Yahoo!ニュース

【NHL】デビュー以来20年間在籍したチームに別れを告げたベテランが、最後に見せた感謝の気持ちとは?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
昨季までサンノゼシャークス一筋に20年間在籍し続けたパトリック・マーロー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 週末にアジアリーグが開幕した一方で、NHLはレギュラーシーズンの開幕まで、あと1か月(現地時間)となりました。

 既にトレーニングを始めている選手も多いようですが、なかでもFAやトレードなどによって、新天地で開幕を迎える選手たちは、心機一転の思いが強く、意気込み盛んな様子。

 そんな中、今月15日に38歳の誕生日を迎えるベテランが、トレーニングキャンプへ臨むのに先駆けて、あるメッセージを発信しました。

▼日本でゴールを決めたNHL選手

 その選手とは、パトリック・マーローです(FW・タイトル写真)。

 シアトルのジュニアチームで、ポイントゲッターとして大暴れしていた姿を見込まれたマーローは、1997年のドラフトで、サンノゼシャークスから1巡目(全体2位)指名を受けました。(下の写真右)

 チームの大きな期待に応え、18歳でレギュラーに定着して以来、マーローは昨季までの20季にわたって「サンノゼの顔」としてプレー。

 デビュー2季目には、国立代々木競技場で行われた「NHL日本公式開幕戦」でゴールを決めただけに、20歳になって間もないマーローの得点を目の当たりにした方も、いらっしゃるのではないですか?

 NHLの活躍だけに限らず、マーローは、オリンピック、ワールドカップ、世界選手権のカナダ代表にも選ばれ、それぞれチャンピオンに輝いた選手です。

▼ファイナルまで一番遠回りした選手

 カナダ代表で残した輝かしい戦績と対照的に、サンノゼでは王座に手が届かずにいましたが、一昨季のプレーオフで、ウエスタンカンファレンスの戦いを制し、スタンレーカップファイナルへ初めて勝ち上がりました。

 ちなみに、36歳にしてファイナルに進んだマーローは、デビューしてから、実に「165試合」もプレーオフで戦った末、ようやく頂上決戦のステージに。

 これは長いNHLの歴史の中でも、デイル・ハンター(元ワシントン キャピタルズ ヘッドコーチ)の「163試合」を上回り、「ファイナルまで最も遠回りした選手」として、NHLの歴史に名前を残しました。

▼心機一転!トロントへ移籍

 しかし、ファイナルでは、ピッツバーグ ペンギンズに敗れ、スタンレーカップにあと一歩及ばず・・・。

 昨季もプレーオフへ勝ち進んだものの、ファーストラウンドで敗退。

 悲願のスターレーカップ獲得は、またしてもお預けとなったマーローは心機一転!

 トロント メイプルリーフスからの3年総額1875万USドル(およそ20億6000万円)の提示を受け、FA移籍を決意したのです!!

▼サンノゼへの感謝の気持ち

 昨季のカルダートロフィー(最優秀新人賞)に選出されたオーストン・マトュース(19歳)や、ミッチ(ミッチェル)・マーナー(19歳)を筆頭に、若手FWが台頭しているチームとあって、経験豊富なマーローを招いたトロントの戦略は、うなずけるところ。

 対して「大きな決断だった」と振り返ったように、現地メディアがトロントからのオファーを伝えるや否や、マーローの下には、サンノゼのファンから「行かないで!」という多くのメッセージが届いたそうです。

 そんなファンとチームへの感謝の想いを、マーローはこのような形で記しました。

 妻のクリスティーナが、自らのツイッターに転載したのは、昨日の新聞。

 サンノゼを含めたベイエリアで発行されているマーキュリーニュースに、チームメイトやスタッフ、そしてファンへ向けたメッセージを記した全面広告を掲載したのです!

 カンファレンスが異なるため、トロントが(レギュラーシーズン中に)サンノゼへやって来るのは、10月30日の一度だけ。

 月曜日のナイトゲームとなりますが、きっと多くのサンノゼファンが、アリーナにやってくるに違いありません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事