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Spotify、ヘイトスピーチ検閲方針に終止符

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
Spotify logo(写真:ロイター/アフロ)

Spotifyが5月に公開し、アーティストやレーベルを巻き込み、世界の音楽業界で賛否両論の波を呼んだ「ヘイトコンテンツおよび過激な言動に関するポリシー」(Policy on Hate Content and Hateful Conduct)を同社は見直すことを公式に発表しました。

このヘイトコンテンツに対するポリシーによって、Spotifyは該当するコンテンツを検閲し、対象となったアーティストのプラットフォーム内での支援を止めるとして、R・ケリーやXXXTentacionは「Rap Caviar」などSpotifyの公式プレイリストから強制的に削除しました。

この新ポリシーは、アーティストから反対の声が真っ先に上がりました。

ラッパーのケンドリック・ラマーはSpotifyが音楽を検閲することに異論を示した一人。楽曲を引き下げてSpotifyをボイコットするスタンスを示すほど、新ポリシーへの議論は深まっていました。

この問題に関し、ケンドリック・ラマーやSZA、Jay Rock、Digi+Phonicsなどが所属するヒップホップレーベル「Top Dawg Entertainment」のCEOのAnthony “Top Dawg” Tiffithが、Spotifyでアーティストサービスを統括するトロイ・カーターや、音楽プロデューサーのDiddyなどに懸念点を伝えたことなどから、SpotifyのCEOのダニエル・エクとの会話が始まったことが明らかになっています。

Spotifyはポリシーに反するコンテンツや過激な言動の詳細な内容を公開しておらず、事前にアーティストやレーベルに対しても説明されていなかった配慮不足も拍車をかけます。

Spotifyのコンテンツに対するこうしたアクションは今後無くなります。

Spotifyは6月1日にブログを更新し、新ポリシー策定に関し同社は「混乱と懸念を生み、公開前にSpotify内のチームや重要なパートナーたちからの意見に十分に耳を傾けてきませんでした」と誤りを認めました。

ポリシー発表後に挙げられた懸念材料として、Spotifyは「不当な疑惑でさえアーティストがSpotifyの公式プレイリストでプロモーションされるチャンスに響き、彼らの将来に悪い影響を与えかねない懸念」を作ってしまい、アーティストの中からは「青年時代の過ちもポリシーに適応されるのでは」と、裁判や過去の行い、犯罪記録に対して心配の声があがったことを明らかにしています。

その上でSpotifyは、「私たちの目的はアーティストとファンをつなぐことで、法を決めることではありません」と、アーティストやレーベルを咎める立場にないことを主張しました。

さらにSpotifyはXXXTentacionの楽曲を公式プレイリストに復活させました。一方でR・ケリーの楽曲はプレイリストには復活させませんでした。

声明文の中でSpotifyは「人種や宗教、身体障害、ジェンダーアイデンティティ、性的指向が原因で憎しみや暴力を助長するヘイトコンテンツは許さない」と今後もヘイトスピーチに対応していくスタンスは明らかにしています。そしてヘイトスピーチに該当するコンテンツは今後もプラットフォームから削除していく方針だとも述べています。

Spotifyの声明文はこちらから読むことができます。

Spotify Policy Update

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Spotify Policy Update

Spotify Announces New Hate Content and Hateful Conduct Public Policy

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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