Yahoo!ニュース

「アジア」に世界の音楽フェスは定着するか? 「ULTRA」が積み重ねた堅実な実績

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
by Rudgr(PRNewsfoto/ULTRA Worldwide

もはや「世界の音楽フェス」と称される規模へ、ULTRAの成長が止まりません。

9月16日から18日の3日間、東京のお台場で開催された、世界最大規模のダンスミュージック・フェスティバル「ULTRA JAPAN」。

例年のごとくSNSがULTRAの話題で盛り上がった日本を含めたアジア開催について、「ULTRA」ブランドを運営するULTRA Worldwideが発表した最新の実績は、世界で最も成功している国際音楽フェスティバル・プロデューサーの冠にふさわしく、拡大する音楽フェスティバル産業の中でも、目を見張る勢いで成長が伺える数値でした。

アジアは9カ国に進出

来年2018年に20周年を迎える「ULTRA Music Festival」のアジア開催は、今年6月から9月までの4カ月で、日本を含むアジア9カ国に拡大、合計17のイベントが開催されました。

「ULTRA」フェスティバルと、「RESISTANCE」イベント、「ULTRA」へのカウントダウン的なイベント「Road to ULTRA」の3イベントのアジア開催では40万人以上を動員し、今年は新たに中国・上海開催の「ULTRA China」、インド・ムンバイとニューデリーでの「Road to ULTRA India」、インドネシア・バリ島での「RESISTANCE」がラインナップに加わっています。

ULTRAは2018年までに6大陸、23カ国への進出計画を発表済みで、前述の上海、インドに加えて、オーストラリアで2018年に進出予定、さらなる世界展開を強化しています。

またフェス運営に加えて、オンラインでのプレゼンスも同時強化している戦略は注目です。ULTRA Worldwideが独自運営するライブ動画プラットフォーム「ULTRA LIVE」の動きも好調で、中国、インド、日本、シンガポールでのイベントは2,500万人以上のビューワーを獲得。上海と東京のフェスはULTRA LIVEの他に、YouTube、Tencent、Panda TV、LINE Liveなどでも配信され、動画配信ビュー数は、昨年のアジア開催と比較して2200万以上のビューワーを新たに獲得して、アジア圏でのULTRAブランドのプレゼンス拡大が進んでいます。

東京、ソウル開催はそれぞれ12万人以上を動員

先日4年目を迎えたULTRA Japanには、3日で12万人以上のファンが参加。ULTRAフェスティバルでは4カ国目となるLive Stageを新たに加え、これまでよりもはるかに幅の広いアーティスト・ラインナップを実現、ダンスミュージック・ファンに向けて音楽の多様性を強調しています。

ソウルで開催されたULTRA Koreaは6年目を迎え、2日で12万人以上の動員を記録。2018年は3日に拡大予定となっています。シンガポール開催となったULTRA Singaporeでは5万人以上を2日で記録。

初開催のULTRA Chinaは2日で4万人を動員。またインドでのRoad To ULTRAではニューデリーとムンバイでそれぞれ1万5000人、1万2000人を動員しました。

10月からはULTRA FestivalとULTRAイベントは、初開催のメキシコを含むラテンアメリカ9カ国を10日で周る日程が決定しています。

1会場開催の音楽フェスは古い考えか?

もはやULTRAをダンスミュージック・フェスティバルとしてとして見なすこと自体が古い見方かもしれません。「これまでの音楽フェス」といえば、一会場を拠点に年1開催が基本でした。こうした考えが変わり始めたのは、2010年代に入って、マイアミを拠点に、積極的な海外進出を始めた「ULTRA」ををはじめとする音楽フェスであることは、あまり注目されてきませんでした。ですので、ULTRAが単独の開催よりも、「アジア」という地域にフォーカスして開催実績を報告する形は、2010年代以降の音楽フェスのあり方を象徴する一つの形と言え、世界の音楽フェスという認識も変えるとも言えるでしょう。

これまで国際的に知名度の高い音楽フェスと言えば、日本でも「コーチェラ・フェスティバル」や「グラストンベリー・フェスティバル」といった、ロック中心のミクスチャー・フェスティバルが真っ先に思い浮かぶ人も多いと思います。

こうした音楽フェスは、2週末に渡って開催日を拡大するなど、グローバルな認知の普及に伴って、運営形式を変える新たな挑戦に着手している一方で、高騰するチケット価格や販売枚数の問題など、ファンの希望に必ずしも添えていない現状の問題にも直面しています。

特に音楽フェスプロモーターにとっては、海外進出や複数回開催はビジネス的に至難の業であり続ける中、ULTRA的な音楽フェスの運営は、世界各地に開催地を分散させていくことで、トータルの動員数を増やせ、ローカル市場でのブランド認知拡大に繋げられるなど、戦略的に大きな優位性を獲得していると感じます。

ダンスミュージックフェスティバルというニッチなジャンルとして始め、今や一年で数ヶ月に及ぶ6大陸での世界開催を実現するほど盛況なULTRAの音楽フェス・ブランドとしての価値は、ビジネス的な成長を続けるフェス産業においても、稀有な存在です。もはやULTRAを「世界を代表する音楽フェスティバル」と評価を変える時期に入っています。

◇「ULTRA Worldside」がアジアで開催したフェスティバルと「ULTRA」ブランドのイベント

  • ULTRA Korea: 6月10、11日 Olympic Stadium, Seoul
  • ULTRA Singapore: 6月10、11日 ULTRA Park, Singapore
  • Road to ULTRA India Mumbai: 9月7日 Mahalaxmi Race Course
  • Road To ULTRA New Delhi: 9月8日 India Exposition Mart, Greater Noida
  • ULTRA China: 9月9-10日 Shanghai Expo Park, Shanghai
  • Road to ULTRA Taiwan: 9月10日 Da Jia Riverside Park, Taipei
  • Bali Music Week Opening Party: 9月13日 Mirror, Seminyak
  • ULTRA Beach Bali: 9月14、15日 Potato Head Beach Club, Seminyak
  • RESISTANCE Bali Afterhours: 9月14、15日 Jenja
  • Road to ULTRA Philippines: 9月15日 Mall of Asia Arena, Manila
  • RESISTANCE Bali Closing Party: 9月16日 Ku De Ta
  • Road To ULTRA Hong Kong: 9月16日 Nursery Park, West Kowloon Cultural District
  • ULTRA Japan: 9月16-18日 Tokyo Odaiba Ultra Park, Tokyo
  • RESISTANCE Tokyo Afterparty: 9月16- 18日 Womb, Tokyo

ソース

ULTRA Worldwide Concludes Another Record-Setting Asia Tour (ULTRA Worldwide)

ULTRA Festival

ULTRA Japan

Top photo: Ultra Japan, Photo by Rudgr (PRNewsfoto/ULTRA Worldwide)

この記事は、デジタル音楽メディア「All Digital Music」で2017年9月23日に掲載された記事に加筆しています。

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

ジェイ・コウガミの最近の記事