとは言え、スタンレーカップを争う注目度の高い試合だったことも手伝って、来季以降はご覧いただいたシーンも含め「コーチズチャレンジ」の対象となるプレーの範囲が、拡大していく可能性が予想されます。
▼アジアリーグでは「ソン・ドンファンルール」が!
一方、日本のトップチームをはじめ、韓国とロシア極東地区のチームが加盟している「アジアリーグ」でも、試合中のプレーから新たな規定が生まれたのを、ご存知ですか?
その発端となったのは、日本以外のチームで、アジアリーグに唯一創設時から加盟していたアニャンハルラ(韓国・加盟当初はハルラウィニア)に在籍し、得点王にも輝いた ソン・ドンファン(FW・既に引退)。
シーズン終了後に、韓国の成人男子に課せられる兵役任務へ就くことを決めて臨んだ13季前のプレーオフ・セミファイナルで、コクド(当時)と対戦。
2点のリードを許したハルラは、ゴール前からソン・ドンファンが鋭いシュート!
この年の得点王に輝いたポイントゲッターのスティックから放たれたパックは、コクドのゴールネットを、突き抜けていったようにも見えました。しかし、ジャッジは「ノーゴール」。
兵役に就く前の最後のシーズンに全力を注いでいたソン・ドンファンは、最後まで食い下がりましたが、判定は覆りませんでした・・・。
▼新たな設備が導入される
この試合でスーパーバイザーを務めていた清野勝(せいのまさる・元男子日本代表監督、長野オリンピック男子コーチ)氏は、海外遠征に赴くことが多く、各国のアリーナも熟知されていたことから、試合後の会見で「せめてプレーオフの試合は、諸外国のリーグのようにビデオレビューシステムを導入できるよう、尽力したい」との私案を披露。
このような経緯を経て、翌年からアジアリーグでも、プレーオフだけは、ビデオサポートシステム(=簡易版のビデオジャッジシステム)を導入。「ソン・ドンファン ルール」の採用だと言っても過言ではないでしょう。
▼ホッケーは進化を遂げていく
このように紹介していくと、コーチズチャレンジをはじめ、多くのルール変更は、試合中に起こった思わぬプレーから生まれたもの。
ルールに泣かされ、悔しさを味わった選手が現れるたびに、ホッケーは進化を遂げていくのかもしれません。