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Spotifyが支援するポッドキャスト、音楽ストリーミングに次ぐ新たな市場

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
Spotify(写真:Shutterstock/アフロ)

サブスクリプション型音楽ストリーミングサービスの最大手Spotifyが、ポッドキャスト制作者向けに番組リスナーの視聴データを分析する専門ツール「Spotify for Podcasters」の提供を開始した。

このツールでは、ポッドキャスト制作者やメディア、広告主がSpotifyで番組を聴いたオーディエンスのデータを詳細に知るためのデータがダッシュボード形式で表示できることが特徴となっている。

Spotifyはこのデータ分析ツールへのアクセスをポッドキャスト配信者に無料で提供する。

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ポッドキャストの視聴時間やアクセスした都市、番組別の再生回数、総リスナー数などのデータが提供され、ポッドキャストの番組制作側とオーディエンスとの更なるエンゲージメントや、新しいリスナーや潜在的リスナーへのアプローチへと活用できるため、配信後の施策や効果検証にも役立てられる。

音楽ストリーミングの領域ではSpotifyは、アーティストやレコード会社、マネジメント向けにリスナーの視聴データを分析する専門ツール「Spotify for Artists」を提供してきた。

「Spotify for Artists」モバイルアプリは詳細なリスナー情報を異なる時間軸やデモグラフィックに分けて可視化でき、そのデータの見やすさやリアルタイム表示などの視認性の高いデザイン性もあり、海外の音楽シーンで人気を集めている。

Spotifyは、音楽ストリーミング市場でリスナーデータの透明性向上を目指した取り組みを他社よりも早くから行なってきた。Spotifyに続くかのように、世界の音楽業界ではストリーミングのデータを可視化する「データ・ダッシュボード」ツールのブームが起きている。

ポッドキャストはデータ分析が鍵

ラジオやテレビなどの視聴率と異なり、ポッドキャストでは番組を聴いたオーディエンスのデータ分析が出来ることが、このフォーマットの強みの一つであり、ポッドキャスト産業が欧米で急成長する理由でもある。

前述のSpotifyの分析ツールは、配信者やクリエイターに無料で提供される。一方で、ポッドキャスト業界では、すでに多くの配信ツールやプラットフォーム内で使える分析ツールが提供されている。

ポッドキャストで番組の制作や配信するためのプラットフォームやアプリも、すでにその数は数え切れないほど増えているため、選ぶのも苦労するかもしれないが、プラットフォームの独自性や機能の拡充も進んでいる。それと同時に、分析ツールも進化が進み、独自の強みや特徴を打ち出す企業が増えている。

ポッドキャストを配信できる代表的なプラットフォームを幾つかあげてみたい。

  • Podbean
  • Simplecast
  • Transistor.fm
  • Audioboom
  • Acast
  • Megaphone
  • Libsyn

この他に無料でも使えるAnchor、さらにはSoundCloudもポッドキャストの配信ツールとして人気だ。

これらのプラットフォームの中では、PodbeanやSimplecast、Transistor.fm、Anchorなどは、データ分析ツールも配信者に提供している。

プラットフォーム以外では、ポッドキャストや音声コンテンツ専用のデータ分析ツールも存在する。PodtracやChartableはこのカテゴリーに入る。

データを獲得することが必ずしもポッドキャストのゴールではない。だが、番組がいかにして短期的、中長期的に聴かれているかを詳細に理解できるため、個人だけでなく企業やメディアはポッドキャストを活用したブランディングやオーディエンスの獲得、広告の獲得に繋げることができる。

音楽とポッドキャストの統合進む

2019年、Spotifyが注力する新たな事業の柱は「ポッドキャスト」だ。今年に入りSpotifyは「オーディオ・ファースト」戦略を打ち出し、音楽だけでなく、あらゆるオーディオ・コンテンツがSpotifyの未来であるというビジョンを示した。この戦略を加速するためにSpotifyが本格的に取り組むのがポッドキャストである。

すでにポッドキャストを配信してきたSpotifyは、アップルに次ぐ世界規模のポッドキャスト配信プラットフォームに成長してきた。同社はさらなる成長を目指して、人気のポッドキャスト番組を制作するメディア「Gimlet Media」や、配信アプリ「Anchor」、ハイエンドな番組制作で評価の高いメディア「「Parcast」を買収した。

この新戦略は、同社内にも大きな変化をもたらした。

例えばSpotifyは現在、世界各地のオフィスでポッドキャスト専任の人材を探している。

募集する職種も多様で、Spotify独自のオリジナル番組のプロデューサーや編成担当、ニュース専門、スポーツ専門の番組プロデューサー、制作陣のキャスティングと多岐に渡る。このような人材獲得を進めるSpotifyは近い将来、音楽以外のジャンルでもオリジナルなポッドキャスト番組の制作と配信を本格的に始めることが予想される。

またSpotifyはすでにアプリのアップデートで、ポッドキャストを強調して、番組を見つけやすいデザインに変更した。さらに6月には、ユーザーの属性や好みに最適化したポッドキャストのプレイリストも始めている。

source

Spotify for Podcasters

Introducing: Spotify for Podcasters (Spotify)

(この記事は、音楽ビジネスメディア「All Digital Music」に掲載された記事に加筆しています)

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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