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ウクライナ侵攻で見えて来た「インフレ」の本当の怖さ!

岩崎博充経済ジャーナリスト
ロシアによるウクライナ侵攻は、世界に大きな影響をもたらしている(写真:ロイター/アフロ)

日本の若者は「インフレ」の怖さを知らない?

ロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与えたが、同時に世界にショックを与えたのが、原油や天然ガス、小麦、ニッケルそしてパラジウムといった「資源」の多くがロシアに依存してきた現実だ。ネルギーや食糧、希少金属といった資源の価格が一気に急騰したことは言うまでもない。

原油価格はロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降、それまで1バーレル=91ドル台だったのが、3月7日には119ドル台にまで急騰した。そんな中で米国は、ロシア産原油や天然ガスの輸入禁止に踏み切るなど、様々な分野で経済制裁を課している。世界がこれまでロシアに依存してきた部分は、直ちに「供給不足」を生ずるわけで、今後世界的なインフレが起こることは避けられそうもない。

実際、ロシアの品目別世界シェアをみると、その深刻度がわかる。

・原油生産量……12.1%

・天然ガス生産量……16.6%

・小麦……16%(ウクライナ:10%)

・蕎麦……20%

・ニッケル……10%(高純度のニッケル生産が特徴)

・パラジウム……40%(自動車生産に不可欠)

プーチン大統領が、日本を含めた欧米諸国の経済制裁にどこまで耐えられるのかはわからないが、ロシアが世界中に供給してきた様々な商品が、今後品不足となって価格が急騰することは容易に想像できる。

かねてから新型コロナウイルスの世界的な蔓延や気候変動への対応が重なって、世界はじりじりと押し寄せる「インフレ」に見舞われつつあった。これまで物価上昇とは縁のなかった日本さえも、世界的なインフレの波に飲まれようとしている。

そこに、ロシアのウクライナ侵攻が始まったわけだが、プーチン大統領は世界がインフレを避けて「経済制裁は限定的」と踏んで戦争に突き進んだ節がある。その見込みが外れて、欧米諸国は結束を固めた。つまり、世界は今後凄まじいインフレに見舞われる可能性が出てきたということだ。

「石油危機」の再来か?

周知のように、日本は失われた20年とも30年とも呼ばれる不況の中で、物価上昇とは縁のない状況が続いてきた。値上げに対しては極めて慎重な企業と値上げに対して根強い反感を持つ国民性にも支えられて、長い間デフレに陥ってきたわけだ。

ところが、思いもよらぬロシアのウクライナ侵攻の影響で、今やデフレどころかインフレの洗礼を受けなければならない状況になってきた。世界的なインフレの影響は一時的な現象であり、パンデミックが収束すれば元に戻る、という専門家が多かったのだが、相手がプーチンとなると予測不能であり、長期に渡って世界にインフレをもたらしそうな状況になって来た。

そこで問題なのは、日本では物価上昇という現象をほとんど知らない世代が多いことだ。ガソリン価格とか生鮮食品の値上がりは日常茶飯事だが、インフレとは世の中の大半のモノが価格上昇する現象で、貨幣価値が変化するほどのインパクトを持っている。とりわけ、失われた30年の間に社会に出た40歳未満の世代にとっては、ほとんどの人がインフレという言葉を聞いてぴんとこない人も多いはずだ。

つまり日本の若者のほとんどは、本当の意味のインフレを知らないといっても過言ではない。インフレを知らないということは、インフレへの対応の方法も知らないことになる。インフレに備えて何をすればいいのか……。そもそもインフレとはどんな現象なのか……。物価上昇が継続するインフレ社会とはどんな社会なのか……。考えてみた。

「石油危機」--その時、世界には何がおこったか?

インフラと言われるものがどんなものなのか。まずは、1974年1月から始まった第一次オイルショックについて考えてみよう。ことの発端は、1973年10月6日に始まった第4次中東戦争がある。OPEC(石油輸出国機構)加盟産油国の主要6カ国が、原油の公示価格を1バレル=3.01ドルから、5.12ドルへと一気に70%引き上げたことが原因だった。

さらに、1974年1月から原油の価格を5.12ドルから11.6ドルへと引き上げを決定している。つまりわずか3ヶ月の間に1バレル=3.01ドルから11.6ドルに引き上がったわけで、4倍近い値上げになった。

 当然ながら、原油の大半を輸入に頼っている日本は、1974年に消費者物価指数が23%上昇し、狂乱物価と言う言葉まで生まれている。インフレ抑制のために、日本銀行は政策金利である「公定歩合(当時)」を引き上げた。高度経済成長と言われた時代が、ここで終焉を迎えることになった。

 ちなみに、石油危機は1979年に起きたイラン革命をきっかけに「第二次オイルショック」が起こり、またもや日本は大きな影響をうけた。OPECは、原油価格を4段階に分けて14.5%値上げすることになり、日本では深夜テレビの自粛やガソリンスタンドの日曜祝日休業等が行われた。第一次オイルショックほどではなかったが、日本の物価もこの時期には常時3%程度上昇している。

 周知のようにその後日本は、1980年代後半にバブル経済が起こり、不動産価格や株価などを中心に大きな物価上昇が起きている。2回にわたるオイルショックとバブル経済の影響で、日本は1980年代終わりまで継続的なインフレが続いたと言っていいだろう。

インフレの原因は様々だが、問題はそのスピード?

インフレとは、言うまでもなく物価が上昇する状態のことだが、その原因は実に様々だ。供給と需要のバランスが崩れた場合だけではなく、様々な要因によって物価は上がる。

たとえば、現在の新型コロナウイルスによるパンデミックも原因のひとつになる。ロックダウンによって経済がストップし、パンデミックが収束する段階で人手不足などが起きて物流が滞り、運送費が上がるケースもある。原油などの資源価格の上昇によって起こるインフレもある。簡単に、インフレの原因となるファクターをピックアップしてみよう。

①需要拡大……日本が高度経済成長時代に経験したような需要の拡大によってインフレになるケース。個人消費が伸びて、誰もがクルマや電化製品、マイホームなどを買い求めようとすれば、その原材料も含めてモノの値段は上がっていく。

②供給不足……気候変動や地震、火災などの天変地異によって食糧価格や物流が滞って物資が上昇するインフレ。あるいは、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みから回復するプロセスの段階で、人手不足や物流の停滞といった供給制約によって、世界中の各地でモノが不足し、物価が上昇していくタイプのインフレ。

③産業構造の転換……脱炭素社会に向かって世界は化石燃料依存型社会から再生エネルギー中心の世界へとシフトし始めている。その段階で、原油価格の上昇や生産コストの上昇によって起こるインフレ。脱炭素社会の実現にインフレは不可欠と言える。

④地政学リスク……米中との貿易戦争やロシアによるウクライナ侵攻への危機感から資源価格や原油価格が上昇し、それが世界中のインフレとつながっていく。かつて、日本も第二次世界大戦の敗戦によって、500倍の物価上昇=ハイパーインフレを経験している。

⑤通貨の暴落……通貨の大きな下落などによって輸入物価が大きく上昇しインフレになるケース。ハイパーインフレ等に見舞われる発展途上国の大半は、この通貨の暴落による輸入物価の上昇によって凄まじいインフレに陥るパターンと言っていい。

昨年の後半以降、世界中がインフレに見舞われつつあるが、その原因は新型コロナウィルスによる経済の落ち込みから、再び経済が持ち直す過程で起きている複合的、構造的な原因といっていい。言い換えれば、長い間デフレに苦しめられてきた日本も、世界中のインフレに足並みを揃えざるをえなくなりそうだ。

もともと、日本は中央銀行である日本銀行が目標として定めてきた「年2%」の物価上昇に向かって、異次元の金融緩和策やマイナス金利の導入、さらには「イールドカーブコントロール」といった世界のどの中央銀行もやったことがない金融政策を実施してきた。

それでも、日本の物価上昇率は長年にわたって年2%の目標に届かなかったが、ここにきてついに目標に近づきつつある。菅政権時代に進めた携帯電話の通信料引下げ分を除けば、昨年のうちに年2%の物価上昇率を達成していた可能性が高いとも指摘されている。

日本もまた、世界中のインフレの波に飲み込まれる可能性が高いということだ。「米国が他の国に比べてインフレが進んでいるのは経済が健全である証だ」といった専門家がいたが、経済が健全であればきちんと物価が上昇していくのが自然と言える。

確かに、穏やかなインフレは経済成長の証とも言える。デフレは経済の縮小を意味するが、穏やかなインフレは成長経済の証であり、成長を促す作用もある。その反面で、インフレは国民生活を脅かす大きな脅威にもなり得る。収入が増えることなく、支出が増え続ければ家計は大きく圧迫される。

岸政権が打ち出している「賃金上昇」は、物価上昇と密接な関係がある。賃金上昇なきインフレは、あっという間に国民を困窮に陥れる。インフレだけが進む社会では、国民生活は大きく衰退していくことになる。

数字で見る日本のインフレ時代

例えば、日本でも1970年代にはオイルショックなどに見舞われて大きな物価上昇の時代を経験している。総務省統計局の消費者物価指数を見てみると、1970年代の総合指数は次のように推移している。

・ 1970年…… 31.5

・ 1975年…… 54.0

・ 1980年…… 74.5

・ 1985年…… 85.4

・ 1990年…… 91.2

・ 1995年…… 97.6

1970年には31.5だった消費者物価指数が、1980年には74.5 となっている。つまり10年で物価は2倍以上になったわけだ。1973年には第一次石油危機があり、1979年には第二次石油危機があった。オイルショックの中で、日本の物価は大きく急騰したと言うわけだ。では収入はどうだったのだろうか。総務庁統計局の家計調査の各年度版によると、世帯実収入(月額平均)は次のように推移していく。

・ 1970年…… 11万2949円

・ 1975年…… 23万6152円

・ 1980年…… 34万9686円

・ 1985年…… 44万4846円

・ 1990年…… 52万1757円

・ 1995年…… 57万817円

1970年の月収11万2949円に対して、1980年には34万9686円となっている。物価上昇に見合うだけの収入の増加があったと言って良いだろう。ちなみに、この時期は妻の収入もまた大きく伸びているのが特徴だ。

たとえば、家計調査の中には「妻・その他世帯員寄与率」と言う数字がある。世帯主以外の妻やその他の家族が家計に寄与した数字だが、1970年には全体の4.47%だったのが、1980年には6.98%と大きく伸びている。簡単に言えば、「世帯主の働き+妻の働き」があって収入は大きく伸びてきたというわけだ。

ちなみに80年代後半には、いわゆるバブル時代がやってきて賃金が堅調に伸びている状況もあった。物価を上回る賃金の伸びが1970年代の高度経済成長時代にはあったと言うことだ。もっともこの時代の日本の経済成長率は、いわゆるバブル崩壊まではおおむね順調で、高い経済成長率を日本は維持してきた。

「ジャパン・アズ・ナンバー1」と指摘されるほど、日本経済は顕著な成長を遂げてきた。しかし、その後のバブル崩壊によって日本経済は大きく減退し、高度経済成長時代のような賃金の上昇はなく、物価上昇も続かない。長い間「デフレ」経済を強いられることになる。

インフレによって何が起こるのか?

インフレには、大きく分けて2種類ある。ひとつは経済成長に伴う穏やかなインフレ。経済成長の証としてインフレが起こる現象だ。そして、もうひとつのインフレは、金融当局によるコントロールが一切効かなくなるような悪性インフレだ。

現在、米国のインフレは40年ぶりといった歴史的な水準に達しつつある。当初、一時的な現象としていたFRBも、この3月から金利を引き上げ、5月からはこれまで買い込んだ国債や住宅ローン担保証券などを売却することによって、バランスシートをコロナ前の水準に戻そうとしている。

インフレ退治への政策転換に走り始めたわけだが、米国のインフレが深刻になった場合、米国民の生活は脅かされることになるが、米国だけの問題ではなく、金利上昇によって米ドル高となり、発展途上国の通貨が下落して、インフレを誘発する可能性が高い。日本も、ずるずると米ドル高円安が進んでおり、日本にも想定以上のインフレが襲い掛かる可能性も否定できない。

そもそもインフレになれば、我々の日常生活は大きな影響を受ける。実際に、インフレによって何が起こるのか……、どんな影響があるのか、簡単にピックアップしておこう。

1.生活コストの上昇

前述のように、インフレが家計を直撃する事は明らかだ。言い換えれば今後10年間、物価が2倍になるような時代になった場合には、少なくとも物価の上昇に合わせて、収入も増やしていかないと生活は成り立っていかなくなる。

かといって、安易に大企業に入れば良いと言うものでもない。業種によっても異なるが大手企業の一部や公務員は、インフレの時代には苦しい立場に置かれる。70年代の急激な経済成長のときにも、公務員の給与がなかなか上昇せずに、かつて公務員は「薄給」の代名詞ともいわれた。

その一方で、、自営業者やフリーター、ギグワーカーといった職種は、ひょっとしたらストレートに物価上昇分が反映されるかもしれない。想定を上回るようなインフレになった場合、どんな業種や職種がいいのかをきちんと考える必要があるのかもしれない。

たとえば、中南米やロシアなどが経験したインフレのように、自宅で野菜を作るなど、国民一人一人が自衛を迫られる可能性もある。パンひとつの価格が、出勤時と帰宅時とでは変わっていて、1日のうちに大きく値上がりしてしまう。そんな日常を経験しなければならなくなるかもしれないのだ。

2.金利上昇するが、金融資産は目減り?

インフレになれば、中央銀行は金利を引き上げて金融引き締めにかかる。銀行預金や住宅ローンの金利は当然ながら上昇することになり、銀行預金には利子が付くようになり、債券も金利が上昇(価格は下落)して魅力的な商品になる。

日本は長い間デフレだったために、自分の資産の半分程度は銀行や郵便局に預けたままになっている人が多い。デフレ社会で、株式などに投資してリスクをとらずとも銀行に眠らせたままの方が資産防衛になる。モノの価格が下落していくということは、貨幣価値が上がることを意味している。

ちなみに、長い歴史の中では、物価上昇率が1年間で2万%とかになることもある。こうした超インフレは「ハイパーインフレ」と呼ばれ、インフレ最大の恐怖と言われる。アルゼンチンやブラジル、メキシコ、ロシア、ベネズエラなどもハイパーインフレを経験している。

インフレの激しい時代には、資産を防衛する必要がある。インフレが進む時代には資産運用をしないと、預金や現金は目減りしていくことを意味している。金融い資産の目減りを防ぐためには「資産運用」をしなければいけないということだ。日本の家計資産がはじめて2000兆円の大台を突破したというニュースが話題になっているが、すさまじいインフレ下では現預金は役に立たない可能性が高いことを忘れてはいけない。

3.生産コストの上昇

製造業中心の日本の産業構造を考えると、日本経済はインフレに脆いことがよくわかる。原材料が上昇して、製造コストが上昇するとともに、賃金も上昇するため人件費等も高くなる。ひとつの商品を製造するための生産コストが割増になってくるわけだ。要するに、インフレは実際のモノを扱う「実業」には厳しい時代と言えるのだ。

たとえば、「GAFA」を例に考えてみるとインフレに弱いとされるのは「Amazon」と言われる。世界中に流通拠点を数多く保有し、雇用している従業員の数もケタ外れに多い。インフレとともに賃金上昇を迫られるから、どうしても収益を圧迫されることになる。

それに対して「Google」や「Apple」といった企業は、人件費などのコストは高くなるもののAmazonほどの影響は受けない。どうしてもインフレは産業構造の変革を余儀なくされるということだ。インフレに企業がどう対応していくのか。今後は、株式市場の大きなテーマになっていくかもしれない。

4.借金が大きな重荷になる

世界中でインフレが始まると、FRBのように金利を上昇させて来る中央銀行が増えてくる。インフレに金利上昇はつきものだが、これが意外と大きな影響をもたらす。預金金利が上昇するのは良いことなのだが、住宅ローンなどのローン金利も上昇し、企業の資金調達が難しくなってくる。

とりわけ日本のように、低金利時代が長かった影響で変動金利の住宅ローンを組んでいる人が多い。変動金利には上限が設けられておりすぐには返済に影響しない仕組みになっているとはいえ、いつまでたってもローン返済が終わらないといった事態が出てくる。自分の住宅ローンの設定条件をいま一度見直す時期なのかもしれない。

企業も銀行からの資金調達時のコストが上昇すれば、業績にも影響が出て来る。簡単に銀行から資金を借りられる時代ではなくなり、企業は資金調達が難しくなってくる。日本企業の内部留保が豊富であることはよく知られた事実だが、内部留保を活用できない日本企業が多いのも事実だ。日本企業は、インフレへの準備ができているかどうかが今後は問われそうだ。

5.不動産価格の上昇

緩やかなインフレが持続的に継続する姿が、健全な経済成長には最も理想的とされる。とりわけ、穏やかなインフレが続くときには株価や不動産価格が徐々に上昇していくために、個人資産も増え続けて、その影響で個人消費も拡大していく。

米国の個人消費が旺盛なのも、不動産価格の安定的な上昇に支えられているといわれる。日本の場合、バブル崩壊後、不動産価格が大きく下落してしまい、旺盛な個人消費を支えられなかったことが、日本経済の重石になってきた。加えて、消費税率引上げが個人消費に水を差し続けた。インフレに転換して健全な経済活動に戻れば、不動産価格も上昇して個人消費拡大のバックアップになるはずだ。

言い方を変えれば、家賃収入など「収益性の高い不動産」を保有していない人はインフレの恩恵を受けにくくなるとも言える。人口減少時代の中で、不動産価格が順調に上昇して行くかは大きな懸念だが、外国資本の受け入れをもっとスムーズにするなどの改革で何とかなるはずだ。収益力のある不動産を所有することは、インフレの備えのひとつとも言える。

6.国家財政危機

インフレになると健全な経済活動が活発となり、当然税収が増えるために国家財政は一見潤うかもしれない。特に、最近の世界各国の財政状況は、パンデミックによって落ち込んだ経済を支えるために、大規模な財政支出を行い、莫大な財政赤字を抱え始めている。

とりわけ、日本のようにコロナ以前から1000兆円を超える財政赤字を抱える国にとっては、金利が1%上昇すれば国債の金利負担が跳ね上がり、財政負担は大きく増えてしまう。少なくとも日本にとって、インフレは国家財政最大の危機といっても良い。

日本銀行は、インフレになったからと言って、簡単にマイナス金利解除、政策金利の上昇、バランスシート縮小といった動きに出るわけにはいかない。日銀の理事のひとりも「(金融引締めは)全く考えていない」といったコメントを出して、安易な金融緩和策を戒めている。ちなみに、国の財政状況がひっ迫してくれば、消費税率の再引き上げといった「増税」の話が出てくるかもしれないからだ。

インフレ時代を賢く生きる残るためには?

世界では、数多くの国がパンデミックやロシアのウクライナ侵攻の影響を受けてインフレに陥りつつある。とりわけ、米国では歴史的なインフレに見舞われている。この3月10日に発表された米国の2月の消費者物価指数は前年同月比で7.9%上昇し、5か月連続で6%を超えており、1982年1月以来、40年ぶりの高い水準の物価上昇となった。ガソリン価格は1年前に比べて40%上昇し、中古車も37%(12月)上昇している。

米国の中央銀行である「FRB(連邦準備制度理事会)」は、3月15日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」で政策金利を0.25%上昇させて、金融政策のかじを大きく転換させた。金融引き締めによって、ドルが買われて円が売られた。今後、さらに円安が進むとみられ、輸入インフレのリスクも出てきた。

今後は、「金」「ドル」「不動産」といったインフレに強い資産に、数%程度ずつシフトしていく……。そんな資産防衛術が注目されて時代になるのかもしれない。

経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。雑誌編集者等を経て、1982年より独立。経済、金融などに特化したフリーのライター集団「ライト ルーム」を設立。経済、金融、国際などを中心に雑誌、新聞、単行本などで執筆活動。テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活 動している。近著に「日本人が知らなかったリスクマネー入門」(翔泳社刊)、「老後破綻」(廣済堂新書)、「はじめての海外口座 (学研ムック)」など多数。有料マガジン「岩崎博充の『財政破綻時代の資産防衛法』」(http://www.mag2.com/m/0001673215.html?l=rqv0396796)を発行中。

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