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「五輪卓球 競技エリアが狭い?」中国が指摘 コート外で早くも繰り広げられる心理戦

伊藤条太卓球コラムニスト
「狭い」と指摘された東京五輪卓球会場(写真:ロイター/アフロ)

7月21日のYahoo!ニュースで「中国卓球協会会長、今度はコートの広さに不満 普段より小さい」と題する記事が配信された。

記事によると、中国卓球協会の劉国梁(リュウ・グォリャン)会長が、中国中央テレビ(CCTV)で「プレースペース全体が通常よりも小さい。世界大会では普段7×14メートルの広さがあるが、測ったところ6×11メートルしかなかった」と話し、プレーに影響が出る可能性を指摘したという。

卓球の競技エリアは「7×14メートル以上」と国際ルールで決まっているので、本当に6×11メートルしかないとしたら大問題だ。

さっそく中国のSNS微博(weibo)で劉国梁氏がCCTVに語っている動画を確認した。確かに劉国梁氏が「ちょっと測ってみたら6×11メートルしかなかった」と語っているが、その場面のテロップにはなんと「用脚丈量」つまり「歩いて測った」と書いてあるのだ!

それなら話は簡単、測り間違いだ。劉国梁氏の足が知らぬ間に伸びたのだろう。東京五輪の会場が、ちょっと気の利いた中学校の卓球部員でも知っている「7×14メートル以上」から外れる設営をしているなど、まったくもってあり得ない話である。

念のため、大会組織委員会に問い合わせたところ、今回の設営は「8×16.4メートル」という回答を得た。十分に国際規格を満たしている。ちなみに、ルールでは広さの上限は規定されていないため、国際大会では9×18メートルなど、もっと広い場合も多い。そのため、今回の会場が「普段より狭い」という指摘は間違ってはいない。

それにしても、劉国梁氏が本当に競技エリアが6×11メートルしかないと考えたなら、自国のテレビ局より先に大会組織委員会に言わなくてはならないはずだが、そうしなかったということは(言ったとしたら即座に否定されたはずだから言っていなかったとしか考えられない)、これは本気ではなく、テレビ局に対するリップサービスを兼ねた日本卓球界に対する揺さぶり作戦だったと見るべきだろう(「言ってみただけ」の可能性もあるが・・・)。

早くもコート外での心理戦が、それこそ”所狭し”と始まっているのだ。熱い。熱すぎるぞ五輪卓球。

卓球コラムニスト

1964年岩手県奥州市生まれ。中学1年から卓球を始め、高校時代に県ベスト8という微妙な戦績を残す。大学時代に卓球ネクラブームの逆風の中「これでもか」というほど卓球に打ち込む。東北大学工学部修士課程修了後、ソニー株式会社にて商品設計に従事するも、徐々に卓球への情熱が余り始め、なぜか卓球本の収集を始める。それがきっかけで2004年より専門誌『卓球王国』でコラムの執筆を開始。2018年からフリーとなり、地域の小中学生の卓球指導をしながら執筆活動に勤しむ。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球語辞典』他。「ロックカフェ新宿ロフト」でのトークライブ配信中。チケットは下記「関連サイト」より。

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