Yahoo!ニュース

【NHL】コミッショナーが「NHL選手はピョンチャンへ行かないだろう」と改めて公言した真意は?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHLのゲイリー・ベットマン コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

来年2月9日から始まるピョンチャン(平昌)冬季オリンピックまで、既に一年を切り、先月にカンヌン(江陵)で行われた「フィギュアスケート四大陸選手権」など、オリンピック会場を舞台にしたプレ大会も始まっています。

ところが、この時期になって、NHLのゲイリー・ベッドマンコミッショナーが、「NHL選手はピョンチャンへ行かないだろう」と、昨日(現地時間)ニューヨークで行われたスポーツビジネスサミットに出席した際、メディアへ対し改めて公言しました。

▼今月はじめに下った「最終決定」

今月9日に当サイトで紹介したとおり、ベッドマン コミッショナーをはじめとするNHL側と、各チームのGMらによる代表者会議が、フロリダで開催され、

「オリンピックブレイクを設けて、レギュラーシーズンを中断することは、ほとんど利益を生み出さなかった」

との意見が多数を占めたことから、

「来季のスケジュール作成は、オリンピックブレイクを組み入れない形で進めている」

とベッドマンコミッショナーは明言。

かねてから国際アイスホッケー連盟側に求め続けていた「NHL選手たちの移動費や傷害保険料などの負担額」も、依然として解決しない中、開幕まで一年を切った時点で、コミッショナー自らが公言しただけに、これが「最終決定」であると、現地メディアの多くが報じました。

▼その後も選手たちがオリンピック出場を熱望!

しかし、9日付の記事中で紹介したように、

「もしNHLが(オリンピックブレイクを設けず)出場出来る環境が整わなかったとしても、オリンピックに出場したい」

byアレックス・オベチキン(ワシントン キャピタルズ=ロシア出身)

「オリンピックは、ワールドカップや世界選手権とは、比べ物にならない」

byジョナサン ・テイズ(シカゴ ブラックホークス=カナダ出身)

とオールスターゲームの常連で、チームのキャプテンも務める ”NHLの顔” たちが声を大にして主張。

その後も、この流れは止まることなく、NHLで最も長身(身長2m6cm)ズデノ・チャラ(ボストンブルーインズ=スロバキア出身)。

8000ドルのポケットマネーを投じて新しい帽子を購入し、小児がん患者へプレゼントしてあげたヤクブ ・ボラチェク(フィラデルフィア フライヤーズ=チェコ出身)といったヨーロッパ生まれの選手を中心に、各チームの主力たちから、「オリンピック出場」を熱望する声が聞かれます。

▼ファンやオーナーも選手を後押し

こういったスター選手たちの声を、ファンも後押し。

「NHL選手のオリンピック出場」を、世界各国のファンがソーシャルメディアなどを通じて、アピールし続けています。

さらに加えて、ワシントン キャピタルズのテッド・リオンシスオーナーのように、出場可否の議論が起こる以前から、「オリンピックブレイクの有無にかかわらず、本人の希望を最優先する」と、前述したオベチキンのオリンピック出場を早々と公言したオーナーも!

▼悪者になりたくない !?

このような流れを受けて、リオンシスだけに限らず、「オリンピック出場容認」を検討しているオーナーもいると報じられ、いささか風向きが変わり始めた気配です。

それだけに、ベッドマンコミッショナーが「NHL選手はピョンチャンへ行かないだろう」と、この期に及んで改めて公言したのは、

「NHLが禁じたのではなく、最後は各チームで判断した結果」

だと言う責任転嫁(!?)

言い換えれば、ファンからの非難の矢面に立つ「悪者になりたくない」との真意が込められているように感じるのは、筆者だけでしょうか???

いずれにしても、選手や在籍チームの判断に委ねられれば、1998年の「長野オリンピック」から続く、現役NHL選手が祖国のジャージを着て対戦する「ドリームチーム vs ドリームチーム」の試合が見られる可能性が高まりそう。

それだけに、ベッドマン コミッショナーの発言は、世界のホッケーファンに、きっと歓迎されているでしょう。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

加藤じろうの最近の記事