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【女子アイスホッケー】平昌オリンピックで激突する「スマイルジャパンvs韓国」 両チームの共通点とは?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
2月の冬季アジア大会では日本が3-0。韓国相手に完封勝利!(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 来年2月に韓国北部の江原道(カンウォンド)で行われるピョンチャン(平昌)オリンピック

 開幕まで200日を切ったとあって、夏だと言うのに、ウインタースポーツの話題が、各国のメディアで報じられています。

▼ピョンチャンで韓国vsスウェーデン

 7月最後の週末となった一昨日と昨日は、オリンピックのアイスホッケー会場となるカンヌン(江陵)アイスホッケーセンターで、韓国女子代表 スウェーデン女子代表 を招いて、国際親善試合を開催。

 この試合は連日インターネットで生中継された上、スポーツ専門局でも放送。さらに試合の結果は、大手新聞社やテレビのニュースなどで伝えられ、初めての冬季オリンピック開催が近づくにつれ、多くの韓国メディアが高い関心を示している現状が垣間見られました。

▼スウェーデンが韓国を圧倒

 試合は、初戦が「3-0」、2戦目が「4-1」と、いずれもスウェーデンが勝利。

 昨季終了時の世界ランキングが「5位」のスウェーデンと、「22位」の韓国では力の差は明らかでしたが、それでも韓国女子代表を率いる サラ・マリー ヘッドコーチ (HC・29歳)は、悲観していませんでした。

 NHLのロサンゼルス キングスや、セントルイス ブルースでHCを務めたアンディ・マリー(66歳)の娘として、カナダで生まれたマリーHCからは、「この試合へ向けて、万全の準備ができたわけではなかったのに、スウェーデンのスピードにも対応できたし、アタッキングゾーン(=リンクを三等分したうち、相手チームのゴールがあるゾーン)で、何度かスコアリングチャンスを生み出すことができた」と、試合後に前向きなコメントが聞かれました。

▼カナダ人の指揮官が守護神を称賛

 しかし、マリーHCの言葉とは裏腹に、試合はスウェーデンが終始支配する展開に。

 それを表すように、第1戦のシュート数は 「スウェーデン=40 韓国=13」 とスウェーデンが圧倒。

 アイスホッケーの試合で発表されるシュート数(ショット・オン・ゴール)は、ゴールの枠内に放たれたものだけがカウントされるため、両チームのパックの支配率は、この数字にも増して、スウェーデンが試合を終始していたと言えるでしょう。

 しかし、劣勢を強いられた韓国で、一際輝いていたのがGKの シン・ソジュン (27歳)

 昨季の世界選手権を戦い終えて以来、レベルの高い相手との対戦から遠ざかっていたにもかかわらず、第1戦で40本ものシュートを浴びながら、3失点に抑える働きを披露して試合を引き締めました。

 マリーHCも、「3失点のうちの2失点は、プレーヤーがポジションをカバーできなかったのが原因。彼女は素晴らしい働きだった」と絶賛!

 参考までに紹介すると、第1戦でのシン・ソジュンのシュートセーブ率は、「9割2分5厘」

 昨季のNHLでシュートセーブ率がトップだった(規定試合以上出場した選手)セルゲイ・ボブロフスキ(コロンバス ブルージャケッツ)の「9割3分1厘」と比べても、見劣りしない成績なだけに、シン・ソジュンを称える言葉が、マリーHCから聞かれたのも納得です。

▼アメリカのプロリーグでプレーしたGK

 マリーHCが高く評価したGKのシン・ソジュンは、17歳の誕生日を迎えた直後に、韓国女子代表のメンバーとして(シニアの)世界選手権(ディビジョン3=21位~26位の国が参加。4部に相当)に初めて出場。

 その後も韓国代表でプレーし、2014年のソチオリンピック出場権を懸けた予選に出場したのち、カナダの大学へ進学。

 さらに昨季は、NWHL(National Women's Hockey League=アメリカ東海岸の都市をフランチャイズとして、2015年に発足した女子アイスホッケーリーグ)の ニューヨーク リベターズでプレーをしました。

▼「日本 vs 韓国」は元プロGK同士の戦いに!

 「ニューヨーク リベターズ」と聞いて、思い出した方もいらっしゃるでしょうが、このチームには、 一昨季に スマイルジャパン(アイスホッケー女子日本代表)の最後の砦を担う 藤本那菜 (28歳)も在籍。

 日本と韓国の両チームには、元プロリーグのGKがいるだけに、ピョンチャン オリンピックのグループリーグで激突する「スマイルジャパン vs 地元・韓国」の一戦は、

「ニューヨークでゴールを守った元プロGK同士の顔合わせ」

となるかもしれません!

 一昨季に(最も多くの試合でゴールを守り)守護神としてプレーした藤本と、昨季はバックアップ(2番手GK)役が、ほとんどだったシン・ソジュン。

 これまでのキャリアや、両国の世界ランキング(日本は9位)には大きな開きがありますが、ニューヨークでゴールを守った二人が、ピョンチャンで激突した時、勝利の女神はどちらに微笑むでしょうか?

 そして、既に世界ランキングでは、韓国(21位)が日本(23位)を上回った男子に続いて、韓国女子代表の飛躍が見られるのか注目されます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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