◆全国の大学744校を調査

1月16日に日本国内で初の感染者が出てから約2か月。

新型コロナウイルスの影響はまだまだ続いています。

この3月で言えば、卒業式シーズンです。

しかし、政府は2月26日に大規模イベントの中止か延期、規模縮小を要請しました。

大学の卒業式は大規模校だと数千人以上が参加するイベントです。

例年であれば問題になりませんが、新型コロナウイルスについてはまだ未解明の部分が多すぎます。

少なくともホール・体育館など密集した空間に長時間いれば感染リスクが高いであろうことは判明しています。

そのため、毎年、有名人がスピーチをする近畿大学、それから早稲田大学など有名校は続々と中止を決めています。

それでは、全国の大学ではどうなっているか、これはどのメディアも調査していません。

そこで、肩書が大学ジャーナリストである、この私が全国の大学、全て調査しました。

調査について

・全国743校(国立86校、公立88校、私立569校)のホームページを3月6日~9日に全て確認

・実施可否について「不明」はホームページのトップ等で確認できなかった大学を指す

・実施可否について「中止」「縮小」「実施」は各大学の表記を基本とした。ただし、「実施」の大学も何らかの対応をしていることを付言する

・実施可否の表明時期は調査時点においての最終判断のものとした。ただし、大学によっては判断を途中で変えており、その場合は「中止」を表明した時期とした

・調査期間中に大学によっては途中で開催可否の判断を変えているため、データが変動する可能性は否定できない

◆実施の可否は61.4%が中止

それでは、まずは実施の可否から。

中止 456校(61.4%)

縮小 223校(30.0%)

実施 32校(4.3%)

不明 32校(4.3%)

縮小開催と実施は各大学の表記に従いました。

なお、実施とした大学でも新型コロナウイルス対策を実施しており、無策と言うわけではありません。

たとえば、本日3月10日に開催する香川県立保健医療大学は「在学生は代表者のみ出席」「来賓、保護者の出席はお断わり」などとしています。

これは「縮小」とした東京工業大学などと同じ対応です。

では、何が「実施」「縮小」と変えたか、と言えば大学側の表現です。

香川県立保健医療大学は「挙行します」と出しているのに対して、東京工業大学は「規模を大幅に縮小して挙行」としています。

そのため、今後、文部科学省や他メディアなどが大学に質問票を送る形でのアンケート調査を実施した場合、「予定通り実施」はほぼゼロに近いことが予想されます。

今回のサイト調査では不明32校を除く、95.7%の大学は卒業式で新型コロナウイルスの影響を受け、中止か、規模縮小、または何らかの対策をしたうえでの実施となりました。

◆親お断わりは92.2%

保護者の参加を認める 20校(7.8%)

保護者の参加を断る 235校(92.2%)

※「断る」は「参加は卒業生、教職員のみ」とする大学も含む

縮小開催と実施の255校を見ていくと、保護者の参加を認めたのはわずか20校にとどまりました。

大半の大学は保護者の参加を断っています。

例年であれば、保護者はわが子の晴れ姿を見るために参加します。

そのため、「保護者やご家族のお気持ちを考えますと、大変辛い判断となりました」(佐賀大学)など、保護者を気遣う大学が多くありました。

家族参加を認める大学でも、名古屋産業大学は「必要最低限での参加」と自粛を要請。「2名まで」(青森中央学院大学、弘前学院大学、東北文教大学、エリザベド音楽大学)、「1名まで」(恵泉女学園大学、東京純心大学)など、人数制限をする大学も。

保護者が参加しない卒業式はほとんどありません。私含め、メディアの人間からすれば取材したい、と思いますが、それを見越してか、金沢大学、信州大学、松本大学などは「報道お断わり」。地元メディアの方はご注意を。

◆学位記の授与は郵送・小規模・窓口・検討中がきっ抗

卒業式を中止とした456校は、卒業証書や学位記の授与については、対応が分かれました。

具体的には、「郵送」(立命館大学、明治学院大学、高知大学など)、「学科・ゼミ単位で授与」(県立広島大学、武庫川女子大学など)、「窓口等で交付」(岡山商科大学、鹿児島国際大学など)、それから検討中の4パターンです。

知人の大学職員に取材したところ、どの対応も一長一短、と説明してくれました。

本来なら大学にとって卒業式は大きなイベント。それを中止にするのは、保護者もショックだろうけど、我々職員側もショックだ。そして、卒業証書・学位記をどうするかは悩ましい。いくら小規模とは言え、学内で授与をすれば、多人数が集まることになる。それで帰りに居酒屋でも行って、感染でもすれば、大学への風当たりは強くなるだろう。窓口で交付しても同じ。

と言って、重要な書類を郵送で済ませていいのか、という心情も強い。

どれも一長一短で大学によって判断は分かれるだろう。

ただ、感染リスクを減らす、という目的に立てば、郵送するのが一番いいのではないか。

◆岡田晴恵教授の白鴎大学は謝恩会中止

対応策として、圧倒的に多かったのが「謝恩会・パーティーの中止」です。

「モーニングショー」などの出演で、いまや全国区となった岡田晴恵教授が在籍する白鴎大学も同様の措置を取っています。

来賓を断り、在校生の立ち入りを禁止とする大学も多くありました。

静岡福祉大学は、規模縮小での開催ですが、「式後、速やかに退校してください。式後の教室の利用は禁止します」。

近畿大は予定していたプログラムの一部を動画で配信。

慶應義塾大学、甲南大学などは学位授与式(卒業生は代表のみ)を動画で配信するなど、代替措置を取る大学もあります。

◆中止表明は立命館アジア太平洋大学など3校が初

実施可否ないし検討を示唆表明した時期は以下の通りです。

2月17日~21日 8校(1.1%)

2月22日~27日 109校(15.3%)

2月28日・29日 156校(22.0%)

3月1日~9日 416校(58.5%) 

不明 22校(3.1%)

卒業式について最も早く表明したのは京都市立芸術大学です。ただし、「新型コロナウイルス感染拡大に伴い変更となる可能性があります」と変更を示唆しただけにすぎません。

中止判断がもっとも早かったのは、2月20日に表明をした立命館アジア太平洋大学、第一薬科大学、神戸医療福祉大学の3校。他に日本歯科大学が規模縮小を明らかにしています。

その後、日本経済大学など3校が2月21日、東邦大学が2月23日にそれぞれ中止を表明。

2月25日には、近畿大学が中止を表明します。大規模校の中では近畿大学がもっとも早い表明となりました。

2月26日には、政府のイベント自粛要請。2月27日には安倍首相の小中高・一斉休校要請が続きます。この影響で2月27日には東京工科大学、大阪工業大学などが中止を表明(規模縮小を含めると70校)。2月28日には慶應義塾大学、愛媛大学などが中止を表明します(規模縮小を含めると141校)。

そして、他大学の動きを見て判断したのか、3月に入ると、さらに中止ないし規模縮小の表明が相次ぎました。

3月9日には政府の専門会議がイベント自粛について19日までは継続が必要、との見解を示しました。

これを受けて、今後対応を変える大学が増加する見込みです。

◆オープンキャンパスは285校が中止

オープンキャンパス中止 285校(38.4%)

短縮実施・実施予定(中止表記なし) 11校(1.5%)

実施なし・不明 447校(60.1%)

オープンキャンパスや受験生向け行事は285校が中止しました。

不明は447校ですが、これは不明と言うよりは単に春休み時期にオープンキャンパスを実施していなかったもの、と思われます。

2010年代前半まではオープンキャンパスはあくまでも夏休みが中心のイベントでした。春休みシーズンに開催する大学もありましたが、多かったわけではありません。

「卒業式が終わって、今度は新入生受け入れの時期。オープンキャンパスなどやっている余裕がない」

「年度替わりなので、新年度用のパンフレットはまだ印刷していない。旧年度のものを配布するのもいかがなものか、という意見が強く開催できなかった」

などとする大学が多かったのです。

しかし、AO入試・推薦入試のシーズンが夏休みであることを考えれば、春休みは受験生にアピールする絶好の機会です。

そのため、開催校が増えていきました。

ただ、まさか、200校以上が開催予定だったことは私からすれば意外でした。

なお、名古屋女子大学、長崎国際大学は5月に延期して開催。

京都産業大学、神奈川工科大学、東京薬科大学などは当日(または相当期間)のネット配信を予定しています。

◆入学式は56校が中止、縮小・検討示唆も55校

中止 56校(7.5%)

規模縮小・検討中 55校(7.4%)

不明 632校(85.1%)

卒業式が終わればすぐ、入学式シーズンとなります。

3月9日時点で、早稲田大学、名古屋大学、法政大学など56校が中止を表明しています。

このうち、早稲田大学は授業開始を4月20日以降とすることも合わせて表明しました。

早稲田大学には、年間約八千名の留学生が学んでいます。そして、四千名以上の在学生が、海外に留学しています。その方たちの多くは、春休みを海外で過ごしています。こうした状況のなかで、かれらは新学年度に向けたオリエンテーションを受け、授業に臨もうとします。授業が4月6日に始まりますと、かれらの多くが、3月中旬には日本に入国・帰国しなければならず、大きな不安を与え健康リスクを引き起こす可能性がありました。

そのため、学生の皆さんの安全と健康を第一に考えて、授業の開始を4月20日(月)以降に延期しました。(早稲田大学サイト掲載の3月9日リリース「早稲田大学への入学生と在学生の皆様へ-入学式中止と授業開始延期についての思い-」より抜粋。文責は田中愛治総長)

規模縮小や実施可否も含め検討中であるとしたのは大阪体育大学、岡山大学など55校でした。

入学式は新型コロナウイルスの感染が収束するかどうかで今後、大学の対応が大きく分かれそうです。

社会や経済に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス。その影響は大学も例外ではありません。

前代未聞の事態に、どの大学も対応に苦慮している様子がリリースからも明らかです。その中でも立命館アジア太平洋大学の出口治明学長の言葉は胸を打ちます。

その一部をご紹介して、本稿を締めるとしましょう。

今回晴れて卒業・入学を迎える学生、そしてそのご家族、関係者の皆さまにおかれましては、この日を心待ちにされていたことと思います。また、地域の皆さまにおかれましても、大変多くの方にAPUの卒業式・入学式の準備などに携わっていただいております。皆さまのお気持ちを考えると、断腸の思いではありますが、何卒、APUの苦渋の判断をご理解賜りますようお願い申し上げる次第です。また、特に中国の学生については、ご自身のことやご家族のことなどとても心配されていると思います。学生の皆さんにお願いがあります。大変な状況にある友達が周りにいれば、ぜひ励まし、力になってあげてください。APUとしても大学を挙げて万全を期す所存です。

立命館アジア太平洋大学・3月6日リリースより