狙われる日本経済再生イベント

自民党圧勝に潜むバブル形成のリスク

自民党圧勝で終わった衆院議員選挙だが、おそらく手放しで喜んだ人は少ないのではないか。日本が抱える問題があまりに多いからだ。とりわけ、直近の問題としてはTPP参加か否かを米国に迫られるだろうし、その回答次第では日米同盟にも影響してくる。原発問題も、おそらく自民党政権は、現在ストップしている原発を強引に再稼動に持っていくはずだ。

今回の日本国民の明確な意思表示は、当然世界中の金融マーケットにも影響を与える。ヘッジファンドや投資銀行などの自己勘定部門など、リスクをとって積極的に短期の運用益をターゲットに動く「リスクマネー」も、今後は日本市場にターゲットを絞って投資してくるはずだ。とりわけ、為替市場や株式市場、不動産市場への参入は、大きなイベントとして様々な形で仕掛けてくることが予想される。

昔から、自民党が選挙で300議席を越すような大勝をした後には、何らかの形でバブルが起きている。公共投資が増え、日銀も独立性をアピールしながらも、金融緩和を続けることが多いためだ。1986年の中曽根政権のときには、自民党だけで単独300議席を確保し、日本はバブルに突入し、1990年にはそのバブルを崩壊させた。

2005年9月の小泉政権時には、自公合わせて327議席を獲得。量的緩和政策の末期で、日本に海外から大量の資金が流れ込み、都心部を中心に不動産のプチバブルが起きた。その後、2007年には米国でサブプライムローンが問題化し、米国の不動産市場のバブルが崩壊。リーマン・ショックによって、世界全体のバブルが崩壊している。もともと2000年代に入ってからの世界のバブルは、日銀の量的緩和政策が原因のひとつと言われているように、金融政策は意外なところでバブルを生み、バブルを破裂させる。要するに、これまでの歴史を見る限り、自民党が圧倒的大勝利を収めるとバブルが形成されて、その何年か後にはバブルが崩壊するということだ。

リスクマネーが日本経済再生イベントにかける

さて、今回の自民党圧勝によって、日本は米国の中央銀行に相当する「FRB」や欧州の中央銀行である「ECB」が現在実施している無制限に近い金融緩和政策に再び、トライすることになった。ただ、日本の場合はすでに長期間にわたって量的緩和政策を実施してきたために、まだ不況に陥って間もない米国や欧州とは事情が違う。日本の場合は、構造的な問題によってデフレが続いていると見るのが妥当で、そういう意味ではある程度の副作用を覚悟でさらなる緩和政策に踏み切るしかない。まさに、ヘリコプターからお金をばら撒くような方法だ。

そして、当然ながら1000兆円を越す国債の問題もある。欧州債務問題が落ち着き、米国も徐々に景気回復に向かいつつある。リスクマネーにとって、投資対象として選択する際に最も重視するのは「流動性」だ。日本の場合、為替市場は言うまでもなく、株式市場や債券市場でも、流動性にはほとんど問題がない。要するに、リスクマネーにとっては理想的な投資対象なのだ。その理想的な投資対象国で、歴史的な経済再生のイベントが始まるとすれば、投資しないリスクが出てくることにもなりかねない。

ただ、リスクマネーの場合、株式や国債の現物市場などに直接投資してくるわけではない。あくまでも先物市場やオプション市場と言った差金決済のマーケットにレバレッジをかけて投資してくる。あるいはCDSなどのクレジット・デリバティブ市場にも積極的に入ってくる可能性がある。株式の現物市場などは、先物市場が主導権を握っているから、日本経済再生のイベントに参加したリスクマネーが積極的に買い上げて利益を狙ってくるはずだ。

当然、日本国債を空売りし続けている米ヘッジファンドの「ヘイマン・アドバイザーズ」のようなファンドが、今後はもっと増えてくるはずだ。日本銀行がインフレ目標を掲げれば、それだけで日本国債の金利は上昇(価格は下落)する。莫大な金額の日本国債を抱える金融機関が、あっという間に経営危機に陥る可能性もある。株が上がればあがるほど、円安が進めば進むほど、消費者物価が徐々に上昇し、金利の上昇リスクが頭をもたげる。

財政再建、規制緩和の実施を優先させることが重要

自民党が選択した金融政策は、やはりあまりにも危険だ。消費税率上昇や規制緩和の実施などの構造改革を実施したうえでの大胆な金融緩和でなければ、金利上昇を招き、これまで続いた国債バブルがはじけてしまう。こうしたボラティリティ(変動幅)の大きなイベントをリスクマネーは見逃さない。

リスクマネーは、すでに2兆ドル超の資金を保有するヘッジファンドひとつをとっても、マーケットを動かす資金には事欠かない。そして、相場の動きをより大きく「増幅」させる投資行動をとるのがリスクマネーの特徴でもある。今後、日本が迎えるプチバブルに浮かれていると、思い切り足元をすくわれることになりかねない。