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【KHL】低迷が続く中国チームの救世主は、日本人初のNHLプレーヤーと守護神の座を争った男

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
バリー・ブラスト(Courtesy@NTofIceHockey)

 先月1日(現地時間)に開幕したKHL(コンチネンタル ホッケーリーグ)のレギュラーシーズンは、中盤戦に入りました。

 筆者の当サイトで前回配信した記事(今月16日付)で、20歳の守護神の大活躍を紹介したように、KHLに限らずアイスホッケーの試合では、GKの働きが勝敗の行方を大きく左右するのは明らかです。

 そこで今回はGKの話題を紹介しましょう。

▼中国チームがカナダ出身のGKと契約

 7か国から25チームが加盟しているKHLの中で、唯一中国から参戦している クンルン レッドスターは、新たな選手と契約を結びました。

 カナダ(マニトバ州)出身のGK バリー・ブラスト(35才・タイトル写真)です。

▼課題は失点の多さ

 2季前にKHLに加盟したクンルンは、初年度(2016-17シーズン)こそプレーオフに勝ち進みましたが、昨季はレギュラーシーズン敗退に終わったのに続いて、今季も波に乗れずにいます。

 チームの課題は、何と言っても失点の多さ。

 今季のクンルンは、昨夜の試合を終えた時点で、イースタンカンファレンスの8位と、プレーオフ進出圏内(東西両カンファレンスの上位8チームずつ)をキープしていますが、白星より黒星の方が多く、得失点差も「マイナス9」。

 1位から7位のチームは全て総得点が総失点を上回っているのに対し、クンルンは失点の方が上回り、苦戦を強いられる試合も目立つことから、新たなGKの獲得に動いた模様です。

▼身長188cm体重103kgの大型GK

 白羽の矢を立てられたブラストは、昨季はスイスのトップリーグでプレーをしていましたが、一昨季まで4季にわたってKHLのチームでプレーをしていたGK。

 最大の武器は、身長188cm 体重103kg というサイズの大きさ! 

 下の写真は、カナダ代表の一員として国際大会に出場した際のブラスト(左)ですが、、、

カナダ代表のチームメイトと並ぶバリー・ブラスト(左・Courtesy@mjhlhockey)
カナダ代表のチームメイトと並ぶバリー・ブラスト(左・Courtesy@mjhlhockey)

 プレーヤー(FW&DF)よりもGKの防具が大きいことを差し引いても、ブラストの”デカさ”が、お分かりになるのでは?

 

 自らの身体で相手のシュートをカバーできるエリアが広いことは、GKにとって大きなアドバンテージになるのは明らかです。

▼日本人と守護神の座を争った男

 そのブラストと、かつて守護神の座を争ったGKがいます。

 福藤豊(現栃木日光アイスバックスGK・36才)です。

日本人初のNHLプレーヤー福藤豊(Photo:Jiro Kato)
日本人初のNHLプレーヤー福藤豊(Photo:Jiro Kato)

 2004年6月のNHLドラフトで、三浦浩幸(元コクドDF)に続いて、日本人では二人目となる指名(ロサンゼルスキングス8巡目。全体238番目)を受けた福藤は、(三浦は契約に至らなかったため)2007年1月13日の試合で初出場を果たし、日本人初のNHLプレーヤーとなりました。

 福藤がNHLデビューを飾った年(2006-2007シーズン)のロサンゼルスは、なかなかメインGKが決まらず、レギュラーシーズンだけで5人のGKを起用。

 勝敗を決する大事なポジションが固まらなかったこともあって、ロサンゼルスは全30チーム(当時)中、28位と低迷。

 そんなチーム事情もあって、実績にこだわらない起用が増え、福藤のNHLデビューへの追い風になったのです。

 この年の福藤はデビュー戦を含めて4試合。一方のブラストは11試合に出場しました。

▼ヨーロッパやアジアにもNHLの影響力が!?

 話を再びKHLに戻すと、クンルンの存在は大きいと言えるでしょう。

 加盟チームのホームタウンの規模などが大きく異なることから、近年はKHLが襟を正し拡大路線から一転、参加チーム数の見直しなどを進めてきました。

 逆にNHLは、今こそが好機と見て、「チャイナゲームス(=中国で開催するプレシーズンゲーム)」を開催するようになったり、近年のうちに中国での公式戦(レギュラーシーズンゲーム)を実施する方針を発表。

 さらには、ヨーロッパでの公式戦も昨季から再開し、北米に限らず、ヨーロッパやアジアまでも、NHLの影響力を強めていこうと目ろんでいるのは明らかです

▼クンルンは大きな存在に!

 このような背景がある中で、クンルンが大きな存在となっているのは、中国とロシアのつながり。

 2022年の「北京オリンピック」だけに限らず、その後も含め、近年はロシアの指導者が中国へ派遣され、男女のジュニア世代の強化を担うことが増えているとのこと。

 その象徴とも言えるシーンが ↓ こちら!

 6月には、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と、中国の習近平国家主席が、”アイスホッケー外交”を行い、各国のメディアに報じられました。

 このような両国首脳の関係と、影響力を強めていくNHLの思惑が絡み合う中で、1204日後に開幕する「北京オリンピック」の男子アイスホッケーは、二大会ぶりに「ドリームチーム vs ドリームチーム」の真剣勝負が見られるのか !?

 それとも、今年2月の「ピョンチャン(平昌)オリンピック」のように、NHL選手不在の戦いとなってしまうのでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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