コロナショックで内定取り消し、補償金はいくら出る?~具体的な対応を5ステップで

ショックを受ける就活生(写真はイメージ)。内定取り消しの対応策は?(写真:アフロ)

◆コロナショックでとうとう内定取り消しも

コロナショックの影響で3月広報解禁以降の合同説明会は軒並み中止となりました。

3月13日現在、リクナビ・マイナビは3月31日まで中止。

キャリタスナビ(旧・日経就職ナビ)は3月15日まで中止、以降は開催としています。

※ただし、15日開催分はすでに中止・延期としています。以降の開催についても、同サイトで最新情報を確認するようにしてください。

大手企業も会社説明会や選考を中止とする中、それでも「暖かくなればコロナショックも収まり、就活への影響も軽微にとどまるだろう」と楽観視する向きもありました。私もそうでしたが、アメリカ・ヨーロッパでの感染拡大で景気への不安感が増大。

東京オリンピックについても、延期か中止が現実的な選択肢として日に日に注目されるようになってきています。

こうした状況から、就活でも内定取り消しが注目されるようになってきました。

内定取り消しは2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災でそれぞれ社会問題化しています。

しかし、2013年ごろから売り手市場に転じ、内定取り消しは就活関連で話題になることはほぼありませんでした。

そのため、もうすぐ卒業・入社しようとする20年卒、そして、現在就活中の21年卒の学生からすれば、不安に思う部分も多いでしょう。

◆内定取り消しを受けたら、まずは大学に相談を

それでは、まず、2020年卒の学生が内定取り消しを受けた場合の対応方法について解説します。

以下の5段階に分かれます。

ステップ1:在籍の大学(卒業後も同じ)の就職課・キャリアセンターに相談

ステップ2:内定先企業から書類にサインを求められても断る

ステップ3:新卒応援ハローワークなどに相談

ステップ4:弁護士等に連絡

ステップ5:新卒応援ハローワークや新卒向け就活ナビで企業探し

それでは、まず、ステップ1から。

あと1か月で入社、という時点で内定取り消しの連絡を受けるのは大変、ショックであるはず。何しろ、内定取り消しは「あなたは不要です」で宣告されたも同然なのですから。

余談ですが、私は現職(大学ジャーナリスト)の前に勤務していた編集プロダクションで正社員に昇格して4か月目に「石渡君、クビね」と宣告を受けたことがあります。理由は全くの言いがかりと、大きな案件が社全体で失敗したため会社規模を縮小しなければならない、という身勝手なものでした。

今でこそ、笑い話にしていますが、言われた当時は大きなショックを受けたものです。おそらく、就活関連の記事・書籍執筆者の中でクビ宣告を受けた経験があるのは私くらいなものでしょう。

この経験から、内定取り消しを受けた方のお気持ちは他の方より痛くわかる、と自負しております。

しかし、ショックを受けているだけでは何も進みません。

まずは、在籍の大学・短大・専門学校に相談しましょう。

もし、すでに卒業式を迎えていたとしても、問題ありません。

あるいは、この記事を読んでいるのが4月1日以降で卒業生となっていたとしても同様です。

大学・短大・専門学校の就職課・キャリアセンターは、中堅以上の職員やカウンセラーだと、内定取り消しの対応方法についてノウハウがあります。

よほど杜撰なキャリアセンターでない限り、対応してくれるに違いありません。

◆内定予定でも学生ではなく労働者に準じる立場

売り手市場の際は、学生が企業側に内定を取り消すことがよくありました。いわゆる、内定辞退です。

企業からすれば頭の痛い問題なのですが、この内定辞退は内定式前なら合法。内定式後であっても、違法性は薄い、と言われています。

一方、企業側が学生の内定を取り消す内定取り消しは、違法、ないし、違法性が高い、と言われています。

まず、学生でも社会人でも意外と知らない方が多いのですが、内定を受けた学生は、労働者に準じる立場です。

会社との労働契約が成立しており、これを始期付解約権留保付労働契約と言います。

そのため、もし、内定取り消しを企業側が進めようとする場合、正社員の解雇と同様の手続きを踏む必要があります。

労働契約法第十六条にはこうあります。

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

この解雇するための要件として挙げられるのが解雇四要件です。

つまり、「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定の合理性」「解雇手続の妥当性」の4点。

細かい説明は省略しますが、今回のコロナショックで「今後、ビジネスが縮小しそうだから」「入社しても働いてもらうことが難しそう」という説明では、解雇要件に当てはまらない可能性が高いです。

◆取り消した企業には「大学に相談してから」

そこでステップ2となるのが、内定を取り消した企業からの連絡です。

コロナショックの内定取り消し関連の報道では、

「一方的に電話がかかってきて、通告されて、切られた」

「『物入りだろうから』と20万円がふりこまれた」

などと出ていました。

まず、電話の通告だけで終わらせるのは論外です。

「物入りだろうから」と20万円を振り込んだ事例は、電話通告のみの企業よりは誠実、と感じる方もいるでしょう。

が、これはこれで不誠実です。

4月入社であれば、3月には新たにアパート等を契約している学生も多いはず。そうした費用を考えれば、20万円でまかなえるものではありません。

内定取り消しは、そもそも、違法ないし違法性の高い手段です。

この手段を取る企業は、学生の無知やショック状態に付け込んでいる、とも言えるのです。

そこで、内定取り消しを承諾する書類などにサインを求める事例が過去に多くありました。

学生がサインをすると、あとで問題となっても「内定取り消しを了承してもらった」と言い逃れることができるからです。

そのため、内定取り消しを受けた学生は、書類等にはサインせず、「大学に相談してから」と伝えるようにしてください。

◆大学がダメならハローワークなどに

大学や短大、専門学校は学生を保護する義務があります。

大半の大学等では、内定取り消しを受けた学生・卒業生に対して真摯に対応することでしょう。

ただ、中にはそうした対応がきちんとできないところもあります。

その場合は、ステップ3・新卒応援ハローワークなどに相談してください。

どちらも、全国各地にあります。

新卒応援ハローワーク一覧

新卒応援ハローワークは厚生労働省が所管、学生や若年者の雇用を支援する公的な職業紹介所です。企業からすれば求人情報を出すのは無料であるため、特に中小企業は積極的に利用します。

そのため、内定取り消しを受けた学生・卒業生が新卒応援ハローワークに相談するのは有効です。

職業紹介だけでなく、内定取り消しについても相談・指導のノウハウを持っているからです。

それに厚生労働省は、内定取り消しについて指針を定めており、内定取り消しをする場合はハローワーク・新卒応援ハローワークに通知することを求めています。

事業主は、やむを得ない事情により、どうしても採用内定取消し又は入職時期繰下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。この場合、解雇予告について定めた労働基準法第20条及び休業手当について定めた同法第26条等関係法令に抵触することの無いよう十分留意するものとする。なお、事業主は、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、採用内定取消し又は入職時期繰下げを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。

※厚生労働省・政策レポートページより

なお、もし、近くに新卒応援ハローワークがない場合はハローワークまたは労働局でも相談することが可能です。

大学キャリアセンターや新卒応援ハローワークなどに相談すれば、内定取り消しをした企業としても、そうそう強気にはなれません。補償金支払いなどに応じるはずです。

それでも、解決が難しいようであれば、ステップ4へ。

労働問題に強い弁護士に相談してください。

詳しくは、本稿より先に出た、佐々木亮さんの記事をどうぞ。

新型コロナによる<景気悪化>で内定取り消しされた場合の留意点(佐々木亮 Yahoo!ニュース個人2020年3月13日記事)

◆補償金はいくら?

内定取り消しに伴う補償金はどれくらいの金額が相当でしょうか。

実ははっきりした事例がなく、企業と学生次第で大きく左右されます。

リーマンショック後の内定取り消しでも、対応は分かれました。

同じ企業でも、大学等を経由して抗議した学生には補償金を支払い、そうでない学生には払わない、という事例も。

それから、内定取り消しの裁判でも、内容非公表での和解となっているため、詳細がはっきりしない部分が多いのです。

関係者に取材したところ、目安となるのが「入社後の試用期間プラス諸費用プラス内定者研修」でした。

つまり、入社していれば、まず試用期間で新入社員研修等を受けていきます。

その期間が3か月であれば、内定時に決まっていた給料の3か月分が補償額の基本線となります。

なお、試用期間の給料全額ではなく、労働基準法第26条に基づき「60%」相当が適当、とするサイト等もありました。

ただ、民法第536条には、雇用者側が全額を負担する、と解釈できる条項があります。

【民法第536条2項】

(債務者の危険負担等)

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。

【労働基準法第26条】

(休業手当)使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

1987年のノースウエスト航空事件では、この民法の100%と労働基準法の60%、どちらか、という点も争点となり、最高裁は、100%が相当、としています。

両者が競合した場合は、労働者は賃金額の範囲内においていずれの請求権を行使することもできる。したがつて、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、賃金請求権が平均賃金の六割に減縮されるとか、使用者は賃金の支払いに代えて休業手当を支払うべきであるといつた見解をとることはできず(以下中略)

そのため、試用期間の給料全額がまず基本線となる、と見ていいでしょう。

これに、内定者研修でどれくらいの負荷がかかっていたか。懇親会程度ではなく、入社後に必要だから、と資格等の勉強を求められていた場合、こちらも、補償に加味される可能性が高いです。

さらに、諸費用。これは、入社に伴う引っ越し費用やアパートの敷金・礼金など。

このあたりをまとめてきますと、「物入りだろうから」と振り込まれた20万円、という事例は全く誠実とは言えないことが明らかです。

企業の経営状態などにもよりますが、解雇四要件に当てはまらない企業であれば、試用期間が半年・初任給20万円なら、20万円×6か月で120万円。

これに、引っ越し費用や敷金・礼金等でキャンセル料が30万円、ということであれば、それを合わせた150万円が補償金の基本線となります。

◆入社時期延期のケースは?

内定取り消しではないものの、入社時期延期を求められている学生もいるでしょう。

こちらも扱いは基本的に内定取り消しと同じステップを踏んでください。

入社時期延期を求められ、その期間の給料は発生しない、と企業側が説明したとしても、これはアウト。

会社都合による休業は会社側の負担で休業補償を支払う必要があります。

◆既卒でも新卒就職に再チャレンジ

内定取り消しを受けた学生・卒業生は、ショックなところにステップ1~4まであるわけで大変です。

が、ここまではあくまでも補償を求める話。補償が出ても、その次の就活を考えなければなりません。それがステップ5です。

かつての就職氷河期を経験した社会人は、

「新卒で就活が決まらないと、新卒扱いにならない。卒業すると転職者扱いになって、具体的な実務経験を求められるから勝負にならなかった」

と話す方がいます。

確かにその通りなのですが、これは現在、当てはまりません。

まず、新卒者の定義ですが、2010年に「卒業後3年以内」と変更するよう、政府が雇用対策の一環で盛り込みました。

そのため、現在は卒業者であっても、無理に転職採用にこだわる必要はありません。

新卒採用の就職ナビサイトを利用することができます。私が確認したところ、以下の通りです。

リクナビ:卒業後10年(2012年3月卒)

ブンナビ:卒業後5年(2016年3月卒)

マイナビ・キャリタスナビ:卒業後4年(2017年3月卒)

あさがくナビ:卒業後3年(2018年卒)

JOBRASS:卒業後2年(2019年卒)

それに、第二新卒採用のサイトや就職情報会社も充実しています。

RE就活

既卒Navi

ハタラクティブ

JAIC(ジェイック)

第二新卒エージェントneo

第二の就活

「第二の就活」サイトのトップページ
「第二の就活」サイトのトップページ

こうした新卒サイトに第二新卒サイト、それから新卒応援ハローワーク(新卒とありますが30代まで利用可能)などを利用していけばいいでしょう。

◆21年卒・内々定取り消しや選考中止となったら

さて、ここまでは2020年卒。大学生なら現在4年生の話です。

一方、新4年生である2021年卒でも、コロナショックの影響は大きくありそうです。

具体的には、業績悪化を受けそうな観光・ホテル、運輸などの業界は選考中止を検討する企業が出てくるでしょう。すでに内々定を受けている学生も、取り消し、とする企業が出てきそうです。

すでに内々定を受けていながら取り消しを通告された場合、これは、前記の2020年卒と同じ対応を取ってください。

ただし、内定ではなく、内々定段階であるため、状況・条件にもよりますが、補償金は内定取り消しと同じ扱いにならない可能性があります。

いずれにしても、まずは大学に相談するようにしましょう。

選考中止は内定取り消しと違い、表面化しにくいです。

企業から「選考に落ちた」と連絡を受けてそれ以上、追及する学生はそうそういません。

ただ、こちらもまずは大学に相談するようにしてください。

内定取り消しでも、選考中止であっても、就活生はコロナショックの影響を大きく受けることになりました。

その影響が本稿や他の就活記事などで少しでも和らぐことを願っています。

そして、そのショックがチャンスとなることも、それ以上に願っています。

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は肩書によるものか、バイキング、ひるおびなどテレビ出演が急増。ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。主な著書に『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊・55万部。

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