「コロナバブル」は本当に崩壊するのか?

ビデオ会議システムの「ZOOM」などナ「ナスダック」銘柄が買われた(写真:ロイター/アフロ)

世界中で戦後最大の景気減速がはじまった?

 内閣府の発表によると2020年4-6月期の日本の国内総生産(GDP)は、実質で前期より-7.8%、年率換算で-27.8%(速報値)となり、リーマンショック後の年率換算-17.8%(09年1-3月期)を超える戦後最悪の下落を経験することになった。緊急事態宣言などで経済を止めた影響がまともに出た数字と言って良い。

 GDP成長率の落ち込みは、日本だけではなく世界中が歴史的な落ち込みになっている。たとえば、主要国のGDPは同4-6月期、年率換算で次のようになる。

●米国……-32.9%

●英国……-59.8%

●ドイツ……-34.7%

●フランス……-44.8%

●イタリア……-41.0%

●ユーロ圏……-40.3%

 まさに、1930年代の大恐慌に匹敵するか、もしくはそれ以上の不況がやってくると考えた方が良いのかもしれない。今後、消費や雇用に及ぼす影響が深刻となり、企業倒産や金融機関の破綻といった不測の事態を覚悟すべきだろう。とりわけ、深刻な影響を受けるのは雇用だ。企業倒産件数はまだ463件(帝国データバンク調べ)程度だが、現在の状況が続けばこんな数字では済まなくなるはずだ。企業倒産が増えれば、失業率などが上昇して、雇用に与える影響も無視できなくなる。今後は、観光業や飲食業、インバウンド消費、航空といった業界にも大きなダメージが出てくるはずで、新型コロナによる影響はいよいよ深刻になってくるはずだ。

 その一方、周知のように株式市場や金市場といった金融マーケットには大量の資金が流れ込み、いまや「コロナバブル」と言われるような状況になりつつある。とりわけ米国のナスダック市場はコロナ前の最高値を軽々と超えて、史上最高値を連日更新するなど、活況を呈している。

 ここ最近、コロナによる経済封鎖で好業績を続けている「GAFA」など、IT関連株が利益確定売りなどで調整局面を迎え、代わりに伝統的な銘柄が数多いニューヨークダウやS&P500の銘柄などが注目されているが、大恐慌に匹敵する景気減速が懸念される中で、株式市場への違和感が指摘され続けている。コロナバブルという指摘も少なくない。

 いつ、このコロナバブルは崩壊するのか……。世界中の関心は、そのXデーがいつになるのか、に関心が集まっていると言っていいだろう。この株価高騰はバブルなのか……。それとも新型コロナを契機に世界のビジネスに変化がもたらされ、経済に変革がおこるのではないか……。新しいビジネスチャンスに期待する株価高騰、というとらえ方もある。実際に、コロナ時代に新たに登場したビジネスや業態も数多い。実際に、リモート会議システムや電子認証システムといった新しいビジネスに注目が集まっている。

各国政府がリーマンショックを上回る金融緩和を実施

 もっとも、米国は3兆ドル(320兆円)の経済対策を打ち出し、EU(欧州共同体)も7000億ユーロ(97兆円)に及ぶ「復興ファンド」を創設。日本でも、これまで経験したことのない補正予算を組んで景気対策を講じている。こうした新たなマネーが金融市場に流れ込み、過剰流動性を生み株式市場や金市場に流れていると考えていい。1930年代の大恐慌も、政府と中央銀行が明確な目的をもって、迅速に対応すれば、恐慌は起きなかったと考えて良いだろう。

 さらに、各国の中央銀行が国債や社債などの資産購入に踏み切っており、例えばFRB(連邦準備制度理事会)は、社債の相次ぐ格下げに対応して、コロナ以降に投資適格格付けから投機的格付けに下落した「堕天使(フォーリン・エンジェル)債」の購入に踏み切っており、日本も以前から続けていた国債の買入れの上限を撤廃してしまった。結局、新型コロナウイルスの感染が始まって以降、主要7カ国の中央銀行は計6兆ドルの資産を増やし、リーマンショック直後の08年~09年の間に、中央銀行が増やした増加幅の2倍を超えている。

じゃぶじゃぶの「コロナマネー」が株式や金市場を押し上げた?

 問題は、パンデミック対策として経済を止めた各国政府が、金融緩和によって放出したマネーが金融市場に流れて過剰流動性をもたらしたことだ。それが、現在指摘されている「コロナバブル」の正体だが、今後もこの傾向が続くかどうかが不透明だ。

 現在の景気減速がさらに深刻になった時に、コロナマネーはどこに行くのか……。現在、史上最高値を更新して注目されている「ナスダック市場」は今後もこのまま上昇を続けるのか。IT関連など、コロナ後に急激に買われた「グロース(成長)株」はすでに天井を付けているのではないか、という指摘も多い。かといって今のV字回復の原動力になってきたグロース株が、簡単に従来型の「バリュー(割安)株」にとって代わるとも思えない。

 コロナによるパンデミック以前から、じりじりと上昇を続けていた金価格は、コロナ以後も上昇を続けており、1トロイオンスあたり2000ドルを超えてきている。これも、典型的なコロナバブルの産物と言って良いだろう。米国の投資会社「ゴールドマン・サックス」は、金価格が2300ドルに達するという見通しを示した。過剰流動性に陥っている金融市場が今後大きな調整局面を迎えたとしても、金市場に流れ込むマネーは減少しないのではないか。ネットでは3000ドルといった声も上がっている。かといって、株式市場同様に今後もずっと継続して買われていくとも考えにくい。

米国一人勝ち市場はいつまで続く?

 金融マーケットは、実は日本人が考えているほど複雑なものではなく、「金利が上がれば株は下がり、金利が下がれば株が買われる」と言う原則で動いていると思えば分かりやすい。コロナ以前、先進国では唯一米国の金利が高かった。トランプ政権は、何度もFRBに圧力を掛けて金利を下げようとしたわけだが、コロナになってからはマイナス金利政策こそ採用しなかったものの、ゼロ金利政策と大規模な量的緩和策に舵を取った。いまや、一人勝ちとも言える米国株式市場の状況も金利の動向で説明がつく。

 

 8月に入って以降、ナスダックの調整局面が続いたが、米国の長期金利が0.4%から0.7%程度まで上昇したために、調整局面に入ったのではないかとみられている。株価が調整局面になったから金利が上がったとも言えるが、いずれにしても株価と金利は大きな相関関係があると考えた方が良い。金利はまた、米ドルの動きとも大きく関係する。金利が下がれば米ドルも売られて、代わりに金が買われる。

 投資家の多くは、世界中がゼロ金利やマイナス金利政策を続けている間は、株価はそう簡単には調整局面に入らないと考える。ただし、中央銀行がバランスシートの縮小局面に入った時、つまり国債や社債の購入をやめる状況になったとき、株価は調整局面に入ると考える……。経済のV字回復が望み薄の現在、株式市場や金市場は当面、現在のバブルが続く可能性があるということだ。

 いずれにしても、新型コロナのワクチン開発や治療薬の完成がある程度見えてきたとき、コロナバブルが転換局面に入ってくる事は間違いない。問題はそれがいつになるかと言うことだ。ワクチンが完成したとしても、地球上の人間にいちどに接種することは不可能だから、現在のパンデミックはまだ当面続くと見ていい。

 明日にもコロナバブル崩壊か、といった考えを持つ人もいるが、これだけコロナマネーが金融市場に過剰流動性をもたらしている以上、なかなか他のセクターにマネーが移動するのは難しい。とりわけ、資金需要が旺盛な不動産市場には、コロナ禍で逆風が吹いておりコロナバブルの受け皿にはなりにくい。コロナバブル崩壊のXデーは、まだもう少し余裕があるのかもしれない。

 とはいえ、相場格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」というのがある。相場の動向=未来のことはだれにもわからないということだ。