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【アイスホッケー】日本にもNHLプレーヤーがやってきた! アジアリーグプレビュー《後編》

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
王子イーグルスでプレーするショーン・モリソン(Photo:Jiro Kato)

【アイスホッケー】アジアにNHLプレーヤーがやってきた! アジアリーグプレビュー≪前編≫ は、こちらからご覧ください。

▼日本にも元NHL選手がやってきた!

 前編で紹介した韓国のチームに限らず、日本でも王子イーグルスが、元NHLプレーヤーの ショーン・モリソン(DF・35歳/タイトル写真/アジアリーグでの登録名はシェオン・モリソン)と契約を結びました。

 

 バンクーバー(カナダ)生まれのモリソンは、2001年のNHLドラフトで1巡目(全体19位)指名という高い評価を受けて、ボストン ブルーインズと契約。

 翌年11月に19歳でデビューを飾り、「ボストンの中心DFになる」と期待する声も聞かれました。

 しかし、レギュラーシーズン終盤に、プレーオフへ向けて戦力アップを狙ったボストンが、抜群の攻撃力を誇り、ロシアのオリンピック代表でも活躍していたセルゲイ・ゴンチャー(元ダラス スターズ DF)の獲得を画策。

 モリソンはトレード相手として、ワシントンへ移ったのです。

▼出場機会が増えた!

 モリソンにとって、このトレードが大きな転機となりました。

 当時のワシントンは低迷が続いていたため、若手にもチャンスが与えられ、モリソンはトップ4のDF(=NHLチームのDFは1試合6人の登録が標準で、そのうち5番目、6番目の選手は出場時間が限られることが多い)にも抜擢される試合もあり、出場機会が増えていくことで、実戦を通じてレベルアップした選手です。

▼年俸も増えた!

 労使交渉が決裂しオーナー側のロックアウト(施設封鎖)によって、1試合も行われなかったシーズンが明けた翌年(2005-2006シーズン)からは、不動のレギュラーとして活躍。

 チームもアレックス・オベチキン(FW・32歳)や、ニクラス・バックストローム(FW・30歳)に、マイク・グリーン(DF・32歳/現デトロイト レッドウィングス)らが台頭し、プレーオフへ毎年勝ち進むようになりました。

 モリソン自身も不動のレギュラーとなったことから、前述したロックアウトが明けた翌年は、「年俸90万USドル」で2年契約を結んだのが、FA権を取得して契約を更新した際には、単年契約ながら「年俸275万USドル(およそ2億9600万円=当時のレート)」と3倍以上もアップしたのです!

▼ワシントンからバッファロー経由ヨーロッパへ

 その後、若手選手の成長や、新たな選手とFA契約を結ぶなどして、ワシントンでの出場機会が少なくなったモリソンは、バッファロー セイバーズへFA移籍。さらに、KHLやフィンランドのチームでプレーをしてきましたが、今季はアジアをステージにして戦います。

 日本代表でのプレー歴がある日本人DFが数多く在籍しているイーグルスで、どのような働きを見せるでしょうか。

▼レギュラーシーズンのフォーマットが変わる

 NHLでプレーしていた選手の加入だけでなく、もう一つ見逃せないポイントは、「レギュラーシーズンのフォーマットの変更」です。

 昨季までは、全てのチームと同じ試合数を戦う「総当たり方式」で行われていましたが、今季から改まり、「日本のチーム vs 日本のチーム」「大陸(韓国とロシア)のチーム vs 大陸のチーム」「6試合」。 

 それ以外は「4試合」ずつ戦う全34試合のフォーマットに変更。

 総当たり方式でなくなるのは、3季にわたってダービーマッチ制度を採用して以来、11季ぶりとなります。

▼日本のチーム vs 大陸のチーム

 対戦回数は異なるものの、ディビジョン内の順位を問わず、各チームのポイント(勝点)によって、レギュラーシーズンの順位を決めますが、興味深いのは「日本のチーム vs 大陸のチーム」の対戦

 既に解散したチャイナ ドラゴンを除き、レギュラーシーズンでの「日本のチーム vs 大陸のチーム」の戦績を振り返ると、

【一昨季】→日本のチーム:51勝  大陸のチーム:45勝

だったのに対して、

【昨季】→日本のチーム:30勝  大陸のチーム:34勝

となっています。

▼日本のチームは巻き返せるか!?

 この数字を見ると、拮抗しているように思う方もいらっしゃるでしょうが、日本のチームが勝ち越した一昨季は、新規加盟を果たしたキラーホエールズが、創設初年度で戦力を整えきれないうちに開幕を迎え、日本のチームとの対戦で「2勝22敗」と大きく負け越したのが影響したもの。

 そのキラーホエールズも、昨季は7勝9敗と日本のチーム相手と互角の戦いを繰り広げ、既に配信した「前編」で紹介したとおり、今季は攻撃力アップが見込まれるだけに、さらに大陸のチームが勢いを増しそうな気配も漂います。

 昨季はリーグ創設以来、初めてとなる3連覇をハルラが達成し、アジアのトップチームの座を揺るぎないものに!

 さらには、国際アイスホッケー連盟が定める世界ランキング(昨季の世界選手権終了時点)でも、「ピョンチャン(平昌)オリンピック」へ向けた強化が表れ、韓国は「16位」だったのに対し、日本は「23位」と水をあけられてしまいました。

 トップチームのレベルアップが、日本代表の強化にもつながるのは明らかなだけに、アジアリーグで日本のチームが巻き返せるか!? 大いに注目されます。

 尚、試合のスケジュールや試合会場とゲームチケットなどの情報は、アジアリーグのオフィシャルサイトをご覧ください。

 

 また国内の試合会場などでは、「アジアリーグ・オフィシャルプログラム(日本語版)」が販売されます(予定)。

 各チームのロースターや、注目チームや選手などの記事が掲載されていますので、ご観戦の際は、ぜひお買い求めください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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