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【KHL】身長170センチの不遇の男がMVP! 来季からはスーパースターのKHL離れが続出!?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
AKバルスカザニが3度目の優勝(Courtesy:@khl)

 旧ソビエト時代から続いていた「スーパーリーグ」を発展解消する形で、2008年9月2日(現地時間)に最初の試合が行われたKHL(コンチネンタルホッケーリーグ)」は、昨夜のガガーリンカップ ファイナル第5戦で、AKバルス カザニが、1-0 のスコアチェスカ モスクワを下し優勝!  

 創設10年目のメモリアルシーズンの王座に輝き、8季ぶり3度目のガガーリンカップを手にしました。

8季ぶり3度目の王座に輝いたAKバルス カザニ(Courtesy:@khl)
8季ぶり3度目の王座に輝いたAKバルス カザニ(Courtesy:@khl)

▼カザニが4勝1敗でファイナルを制す!

 3月3日から始まったプレーオフには、56試合に及ぶレギュラーシーズンを戦い抜いた、東西両カンファレンスの上位8チーム(合計16チーム)が進出。

 ベストオブセブン(7回戦制4勝先勝)のシリーズを、3つのラウンドにわたって繰り広げ、イースタン カンファレンスからは「カザニ」

 対する、ウエスタンからは「チェスカ」が、それぞれ勝ち上がり、ファイナルに進出。

 今月14日から”頂上決戦”が繰り広げられてきましたが、地元のタテニェフト アリーナに戻って、昨夜の第5戦を戦ったカザニが、4勝1敗の成績でシリーズを制し、今季の戦いにピリオドを打ちました。

▼不遇の道を歩んできた身長170センチの男がMVP

 優勝決定後、プレーオフMVPに選ばれたのは、ポイントゲッターとしてカザニを王座に導いた ジャスティン・アゼベド(FW・30歳)

 ファイナルが始まる前に筆者も注目しましたが、プレーオフに出場した全チームの選手の中で、最多となる24ポイント(9ゴール15アシスト)と、出場試合数(18試合)を上回るポイントをマークしチームの勝利に大きく貢献とあって、文句なしのMVPだと言えそうです。

 カナダのトップジュニアリーグでプレーしていた際には、のちにシドニー・クロスビー(ピッツバーグ ペンギンズFW)や、コナー・マクデイビッド(エドモントン オイラーズFW)といったNHLでハートトロフィー(レギュラーシーズンMVP)に輝いたスタープレーヤーたちも手にした、CHL(カナディアンホッケーリーグ)最優秀選手に選出。

 しかし「身長170センチ」のサイズが災いし、北米では高い評価を得られなかった不遇の男は、ようやく30歳にして大輪の花を咲かせました。

▼10年間で5度優勝した”勝ち男”!

 30歳でプレーオフMVPに輝き、ようやく日の目を見たアゼベドと対照的に、今季も美酒に酔うことができたのが、チームメイトの デニス・ザリポフ(FW・37歳)

5度目のガガーリンカップを手にしたデニス・ザリポフ(Courtesy:@vesti24sport)
5度目のガガーリンカップを手にしたデニス・ザリポフ(Courtesy:@vesti24sport)

 KHLが発足してから10年間で、ガガーリンカップを手にするのは実に5度目!(メタルーグ マグニトゴルスク在籍時も含む)

 さらに、ロシア代表の一員として出場した世界選手権でも3度も優勝し、かつてのスーパーリーグでもチャンピオンに輝いてきた”勝ち男”は、また一つ栄冠を手にしました。

▼KHLの今後はどうなる?

 創設10年目の戦いを終えたKHLは、大きな転換期を迎えます。

 3月末に当サイトに掲載した記事で紹介したとおり、昨季終了後の2チームに続き、9月1日に開幕する(予定)来季からは、ラダ トリヤッチユグラ ハンティマンシースクがKHLから脱退。

 これまでの拡大路線から一転して、「25チーム」体制へのスリム化を推し進める方針を打ち出しています。

 さらに、サラリーキャップ(チーム総年俸の上限)も減額になるため、リーグを代表する大物選手との契約更新が難航する可能性も。

 一例を挙げると、ピョンチャン オリンピックのMVPに輝いた イリヤ・コバルチャク(スカ サンクトぺテルブルグFW・35歳)は、NHLへの復帰を公言し、ニューヨーク レンジャーズをはじめとするチームと、近々本格的な交渉が始まる予定。

 同じくピョンチャン オリンピックでフィンランドのゴールを守った、身長2メートルの大型GK ミッコ・コスキネン(スカ サンクトぺテルブルグ・29歳)が、エドモントン オイラーズや、ニューヨーク アイランダーズと契約交渉中といった報道が見られます。

 このような大物選手のKHL離れは、今後も相次ぎそうな雲行きだけに、来季以降のKHLはどうなるのか!?

 NHLに次ぐビッグリーグの針路を懸念する声が、これから聞こえ始めそうです。

 

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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