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【NHL】ドラフト1位の日系人ヤマモト お試し期間が終わったけれど、今季は”お墨付き”をもらう!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
カイラー・ヤマモト(Courtesy : @edmontonjournal)

 今月3日(現地時間)に開幕したNHLのレギュラーシーズンは、3週間が過ぎました。

▼大きな決断の時!

 この時期は各チームのGM(ゼネラル マネージャー)が、大きな決断を下さなくてはなりません。

 それは「ルーキー(資格のある選手)の処遇」です。

 各チームのHC(ヘッドコーチ)は、キャンプやプレシーズンゲームで活躍したルーキーを開幕ロースターに抜擢し、新戦力の活躍に期待します。

 しかし、どんなにプレシーズンゲームで大活躍しても、いざ本番となると話は別。

 相手チームにも主力選手が揃うとあって、プレシーズンゲームの活躍が影を潜めてしまうルーキーも少なくありません。

 そのためNHLは、各チームに、''ルーキーのお試し期間''を設けているのです。

▼ルーキーのお試し期間とは?

 昨季も当サイトで紹介しましたが、一例を挙げると、18才で契約したルーキーに対しては、各チームが3季目まで「エントリーレベル契約」を結ぶことができます。

 分かりやすく言い換えると、正社員で採用する前の試用期間に相当し、チーム側が大きなリスクを背負わないようにするのが目的。

 エントリーレベル契約を結んだ年の9月15日時点で、「18歳または19歳の上、年間10試合(レギュラーシーズン&プレーオフ)以内の出場」であれば、同様の契約を翌年も継続することができます。

 ヤマモトのように18歳で契約を結んだ選手は、最長で3季までエントリーレベル契約のまま、NHLでもプレーを続けることが可能です。

▼GMにも!若手選手にも!大きなプラス!!

 このルールの利点は、限られたサラリーキャップ(チーム総年俸上限)の中で、試合に出場できる選手が増えること。

 中心選手と比べてサラリーの低い選手が戦力になれば、サラリーキャップを心配することなく、高額年俸のスター選手を起用できるため、チーム全体で見れば大きなプラスに!

 それだけに、エントリーレベル契約で活躍するレギュラー選手が現れれば、チームの大きなプラスになるのです。

 逆に選手の立場から見れば、年俸の低いプレーヤーは、サラリーキャップとの兼ね合いを受けることが少ないことから、NHLへ昇格する機会が巡ってくる可能性が高まるというように、GMにも、若手選手にもプラスとなります。

▼”お試し期間”のルーキーシーズン

 昨年6月にドラフト指名を受けたヤマモトが、「9試合」に出場した段階で、所属していたジュニアリーグのチーム(スポケーン チーフス)へ降格となったのも、この規定によるものでした。

 昨季のエドモントンは低迷してしまった上、ジュニアリーグに戻ったヤマモトもスランプに苦しんだ時期もあったため、再昇格の声はかからず、ルーキーシーズンを終えました。

▼ホーム開幕戦で初ゴール!

 ルーキーシーズンの悔しさをバネに奮起したヤマモトは、今季も開幕ロースター入りを果たしただけでなく、今月18日のホームアリーナでの開幕戦で、NHL初得点をマーク! 

 地元ファンを沸かせた上、メディアが選出するファーストスター(=最も活躍した選手)に選ばれました!!

▼ヘッドコーチから”お墨付き”

 「力強いプレーを見せてくれている。昨季より大きく改善しているし、自信を持ってプレーしている」と、開幕前からヤマモトの成長を認めていた トッド・マクレラン ヘッドコーチは、初ゴールを決めたヤマモトを、「チームの大きな戦力として考えている」と評価。

 その言葉を示すかのように、次の試合で、一昨季のハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)に輝いたコナー・マクデイビッド(FW・21才)と同じライン(FWの選手は3人1組のラインを構成して試合に臨む)に抜擢しました。

▼身長171センチのポイントゲッターに負けるな!!

 指揮官からの”お墨付き”をもらっただけに、今季のヤマモトは戦力として計算されているだけに、お試し期間が終了となるのは間違いありません。

 

 ただ、地元ファンの中には、「身長173センチのヤマモトが、サイズの大きい選手が揃う相手チームの主力選手を相手にした時、これまでのような働きができるのか?」と、危惧する声も出ている模様。

 しかし、他のチームを見渡せば、シカゴ ブラックホークスの アレックス・デブリンケット(FW・20才)のように、身長171センチながらポイントゲッターとして大暴れしている選手も!

 (一つ年上ながら)同じく昨季にデビューすると、いきなり50ポイントを上回る成績(28ゴール+24アシスト)を残した”柴犬好きのNHLプレーヤー” デブリンケットに負けじと、日系人・ヤマモトの飛躍が期待されます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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