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ソニー・エンタテインメントのマイケル・リントンCEO、「Snapchat」会長に就任へ

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
snapchat(写真:ロイター/アフロ)

ソニー・エンタテインメントのCEO兼会長のマイケル・リントン(Michael Lynton)が、同職を降り、「Snapchat」アプリを運営するSnapの会長に就任することが明らかになりました。リントンは13日(金)に社員宛のメールで辞職を発表しました。

2004年にソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのCEO兼会長に就任し、2012年にはソニー・エンタテインメントでCEO兼会長に任命され、ソニーミュージックやソニー/ATVミュージック・パブリッシングなど音楽事業や映画事業、テレビ事業を含めて、ソニーグループのグローバルエンタテインメント事業を統括してきました。リントンは任期を今後6カ月続け、ソニーの平井一夫CEOはリントンの後任探しを進める予定です。

リントンの功績を振り返ると、映画では『007』シリーズの復活をはじめ、『スパイダーマン』『バイオハザード』シリーズの製作を、共同会長のエイミー・パスカル(Amy Pascal)と行い、世界的ヒット作品を生み出しました。その他にも『ゼロ・ダーク・サーティ』や『ソーシャル・ネットワーク』など数多くの作品がリリースされました。また、テレビ作品では『ブレイキング・バッド』や『ブラックリスト』、『ザ・クラウン』といった作品が賞を受賞するほどの支持を集めました。

音楽ビジネスでは、2012年にEMIミュージック・パブリッシングを買収しカタログビジネスを強化、200万曲以上のライセンスを保有する音楽出版最大手のシェアをさらに拡大しました。さらに2016年には、マイケル・ジャクソン財団が保有していたソニー/ATVの株式50%を7億5000万ドルで取得し完全子会社にしています。

Snapchatの音楽への関心がハッキングで明らかに

リントン時代の失態で忘れられないのは、2014年にソニー・ピクチャーズが受けた大規模なハッキング被害で、これによりソニー社員の個人情報や、企業機密、さらに幹部のメールまでが漏洩する事態を引き起こし、現代社会でも前例の無いサイバーテロ騒動で、名が知れてしまったことではないでしょうか。

ハッキングでリークしたメールで、リントンは密かにSnapchatの開発者でSnapのCEOエヴァン・スピーゲル(Evan Spiegel)と協力して、Snapchatに音楽サービス機能を追加する戦略を計画していたことが、明らかになり、注目が集まりました。

ソニー傘下のエピック・レコードの幹部L.A.リード(L.A. Reid)や、音楽動画専門配信サービス「VEVO」の社長リオ・キャラエフ(Rio Caraeff)といった、音楽業界関係者を巻き込み、「音楽動画」中心のサービスについて、議論が交わされていたことから、Snapchatが音楽ビジネスに参入する機会を伺っているとの憶測が俄然高まりましたが、その後の進展は現在に至るまで伝えられていません。

「Snapchat」を運営するSnapは、2017年の上場を目指していることが報じられており、上場時の時価総額は250億ドル(約2兆5000億円)に上ると見込まれています。リントンは、初期の投資家の一人であり、Snapchat時代(Snap社名変更前)から、同社の取締役を4年ほど勤めてきました。

動画中心のコミュニケーションツールの代名詞となったSnapは、メディアとの提携を推し進め、「ディスカバリー」機能を通じて、CNNやESPN、Vice、Buzzfeedなど大手メディアのコンテンツを配信していることから、コンテンツ産業やハリウッドとのビジネス経験に長けたリントンの会長就任で、必然的なIPOと、Snapとエンターテインメント業界そしてメディア産業との未来がさらに加速しそうな勢いを見せています。

ソース

ForbesHollywood ReporterTechCrunch

この記事は、デジタル音楽ブログ「All Digital Music」で2017年1月14日に掲載された記事の転載です。

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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